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異端ノ魔剣士  作者: 如月 恭二
二章 異国之剣客
34/120

修羅

さて、この話はシガール君の独自修練となります。

そして最後に酒盛りする話です(意味分からん)。



とうとう主人公が本気出し始めたようですね……。いや、まあ最初から本気出してますけど……。

 「まったくお主という奴ばらは、またしても面倒事に首を突っ込みよったな? ……黙っておれば衝突は回避できようものを」


 既に夜の帳は降りている。ランタンと蝋燭(ろうそく)の明りが室内を照らし、間接照明の落ち着いた雰囲気。そんな空気の中、円卓を囲む面々を見据えながら、アルシュは話し出す。

 食事を終え、片付けも一段落といったところである。その声は暗く責めるようでもあり、どこか萎縮しているようですらあった。


 「まあそう言うな。 先生もやっちまったんだろう? ここはひとつ、持ちつ持たれつということで許してくれ」


 「……まあ、それに関しては礼を言おう。 助かった、感謝する。 ところでお主、殺しの現場を見られた可能性があるそうじゃな」


 アルシュは嫌味で話してる風はなく、純粋に憂慮しているのだろう。ふざけた様子はなく、口調が硬い。それが何よりも雄弁に事実を物語っている。


 「──いや、それはない」


 はたして、赤雷はアルシュの懸念を一蹴する。


 「あの辺りは先生も知ってるだろう。 阿片窟が近いんだ」


 赤雷が話しているのは、デポトワールでも比較的治安のよい、北東の通りである。そこにはその日暮らしの貧民から、暗殺者、そして犯罪組織の重役まで、様々な人種が利用する阿片窟がある。

 阿片窟とは阿片を吸入する施設であり、ある種の商業と快楽の最前線と言っても過言ではない。人通りは多いが、路地裏に入ればまず目につかない場所なのだ。

 何故なら阿片は危険な薬物である。依存性が強く、場合によっては幻覚作用さえ引き起こす。たとえ中毒者が往来で人が消える様を目撃しようと、頓着することはないだろう。そうでなくても傍目から見て、引き摺り込まれたと考える者が居るとは考えにくい。

 それだけではない。人間とは、こと無関係の他人に対してどこまでも無頓着な生き物だからだ。


 「ほう」


 「往来は確認した。 尾行にも注意を払い、哨戒もした。 見てるとしたら酔っ払いか、薬をきめてる狂人くらいだろうさ」


 そう、酔っ払いもある意味では麻薬中毒者(ジャンキー)だ。夢か現かも判別の付かない人間の狂言を一体誰が信じるだろう。


 「では、ひとまずは安心じゃな」


 「いや、そうもいかん。 クールの野郎は、今まで以上に警備を厳重にするだろう。 あの場では怒り心頭と言った様子だったが経験上、今の今まで警備態勢が甘くなった試しがない」


 「迂闊(うかつ)には動けない、か」


 シガールは呻くように付け加える。

 こちらが相対しているのは個人ではなく、組織だった武装集団である。仕事も困難を極めることに繋るうえ、下手を打てば投獄という末路が待っている。寧ろ投獄だけで済むのなら儲けものだ。


 「まあ当面は静観すればいいじゃろう。 勿論警戒するに越したことはないがの」


 「そうだな、現時点で大した危険はないからな」


 二人は、今後について話を進める。ある程度、事態の想定をする。ほとんど情報の整理と、状況の見直しではある。想定の範疇を越える出来事は常に起こりうる。最悪の展開に備えることで憂いを断つ目的があったのだ。

 状況は宜しくないが強いて言うなら、騎士に目を付けられたくらいである。その点、アルシュは年長者だ。先の件ではとんだ失態を晒したが、騎士の目を盗んで行動するのは最早容易いことだ。突拍子もない思考の下に騎士を出し抜くだろう。

 万一捕捉され、危険な状況下に置かれたとしても、赤雷の腕っ節があれば血路を開くことが出来るだろう。不測の事態に陥れば、判断力のあるアルシュが補助を行う。万全とは言い難いが、この二人組を崩すのは容易ではないと思われた。


 そんな中、シガールは自身の力不足を嘆いていた。


 ──くそ、俺だけ蚊帳(かや)の外か。これじゃあ、誰も守れない……。まだ力が足りないのか?


