38.精霊の女神ユリア
プツリ。
まるでテレビの画面が点けられたように視界が開ける。
「あれ……俺、さっきまで……」
「初めまして、私は精霊の神ユネア」
誰の声だろうか。
気が付けば俺の目の前には扇情的な衣装を着た女性が直立不動に立っていた。
【情報眼】……《情報視認》……ダメだ、反応しない。
「そんなに私のことが知りたいですか、エルフ」
「エルフ……?そういえば確かさっき像の前で祈ったら意識が途絶えて、気づいたら俺の目の前に神がいて…………神?」
「俺……なるほど。あなた、『転生者』でしたか」
何故無信仰の俺が神なんかに会っているんだろう。いや、今はそれは置いておくか。
それにしても転生者か。
どうやらここに来る前のスキルなら効果があるらしい。
とりあえず、召喚されたなんて言ってもこの姿じゃあ信憑性がないしそれで話通すか。
「その通り、俺は元男の転生者です」
「エルフの体でそれですか。……うらやましい」
そういう女神の目は俺の結構ありそうな胸に向かっていた。
確かに彼女の胸よりは俺の方が少しありそうだが……って。
「ふざけんなこのセクハラ女神」
「セクハラ女神とはなんですか!私だってもう少し胸があればなんて思っているんですよ!だからわざわざ迷宮作ってダンジョンマスターよんで貧乳ばっかのエルフしか入れないようにしたのに!」
あれお前のせいかよ。
「俺だって欲しくて手に入れたわけじゃないんだぞ。この胸重いから結構動き阻害されるし」
「胸のある人はみんなそういうんです!」
「というかお前だってそれなりに胸あるだろう。それで文句を言うのはお門違いだと思うが」
「胸のある人はみんなそういうんです!」
いや、そんなことは無いと思うが。
「まあいい。それで?俺がここにいるのには理由があると思うんだが」
「そんなの簡単ですよ。あなたが!エルフの!女だからです!」
「ゴメン、俺百合好きじゃないんだ。悪いが諦めてくれ」
「そういうことじゃないんです!本来ならエルフの女は貧乳ばっかですから、私が優越感に浸れるはずだったんです!なのにあなたときたらエルフのくせに巨乳とか、万死に値します!」
「話を聞いてる限り、お前の周りの女神が巨乳ばっかだからここに逃げてきたように聞こえるんだが」
「そうですよ!なんで周りが巨乳の中私だけ平凡なんですか!おかげでどれだけ憐みの目を向けられたと思ってるんですか!」
知らんよ。
「……はぁ。これがいつもの貧乳だったら私だっていつも通り優越感に浸りながらスキル与えてたのになぁ」
「スキル……なるほど。ここの迷宮を攻略すると《精霊巫女》が手に入るってのはお前の仕業だったか」
最初から不思議だったんだ。
何故ここの迷宮だけ攻略すると《精霊巫女》が手に入るのか。
【情報眼】が聞かないのも神相手なら納得できる。
「そういえばあなた、【精霊眼】じゃありませんね」
「ん?ああ、父親が人間だったせいなのか俺だけ【精霊眼】で生まれてこなかったんだよ。そのせいか《精霊術》も《精霊魔法》も持ってなかったし」
【精霊眼】については今も使えない。
王女め、エルフも殺しておいてくれたらよかったのに。
「そうですかぁ。それはかわいそうですね。ププッ」
おい、今こいつ人のこと馬鹿にしたぞ。
こいつの胸が周りと比べて悲しかったのはこの性格が原因なんじゃないのか。
「では特別に、と く べ つ に 《精霊巫女》の他に《精霊術》、《精霊魔法》、【精霊眼】もお付けしておいてあげます。私に感謝してくださいね!」
「ワーイメガミサマアリガトウゴザイマス」
「よろしい。では付与してあげましょう」
今のでいいのか女神様。
「女神ユネアの名のもとに、このエルフへ祝福を授けましょう」
そういって女神が俺の体に触れたと同時、俺の体の中に何かが注ぎ込まれていく感覚が体を通って行った。
女神がさっと手を離すとその感覚もなくなるが、確かに加護のようなものがついた感じはいた。
女神はなぜか疲労困憊。
「あ、あなた!今私に何をしたんですか!」
「は?」
何をしたって、何もしてないけど。むしろそっちが急に触ってきたと思うんだが。
「あー惜っしー、あとちょっとで全部吸えたのに」
「やりすぎだ。全部吸えばどちらもただじゃすまなかったぞ」
背後から二人の男女の声。
振り向けば赤髪の長い女性と黒髪の長身の男性が立っている。
この神の領域に現れたという事は二人も神なのだろうか。
「あなた達はいったい何者ですか!いったいどうやってこの空間に!」
「おやおや女神様初めまして。私はそこのエルフの契約者で強欲の支配者、マモンだよ」
「同じく契約者で暴食の支配者、ベルゼブブだ」
強欲、暴食。
どちらも七つの大罪と呼ばれる悪魔が司る欲求である。
だが俺がそんな奴と契約?いつそんなことをしたんだ?
強欲と暴食。関わりがありそうなのと言ったら……《喰らう者》と《奪う者》か!
謎は全て解けた!
「契約者……?よくわかりませんが、今のがあなた達のやったことだというのは分かりました」
今の?二人がなにかしたのか?
「なあ、そんなことはどうだっていいだろ。それより終わったんならもう戻っていいよな?ほら行くぞ真一!」
「戻る?どこに、どうやって」
「あー、それはあれだ。あれ」
「マモン、あれでは分からん。真一、先ほど像を祈った場所を思い浮かべろ。そうすれば元の場所に戻れる」
言われた通り俺は先ほどいた部屋を思い浮かべる。
そこで俺の意識がまたプツリと途絶えた。




