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上位貴族の令嬢ロザーナの取り巻きの3人が洞窟から逃げだした。今ここにいるのはロザーナと1人残った取り巻きである俺だけだった。
好きな人を追いかけて冒険者をやってみたくなった高飛車超我儘ロザーナが冒険者ギルドに登録し、初日に簡単な依頼を受けたが、予想外のモンスターがいた。
洞窟にある金色に光るコケを採取しようと入った先に、大型のデーモンがいたのだ。しかも頭が二つあるブラックデーモンだ。明らかに普通のレッドデーモンじゃない。
通常は赤色で首も1つなんだが、これは突然変異のモンスターだ。
俺はロザーナを見た。
腰が抜けて、地面に座り込んでいる。
ブラックデーモンの攻撃を避けながら、攻撃するが、剣だけでは倒せそうにもない。
「ロザーナ様!早く御自身を守る防御魔法を唱えてください!」
そう叫ぶと、ロザーナはハッとした顔になり呪文を唱えると、白い膜が彼女の周りを覆った。
ロザーナが魔法が使えてよかった。詠唱者限定の防御魔法だけだが。
俺は逃げ出した取り巻き3人が助けを寄越してくるのを知っていた。だから逃げずに必死に勝てないブラックデーモンと死闘を繰り広げていた。
何度か避けきれずにまともに打ち合う。腕が折れそうだ。剣も折れそうだ。俺の心も折れそうだ。
早く来てくれよ、俺が死ぬ前に。
ロザーナの精神も限界かもしれない。さっきから震える声で俺の名前しか言わなくなった。
そして、
もう無理だって時に助けがきた。現れたのは未来の勇者一向。
俺が苦戦していたブラックデーモンを手際よく倒し、ロザーナと以下1名を救った。悔しいが、さすが未来の勇者だ。
こうなる展開は小説でわかっていた。ここは小説の世界だからだ。そして俺は転生者で気づいたら、取り巻きキャラに成り代わっていた。
本来なら取り巻きの1人でもある俺も逃げ出していたが、置き去りにしなかったのは、そこから転落人生を歩むからだ。
ロザーナを見捨てて逃げたことで、ロザーナ経由でイジメにあう。
それが嫌で逃げるように退学→家から勘当→路頭に迷う→行方不明。
そんな自分の不幸な未来を今、回避した。
小説だとロザーナはこれを機会に自身を救った勇者にますます好意を寄せるようになる。
しかし、それが彼女の死亡フラグだった。彼女の場合は勇者を強引に手に入れようとして、勇者に惚れている暗殺者の女に殺されてしまうのだ。
酷い未来だ、と思いながら、勇者一向と共に洞窟を出た。
そんな風に物思いに耽っていた俺は気づかなかった。
ロザーナの視線は勇者にではなく、俺に向けられていることに。