 実を言うと、赤雷とアルシュはシガールに話こそ振らないが、彼の力量を高く評価している。一月ほど前にアルシュの診療所を、盗賊が八人がかりで襲ったことがあった。盗賊は余所の町から入った為、アルシュと赤雷の脅威を知らなかったのだ。

 

 シガールは赤雷と喧嘩をした時で、アルシュを頼って通り掛かった。その際診療所の内部で修羅場に遭遇。狭い屋内。更に一対八もの物量差をものともせず、ほぼ無傷で賊を撃退したのだ。終わって見るとシガールの傷は、頬に僅かな切り傷があるのみであった。


 一方盗賊の側は悲惨極まる。連中の練度が低いのもあるだろうが、五名が半死半生。その日の内に三名が死亡した。残り三名は戦闘不能の重症だ。あるものは(けん)を切られ、またあるものは膝を斬られていた。

 鉄錆びた血潮の匂いが鼻につくわ、後始末も一苦労と散々な状況だが、アルシュ側の被害が皆無だということを考えれば奇跡的な結果である。


 では、何故アルシュ達がそんなシガールを頭数に入れていないのかというと、その後のシガールが恐怖症に駆られた為だ。賊の死を目の当たりにして、シガールは目に見えて狼狽し、猛烈な吐き気を訴えた。震戦は酷く、顔面蒼白。戦闘行動すらも忌避し、盗賊たちとはまた違った意味で惨憺(さんたん)たる有様だった。


 これらのことから、シガールを戦力として投入するのは宜しくないというのがアルシュ達の見解である。だからと言って、赤雷一人に負担が掛かるのは避けたいところではある。


 土壇場で赤雷という戦力が潰えた場合、じり貧になることは目に見えている。よしんばシガールが前に出たとしても、不調を抱える身体で闘って状況を打開できる見込みはかなり薄い。


 二人は、シガールを防衛戦力として活用する心積りである。

 赤雷との手合わせでは、焦りから最善手を逃すことは多い。一方で冷静に打ち合えば、こと守りに関しては特筆するものがある。凌ぎ方が上手いのだ。例の襲撃事件に際しても、それは抜きん出ていた。狭い屋内でありながら、迫る白刃をことごとく受け流し、また弾き飛ばした。時として最低限の体捌(たいさば)きでいなし、敵の突き込みを利用した同士討ちをも誘う、小気味よい技巧の片鱗があったのだ。

 それをこの二人は、シガールに一度たりとて語り聞かせたことはない。


 その(おご)りや増長が、致命的な隙を生み出すことを彼らは知っている。それ故、彼らは可愛がっている少年にあえて長所を教えないのだ。


 だからこそシガールは知らず、己を無力だと評する。今よりも尚、高みを目指すために。

 (なぎ)の湖面を体現するシガールの瞳を見つめるミシェルは一人、言い知れぬ感情を抱いていた。襲撃を受けた折、慰みものにされる寸前だった彼女はシガールに救われている。それ以来、以前は疎遠だった関係にも変化が生じた。もはや慕っていると言った方がいいだろう。それでも今の彼にどこか、危ういものを感じているのだ。

 瞳の色は変わらなく、光を失っているようでいて、煌々と輝いているようにも映る。底無しの井戸を覗くような寒気を覚える。


 (……確かに、怖いけど)


 シガールがミシェルたちの無事を確認した時の穏やかな笑顔は、不覚にもときめくものがあった。優しく、慈愛に満ちた顔をするような人間が、あんなに恐ろしい表情を浮かべることはない。目の前の想い人を恐ろしく思いながらも、これは気の迷いだと、ミシェルはそう結論付けた。





 



