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異端ノ魔剣士  作者: 如月 恭二
四章 暴虐の魔剣士
116/120

異動 参

前回のあらすじ。

団長との腕比べに勝ったシガール。

そんな彼の前に、立ち塞がる如月恭二。

奇人変人で変態の如月がレーストップになるのか、はたまたたまたま通りすがりのブリジットが漁夫之利をさらうのか。

見えないレース展開と、まるで脈絡のない展開に光の速さで取り残される読者。

 兵舎の中を、シガールは歩く。右隣にはローラン達が連れ添っている。屯所の中と言うことで、皆軽装だ。そんな中、ローランの部下がシガールに話し掛けた。


 「しかし、すげぇなシガール! 団長を打ち負かす奴なんざ、そうは居ねえんだぜ? まったく、大したもんじゃねえか」


 「まったくですよ。お前は本当に強くて尊敬するよ。団長に次いで、俺達若手の憧れなんだぜ」


 (ひげ)を撫でながらそう言うのは、中背ながらがっしりとした身体つきの男だ。濁声(だみごえ)で、角張った面構え。槍を持たせれば、団で随一の豪傑モーリスである。若い連中も、彼に賛同し、彼を絶賛する。勿論、誰もが気持ちよく讃えてくれるということはない。己の地位が危ぶまれるからと誹謗(ひぼう)する者。自身を持たざる者とし、嫉妬(しっと)する者とが居る。

 彼らとは酒を酌み交わすこともよくある。気心の知れた先達と仲間だ。


 「ありがとうございます。団長、モーリスさん。でも、俺なんてまだまだですよ。型稽古では、型に囚われてしまいますからね」


 「やれやれ。お前はもう少し評価を受け入れた方がいいぞ? 先にも言ったが、過ぎた謙遜は見苦しいからな。程よく、は難しいが……程々にしろよ」


 「あぁ、出た出た。毎度の如くだな、ローランの親馬鹿と来たら。娘が生まれたらこんなに丸くなりやがった。そら、ポールからもローランになんか言ってやれ!」


 「ちょっと、モーリスさん!? 俺に振らないで下さいよ!」


 「白昼から絡むとはなあ。酔った時より酷いんじゃないか、お前」


 そりゃないぜ、とモーリスが嘆く。彼は無類の酒好きでもあり、潰れると泣き上戸になることで有名だ。痛いところを突く、と言いながらもその表情は明るい。若手のポールは、モーリスの腕に掴まりもがいている。


 「おいシガール、てめえ笑ったな!? なんなら、後で俺とサシで勝負するか?」


 「本当に勘弁してくださいよ! 俺なんかが敵うわけ無いでしょう!?」


 「いい加減にしろよ、モーリス。そんなにこいつを困らせてやるな。やり過ぎは禁物だぞ」


 分かってる、とモーリス。ローランと同輩である彼だが、思慮分別を欠いているわけではない。ローランの面子も弁えた上でふざけているのだ。たまに泥酔して下手を打つことだけが、(たま)(きず)ではあるが。


 「分かってるよ! 少しくらいは目を瞑ってくれって」


 「はは、私でもしがらみは山ほどあるんだ。分かってくれ。これでも笑って過ごせる仲間の多い騎士団だと、王都じゃ評判なんだぞ。あぁ、そうだ」


 思い出したようにローランは言った。


 「シガールは、後で来るように。適当なところで飯にしよう。話がある」


 口々に羨むような言葉が飛び交う中、シガールは覚えのない呼び出しに不安を抱えるのであった。

──次回、“お巡りさんこっちです”。


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