リリーの料理レッスン その三
「と、トナカイ……かたいよぅ」
「リリー、そんなに緊張しなくてもいいのよ?」
「だ、だって……初めてだもん」
「うむ、最初は誰でも初めてなのよぉ。もっと、力を抜くのよー」
「んっ……あぁっ!」
「……リリー、一回やめて、落ち着くのよ」
「ごめんねトナカイ……私、こういうの、慣れてないから」
「気にしなくていいのよ。じっくりやっていくのよー」
「わかった……次は、頑張るね」
「うむ。一緒にがんばるのよー」
「まな板だけにとどまらず、台ごと切り裂くなんて、さすがのトナカイも想定外なのよー」
「このカボチャ、妙に硬いから包丁の力加減が難しくて……つい、やっちゃった」
「リリーは力が強いから、微妙な加減が難しいのねぇ」
「野菜切りって、爪でやったらだめなの?」
「ちゃんとおててを洗ってるから、あかんことはないと思うのよ? でも、せっかくだから包丁を使う細かな力加減も覚えるといいのよー」
「うーん……料理って、難しい」
「慣れたらそんなに難しくないのよ! ちょっと色々直すから、お外で待っていてほしいのよー」
「わかった」
「はぁ……料理って、難しいなぁ。トナカイがご飯作ってくれるから、諦めちゃってもいいんじゃないかなぁ。でも、料理ができない女は残念って、どこかで聞いたことあるし……」
「リリー、直ったのよー! どしたん、何だか表情が暗いのよ?」
「……トナカイ、料理ができない女の子って、どう思う?」
「ふむ? お料理ができないと、おいしいごはんが作れないのよー」
「うーん、そうなんだけど。本人が困ることじゃなくて……」
「ふむー、リリーはお料理があんまり上手にできなくて落ち込んでるのねぇ」
「うん」
「そうなのねぇ。リリーは、何でお料理を習おうと思ったん?」
「それは、えーっと……料理ができない女はだめかなって……」
「そうなん? 別にだめってことはないと思うのよ?」
「うーん。トナカイは、何で料理をしようと思ったの?」
「トナカイがお料理を覚えたのはねー、おいしいものを作って食べたいからなのよ! トナカイも最初はいろんな失敗したけど、やりたいことに向かって頑張ってるから、くじけずに続けられたのよ!」
「そうなんだ」
「うむ。だから、リリーも何でお料理をしたいと思ったんか、よく考えて見たらいいのよー。そこまでの理由じゃないんなら、途中でやめてもいいと思うのよー」
「そっか。うん、もう少し考えてみる!」
「うむ。お料理は別に今じゃなくても、リリーがやりたくなったときに、トナカイが教えてあげるのよ?」
「うん! トナカイありがとう!」
「むふー、悩んだら何でも相談するといいのよー」
「トナカイ、私色々考えたんだけど」
「どしたんリリー?」
「料理の練習、頑張ることにしたよ!」
「そうなんねぇ。それじゃ一緒に頑張るのよー!」
「うん! いつかトナカイがびっくりするくらいの料理を、作ってあげるんだから!」
「むふー、それは楽しみなのよー」
以前リリーの料理に、別の意味でびっくりさせられていたことは、あえて言わないトナカイの優しさであった。