 倭ノ国でいう丑三(うしみ)つ時。草木は眠り、通りの喧騒がわずかに聞こえるか否かという時間である。シガールは密かに布団から抜け出すと、父の愛剣(デモン)打刀(うちがたな)をひっ掴み、郊外の方向へと駆け出した。


 「……おい赤雷よ、そろそろ交代の時間の時間じゃぞ。 もう一刻半はとうに過ぎて──」


 それから数分後、大きく欠伸(あくび)をしながら寝室の垂れ幕を潜り、アルシュは交代の為に声を掛けるが肝心の赤雷は爆睡していた。途中で絶句したのは、物音に反応すらしていないからであり、アルシュから見ても隙だらけであるためだ。無論、油断を誘うという狙いはあるのだろう。それにしても眠ってしまうというのはどういう了見なのか。声を大にして叫びたかった。


 ──寝入ってしまっては本末転倒だろうが。


 頭を蹴り飛ばしたくなる衝動を抑えると、アルシュは嘆息の後に彼を起こすべく声を掛けようとした。そこでようやく異変に気付いた。

 右手にミシェル、赤雷が左手に寝ている。それはいい。問題は、ミシェルの右隣にある寝具には誰も眠っていないことだ。

 次の瞬間、思わず名前を呼んでいた。


 「……シガール君?」







 シガールはデポトワールの大通りを抜け、街の南側に広がる雑居を背にしていた。街の人間に郊外と呼ばれるそこは、その実ただの廃墟だ。更に南は荒れ野であり、この近辺は特に砂ぼこりがひどく、生活に困るとのことで人が寄り付かなくなってしまったらしい。先程からも、やはり砂ぼこりが少し舞っていた。


 そのように陰鬱かつ荒廃も甚だしい場にあるシガールは、まるで幽鬼さながらに歩く。元は広場だったのだろうか、開けた場所に出るとそこで足を止めた。


 彼は深く息を吸い込み、そして吐き出すと剣を抜き、唐突に一歩を踏み込んだ。そうすることが当然であるように、躊躇(ためら)いなく、鋭く地を蹴る。

 シガールはなにも錯乱している訳ではなかった。だが、無人であるこの状況で、切り込むように打刀を、長剣を振るう。その様相たるや尋常のものではない。


 明らかに無人なのだが、シガールの目は敵を捉えていた。

 洗いざらした革鎧に短槍、長剣。統一感がまるでないような()で立ちは、かつて彼の身内とも呼べる隊商を滅ぼした盗賊たちのものだ。


 シガールは、怨敵(おんてき)を思い浮かべて剣を振るっていたのである。それは思い出すなどという生ぬるいものではない。下卑た笑みから、個々の動作までの全てを想定した仮想の敵とすら言えた。


