ピンチ、ピンチ、またピンチ。
短いです。
後日次話と統合します。
金髪令嬢とカボチャメイドさんを見かけた翌日。
「………ぼっふぁぁぉ」
俺は再び公園で煙草をふかしていた。
ありがたいことに昨日に続いて連続で仕事が入ったのだが、どうやらそれがレイラちゃんの尾を踏んでしまったらしい。
昨日よりも更に機嫌をそこねた彼女に宿を追い出された。
…………どうしよ。
着の身着のままの上に荷物は宿に置いたままなので昼飯を買う金もない。
いや、あるにはあるんだが、銅貨が数枚という雀の涙程度。
これじゃ駄菓子一つ買えやしない。
「………腹減った」
仕事から帰ってすぐ寝たから朝飯は食っていない。
………追い出すならせめて何かつまませてくれよ、死なないっても腹は減るんだから。
「ギンにメシおごってもらおうかな」
カイは昨日客の相手だったから今の時間は寝てる筈だ。起こすのも忍びない。
よろよろと覚束ない足取りで娼館街へ歩き出す。
「おい」
「ん?」
そんな俺の背後から呼び止める声がかかった。
つい最近聞いたような声なので咄嗟に振り向くと、見覚えのある髭面。
「あ、お前ら」
「へへへぇ、久しぶりだな、不死人ちゃぁぁん?」
以前に俺から金を巻き上げた挙句、犯して打ち捨てた冒険者共が雁首揃えて俺を取り囲んでいた。
「おらっ!」
「が…ぐぶ、おえぇぇ…!」
鳩尾を殴られて思わず四つん這いになると、逆流した胃液が口から吐出される。
取り囲まれた俺はそのまま路地裏に引き込まれ、散々痛めつけられていた。
「チッ、テメェなんで金持ってねぇんだ、ああ?」
「……ぐ…色々、あんだよ…ぶぶ!?」
髭面男(アージャって言ったか?)に言い返そうとするも、後頭部を踏みつけられて顔から地面に叩きつけられる。
やば、鼻折れた…。
顔を上げると夥しい量の鼻血がボタボタと地面に染みを付けていく。
「ぶぷっ…」
「はっ、こないだから思ってたがホントにヤワだな。殴ってて気持ちいいぜ」
「クソッ…ガキ共…」
「あぁん?誰に向かってそんな口利いてんだコラァ!!」
「ぶぐりゅ!?」
鼻を押さえながらアージャを睨みつけると、俺の顔面に拳がめり込んだ。
殴られた勢いで壁に背中を打ち、息が止まる。
「かひゅっ…か、ぁ」
やば…目眩してきた…。
手足をもがれた程度の痛みならばどうということはないが、流石に頭に何発も貰うのはマズい。
痛覚を誤魔化して意識を保つことは出来ても、脳そのものが負ったダメージを誤魔化すすべはない。
逃げようにも囲まれてるし、運良く包囲網を抜け出せても娼館街や宿からはかなり距離がある。
…………終わった。
こいつらが満足するまで痛めつけられるのを覚悟し、俺は目を閉じる。
「………あの、大丈夫ですか?」
「え?」
声がかかる。
まさかこんな状況で助けの手を差し伸べる人間が居るとは思ってもみなかった俺は、驚いて顔を上げた。
いつの間にか、俺とバカ共の間に見覚えのあるカボチャ頭が立っている。
「…あ…んたは」
「差し出がましいですが、これ以上は見ていられませんでした」
昨日見かけたカボチャメイドさんが俺に背を向け、アージャと対峙していた。
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