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創世神アルヴィラ

神様グロいです。

「…………ッあ!」


 唐突に意識が覚醒し、ガバっと体を起こす。

 どうやら打ち捨てられて間もなく意識が落ちていたようだ。


「目ぇ覚めたかい?」


「………ギン」


 声を掛けた方に目を向けると、相変わらずの色香を振りまいて座っているギンが俺を見ていた。

 隣には今にも泣きそうな顔でカイが控えている。


「気分はどうだい?」


「…………ケツと顎と手足が痛い」


 布団をめくり上げ、裸の身体をあちこち触りながら忌々しげに舌打つ。

 再生してから然程時間は経っていないらしい。


「シリも顎も裂けてたんだから当然さね。ベッタベタで拭きとるのに苦労したよ」


 そう言ってギンが煙管で側の桶を指し示す。

 水を張った桶の中は赤いのやら白いのやら黄色いのやら茶色いのやら、色んな液体固体でぐちゃぐちゃになっていた。

 あの連中、ホントに加減無かったな。

 こっちが失禁してもお構いなしかよ。衛生的に良くないぞ。


「悪い、手間かけた」


「構わんさ。昔に比べりゃだいぶマシだ」


「違いねぇ」


 俺とギンはクツクツと苦笑し合った。

 実のところ、昔はもっとタチの悪い変態に攫われ、ひどい目に遭ったもんだ。

 例を挙げると、犯されながらカニバられたりだとか、全身穴だらけにされて突っ込まれたり(・・・・・・・)だとか。

 その度にギンが攫った奴へカチ込んで助けに来てくれたっけ。

 …………女に助け出されるとか、本当に自分の弱さが嫌になる。


「適材適所。あんたは女に助けられて、対価を支払うのが仕事さね」


「…………はっきり言うねぇ」


 俺の心情を察したギンにあっけらかんと断じられた。

 どうやら、この若作りババアには一生敵いそうにない。


「……で、いつまでしょげてんだ、カイ」


「………」


 カイは目を伏せたまま動かない。

 ……責任感強いもんなぁ。


「お前のせいじゃねえさ。気にする事ァねえ」


「………でも、あたしが誘わなかったらあんたは…」


「それは結果論。それに前金で貰った分があるからマイナスにゃなってねぇさ」


 カイの額を、こつんと軽く指で小突いて笑う。

 確かに運が悪かったが、それはカイの所為にはならない。

 むしろ素寒貧になったのを助けられて良かったぐらいだ。

 第一責任の所在を求めるなら、娼館帰りを狙ったあの連中だろ。


「んじゃ、俺は帰るよ。ジェイクの朝飯が俺を待ってる」


「………本当に、色気と食い気で生きてるねぇ」


 うるせーよババア。

 人間だった頃の名残は残しておきたいだけだ。


「送るよ。流石に助けた直後にバラされた、なんてオチは後味悪いからねぇ」


「助かる。あと着替えも頼む」


「分かってるさね」


 ギンに昔の俺の服を出してもらい、俺とギンは屋敷を出た。







 町中を歩く俺とギンの姿を、幾人もの男が振り返る。

 無論、絶世の美女を隣に侍らせる俺への嫉妬の炎を込めてだ。

 ………居心地悪い。


「諦めな。一人でふらふらして首落とされるよかマシだろ」


「………なんでお前は俺の考えが読めるんだよ」


「何年の付き合いだと思ってんだい。顔に書いてあらぁね」


「年単位どころか十年単位だろ」


「黙んな」


 軽い口喧嘩を交えながら青猫亭に向かって歩みを進める。


「…………」


「ビット?」


 その途中、俺の足はある場所の前で止まった。

 怪訝そうにギンが俺の顔を覗き込む。

 俺の目は白く、神聖さを隠そうともしない建物を捉えている。


「……アルヴィラ教会かい」


 俺の視線の先を見てギンは得心が行った様に頷いた。

 アルヴィラ教会。

 この世界に降臨し、世界の礎を作ったとされる創世神を奉った教会。

 否、作ったとされる、なんてもんじゃない。

 あの野郎は本当に世界の礎を作りやがった。


「……ちょっと寄ってく」


「相変わらず殊勝なこったね」


 教会を目指す俺の背を、呆れを込めてギンは見送る。

 ………いいや、俺は別にあいつを信奉している訳じゃ無いさ。

 むしろ、恨んですらいる。






 教会の内部は、外観と同じく白一色に染め上げられていた。

 白い塗料を塗られた長椅子も、磨き上げられた大理石の壁も、十字架を背に神々しい姿を晒す御神体も、何もかもが野郎と正反対だ。

 俺は長椅子のひとつに腰掛け、その御神体を射抜くように見つめる。

 瞬きもせず、十数秒が経過する。


 パキリ、と音がした。


 直後、俺の目の前の空間が、ガラスのように砕け散る。

 どうやら野郎は俺の呼びかけに応えた様だ。

 目の前には、御神体とは似ても似つかない『黒』が居た。

 纏った黒いボロ布の下は上半身しか存在せず、剥き出しのアバラと背骨の中には心臓と肺以外無い。

 腕は四本、それぞれの手は指が七本生えた異形。

 そしてその頭部は毛が一切生えておらず、異常に肥大化した頭部には目が八つ、嘴のような器官に細長い牙がずらりと並んでいた。


『………久しいな、『器』よ』


「何が久しいだ。テメェに言わせりゃ一瞬みたいなもんだろ、アルヴィラ」


 口を開いたそいつ、創世神アルヴィラへ、俺は憎しみを込めて言葉を吐いた。

展開が早いのは仕様です。

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