 この奇態の実状を知れば誰もが子供の浅知恵と、一笑に付したことだろう。しかしながら、その眼はもはや敵と相対した者のそれと化している。

 戯れごときで剣呑な気配を漂わせ、剣を振るわけがない。


 何よりもその打ち込みには重みがある。


 人と人が刃を交える場合、相手の一挙一動を見逃せず、互いの気が(せめ)ぎ合うものだ。殺気ひとつとっても、それだけで次の一手が露見することすらある。


 それらを踏まえてもシガールの攻撃に淀みはなく、慎重かつ大胆である。

 時には身体を沈ませ、袈裟(けさ)に一閃振るう。転じて平正眼で牽制するような様子をも見せた。


 しかもこの立ち居振る舞い、明らかに一対多を想定したものだろうと思われた。牽制時もそうだが、全体的に横薙ぎの傾向が強い。常に半身で構え、全体を警戒した動きをする。

 鋭い呼気は、まさしく裂帛の斬撃であることの証明に他ならなかった。


 これほど鬼気迫った剣舞を展開することの、一体どこが子供の浅知恵なのだろうか。


 その一部始終をアルシュは目の当たりにした。

 彼もシガールの行動を初めて見たときに感じたものは「やはり子供だ」ということだ。その微笑ましい思いは、いつしか畏怖へと変じていった。


 ──人の執念ほど恐ろしいものはない。子供でも、斯様(かよう)に苛烈なのじゃろうか。


 戯れなどという様子ではない──それでは一手一手が鋭いことの説明がつかない。シガールの剣が纏う気配は斬り合いそのものだと気が付いたのだ。

 赤雷にある程度、体術の手ほどきを受けた賜物(たまもの)である。

 同時に、憐憫(れんびん)の情もわきあがる。


 ──可哀相に。若くしてその道しか知らず、恋も、人並みの楽しみもないというのか……。


 心優しくも荒事の世界に身をおき、それのみを追い求める様に胸を痛める。それでいて、尚も高みを目指す在りようは痛ましい。何故ならシガールが、彼自身を罰するようにも映るからだ。


 ふと、アルシュはシガールがうなされている時のひと言、そして面と向かって言った台詞を思い出した。


 ──俺が弱かったから皆死んだ。


 アルシュの顔から血の気が引いていく。あれは今にして思えば覚悟の言葉でもあったのだ。年端もいかない子供の戯言(たわごと)だと思っていたことを後悔し、また恐怖していた。

 鋼の意思でここまでやるなど並み大抵ではない。この若さにしては不釣り合いなほどに強靱な意思、シガールという少年の人格は破綻(はたん)していると考えた方が自然である。


 ──シガール君、君は……。


 掛ける言葉を持ち合わせていないことが恨めしく思えた。アルシュにとっても、シガールは長年付き合った人間だ。半ば息子のように思っている節さえある。

 大事な身内を癒すような言葉を、彼は知らない。知っているのは、彼のような傷を治すのは時間と、真に親しい人間であることだけだ。


 口を開けばペテンを並べ、気休めしか口にできないであろう自分にアルシュは嫌気が差した。


 ──これは、いずれ赤雷も知ろう。儂も掛ける言葉を、なにか持つべきじゃな。……戻るか。


 そう考えて踵を返したその時だ。彼は砂利を踏み、音を立ててしまった。夜の空気は、昼に比べると格段に音を伝えやすい。しかも、彼が身を隠すようにしていた遮蔽(しゃへい)は枯れ木一本だけなのだ。今この瞬間、アルシュを防護するものは何もなかった。


 寒気が身体を侵す。その気配にアルシュは、至極嫌な心当たりがあった。それは殺気である。


 ──まずい!


 本能に従って身体を傾けると、肩に痛みが走る。彼我距離は見積もって一五間以上。その距離を一息に詰めうるとは考えづらい。

 投げナイフだという推論が出るのに、一拍の時間を必要とした。

 身体を傾ける直前の首の位置と、ナイフの飛来した位置とを参照すると再び戦慄に見舞われた。恐らく、回避行動を取らなかった場合、首の辺りに刺さっただろうからだ。恐るべき精度であった。

 背後に迫る気配に向けて、アルシュはやや意地悪そうに話すのが精一杯である。


 「まったく、君にも困ったものじゃな……」


 「──なっ!? ……す、すいませんでした、先生!」


 ようやく表情を(つくろ)って向き直ると、そこには深々と(こうべ)を垂れるシガールの姿があった。

 胸が痛むのは、彼の優しさのせいだろう。あれほど苛烈な剣を振るい、終わってみれば人をも案ずる気配りを見せる。

 人を斬り、恐怖と後悔、そして自責の念に駆られながらも、アルシュたちの安全を第一に考えることのできる男である。

 アルシュは彼らと過ごす日々の中でそれを知り、彼の力になろうとした。


 だというのに、やはり何も言えなかった。好意に対して曖昧に微笑むぐらいしか、対応の仕方を知らないのだ。偽善という胸くその悪くなる言葉が実によく似合う。アルシュは内心で、そう自嘲をこぼす。


 ──じゃから、今だけは……。


 ──今だけは闘いを忘れて欲しい。

 アルシュは今、自覚せず素直な気持ちでシガールに話し掛けることが出来そうな気がしていた。


 「なあ、シガール君。 そろそろ疲れたじゃろう。 どれ、月でも見ながら一杯やらんかね?」


 自分でも奇妙な抑揚だったことに気付き、アルシュは苦笑するのを悟られないようそれと知れず躍起になった。


 「……はあ」

 

