41.隠しステータス
魔王城の廊下を歩く。
ここも魔大陸とはいえ城だ。そのためメイドや執事がすれ違うたびに頭を下げてくるので俺もそれにつられて下げてしまう。
そのたびに相手に慌てられた。
それについてどうやらクラスのメンバーも似たような状況に遭ったらしく、魔族側と一度話し合いにも発展した。
人間側本命の六名が洗脳から解放され俺と《隷属》を交わした後、それぞれが訓練を始めた。
例えば対人戦がメインの奴らは魔王軍の訓練に混ざって参加していたりする。
そこで知ったのだが、ハウラルは魔族の中ではステータスの伸びがかなり悪いらしい。言われてみれば確かにレベルの低い大和よりHP低いし、前に殺った火竜にほぼ全てのステータスが負けている。
大和が転移者だからとか火竜が魔物だからってわけじゃなかったんだな。運は魔族の中でも高いのに。
そんなある日のこと。
<ハロー、ハロー、ハロー>
どこからか電話が鳴った。
携帯どこに入れたっけ。
そこで気づいた。俺、学校に携帯置いてきたわ。
「なんだ、付属品さんか。驚かさないでくれ。本気で携帯探した」
<確かに、確かに久しぶりの登場ですけど!そこは覚えていてください!>
登場?何言ってるんだ。いつもよく話して……そういえば一か月は付属品さんの声聞いてないわ。
「すまん、忘れてた。それで俺に何か用か?」
<ええまあ、用事と言えば用事ですね。主がいない間ですね、私、家を建てました!>
「……ゴメン、ノイズが入ったみたいだ、もう一回言ってくれ」
<私、家を建てました!>
「…………俺もう歳かな。『家を買った』じゃなくて『家を建てた』って聞こえるんだよね」
<主!現実から目を逸らさないでください!>
なんだよ家を建てたって。大工かよ。
何で付属品さんが家建ててるんだよ。俺がいない半年にいったい何があった!変わったことなしって最後に話したときに言ってたよな!?
<それでですね、その建てた家に見に来ませんか?>
「行く前にいくつか聞いておくけど、それ普通の家だよな?間違っても豪邸建ててたりしないよな?」
<はい、私の住んでいる家は精霊族さんたちと大差ないですよ>
「……は?精霊族?精霊族ってあれだろ?存在以外の全てが謎に包まれてるっていうあの精霊族だろ?付属品さん勇者かよ」
<主の家は豪邸ですけど>
「付属品さん、あんた鬼か!?何しれっと豪邸建ててんの!?」
手遅れだったか、豪邸。
「……それで、見に来ないかって話だったな」
<はい、そうですよ>
「行かない。というか行きたくない。豪邸の持ち主とか羞恥プレイか!?」
<うーん、分かりました。とりあえず場所だけ言っておきますね>
それから付属品さんに教えてもらった場所を記憶の中にある地理と照らし合わせながら確認して連絡を終えた。
それにしても精霊族か。当初の目的にはあったけど、よりにもよって最悪な形での(俺的に)出会いになりそうだな。
「よし、先に獣大陸に行くか」
そうと決まればやることは一つ。
俺は部屋に戻って荷造りを始めた。
次の日、食事の合間を見て俺は話を切り出した。
「なあ、俺これから獣大陸に行こうと思う」
「獣大陸にか。今の時期ならちょうど武闘会があったな。いいのではないかヤナギ殿」
「武闘会か。なあ柳、その大会、俺たちも出ていいか?」
「大和、その『俺たち』には具体的に誰が入ってるんだ?」
「俺含めて四人だ」
「……それくらいならいいぞ」
「ねえシンイチ、それってすぐ行く?」
「いや、今すぐはいかないな。大体一週間ぐらいはまだここにいるぞ」
という事でその間、俺は武闘会に出る四名を鍛えることになった。
《武闘家》の大和を始め、勇者の下上君、《剣聖》の日野君、《魔法剣士》の横田さんの計四名だ。
「と言っても俺は技術的なことは教えられないから、俺と戦って最適な戦い方を見つけてくれ」
それからは一対四の集団戦だった。
四人も善戦していたのだが、神様スペックの俺には一太刀すら叶わなかった。俺はもうチートの域を超えたと思う。
その日の夜。
俺の部屋の扉がノックされた。
当然、ノックの相手は美少女ではない。俺が許可を出して入ってきたのは大和だった。
「何、こんな夜中にどうした。まだ日付変わってないけど。とりあえず座れ」
そう言って俺が椅子を差し出し、大和は座った。
「あー、実はさ、お前にアドバイスをもらいたくてな」
「アドバイス?アドバイスって昼間の訓練のことか?」
「ああ。確かに俺は強くなったのかもしれないけどそれでもお前には一撃も与えられなかった。今のお前には俺がどう見えてるのか気になってな」
そんなこと言われても昼も言ったけど俺には技術的な要素は教えられない。
だが直感的に言うなら。
「そうだな大和、お前はこの世界に来てどう思った」
「どうってのが何を指すのかは分からないが、結構面白そうだと思った」
「じゃあ『ステータス』は?」
「あれはなんか、ゲームみたいだと」
「ゲームにおいてキャラクターを育てるのに大事なのはなんだ?」
「それは敵を倒すことじゃねーの?」
「間違いではないけどあたりでもない。正解は『隠しステータス』だ」
「は?なんで」
「これさえ分かっていれば最短でゲームがクリアできる。ガチャ叱り、乱数調整叱り、レアモンスター叱り。どれも『隠しステータス』が分かっていれば確実にできるものばかりだ」
これは実際に俺が確かめた。
例えば攻撃力。これは実際には筋力ではなく、筋力含めた合計値が攻撃力であることが分かっている。
だからなのか玉座前の扉が開けられない理由を知ったとき俺は安堵した。
「今のお前は『隠しステータス』無視で五感が全てな感じがするからもう少し自身の手札を増やした方がいいと思う。が、こればかりは何度も確かめるしかないから俺が言うべきことではないんだけどな」
「そうか、よくわからないが理解した」
よくわからないことを理解したと、大和の目が告げていた。
「そうか、じゃあ俺は寝るから。お休み」
「その前にもう一つだけ聞いてもいいか?」
「なんだ」
そう言うと大和は俺のとは別のもう一人が寝ているベッドを指さした。
「あれはなんだ?」
「気にするな。ただの引きこもりだから。大和が気にする価値もないものだから」
「そうか」
獣大陸武闘会のルール
・使っていい魔法は〈身体強化〉のみ
・武器、防具ともに制限なし
・相手を続行不能にするか降参させる、戦闘可能地点以外に体の一部が着くことで勝利
・魔法を使わない飛行、滑空も禁止
・対戦相手の死亡については原則失格
以降他に必要そうなルールがあれば追加します