 「ぷっ……くくく。やはり、シガール君はシガール君じゃな」


 要領を得ないといった風のシガールに、笑いを堪えきれず吹き出した。シガールの顔が更に怪訝そうにしかめられる。


 「すまんな、つい。 まあ、こんなところではなんじゃ。 何より見張りの交代もしたいのでな、移動するとしよう」


 「そうでした。 怒られないと良いのですが……」


 「なに、赤雷の番じゃが、あやつもそこまで野暮ではあるまい。 一杯程度許してくれよう。儂が呑みたいと言うことじゃ、なにぶん潰れるほど呑む訳でもないのでな」


 ミシェル君もそろそろ起きる頃じゃろう、とアルシュは締めくくる。自業自得という言葉をようやく飲み込みはしたのだが。


 「そこまで言うのなら……。では、ひとつお願いがあります」


 「なんじゃ、赤雷への弁解か?」


 そこでシガールは言い淀む。無言で続きを促すと、ゆっくりと口を開いた。


 「……果実酒なら大丈夫だと思うので、用意してくれると嬉しいです」


 その言葉にアルシュは笑う。言われてみて気が付いたが、アルシュの呑む酒は火酒など、辛口のものが多い。成人する手前の少年と言えど、初めて口にするのがそれでは酒を酌み交わすどころではなくなる。果実酒であれば口当たりも柔らかく、飲みやすいことだろう。言われてみるまで思い至らないのは、上戸(じょうご)故のことだ。

 アルシュに対する遠慮と、先ほど攻撃した件があるのだろう。若干シガールは畏縮していた。


 「分かった。──であれば、屋台は難しいの……酒場で一本手頃なのを頂こう」


 「良いんですか、先生?」


 溜め息を吐き、努めて優しく言った。


 「君があやつと喧嘩した時、何度儂のところへ駆け込んだ? 儂とあやつが一体何度君のことで喧嘩をした?」


 それは、とシガールが口ごもる。

 赤雷とシガールは同居した当初、幾度となく口論し、その度にアルシュの診療所でやっかいになったのだ。

 尚、アルシュは当時の赤雷のあまりに傍若無人な物言いに、それ見たことかと激昂。シガールを我が子として受け入れようとしたことさえあった。

 頼るものが他に居なかったとは言え、今更遠慮というのも水臭い話に思えた。

 

 「じゃから、君が遠慮をすることはない。 先の件は儂の不注意じゃった、呑んで忘れるとしよう」


 「……はいっ!」


 それから二人は診療所に戻り、道中の酒場で甘口の葡萄酒(ぶどうしゅ)を手にしてささやかな酒宴(しゅえん)(もよお)した。


 (ほの)かに青い月明かりに照らされて、アルシュたち二人は(さかずき)を交わす。

 赤雷との出会い。彼が犯した大失態やポカ、彼の甘さなどをつまびらかにした。シガールは、過去の仲間たちとの思い出話を持ち出し、会話を弾ませた。(さかな)のないさもしいもので、酒は酸味が強いなど酷いものだが、笑いが場を和ませる。不思議と心が満たされた。

 気が付けば、夜が明ける程に楽しんでいたらしい。そして二人はまた顔を見合わせて笑いあう。それすらも可笑しくて仕方がなかったのだ。酔いも手伝ったのだろう。


 シガールの顔に笑顔が戻ったことを確認し、アルシュは満足そうに笑い、寝室へと戻っていった。


 因みに、途中で赤雷も参加したいと申し出たのだが、すげなく一蹴され泣く泣く見張りに戻ったのであった。

アルシュって大体、五〇前のおっさんなんですよね。

そして赤雷が一回り年下。

ミシェルはシガールより、確か二つ上で……あ、成人してます(笑)



冷たい価値観しているアルシュもやっぱ、優しいおじさんですよね。……患者には容赦ないですけど。

(現状のままで行けそうです、この話)



H29.5.9 描写追加付与

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