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貴族連中が多く通っているファルラー学園の食堂は凄い。
食堂というより超高級レストランかと思うぐらい豪華で、エレガントな黄金色が眩しかったりする。
その中で一際高そうなテーブル席に、俺とロザーナが座っていた。
今は食事を終えて、お互い紅茶を飲んでいる。
俺はロザーナの取り巻きが自分だけになってしまったことに酷く気まずく感じていた。
今までは他の取り巻きの3人とロザーナの会話をのんびり聞いていればよかったが、今は自分が話し相手にならなければいけなかったからだ。
…何を話せばいいのか。
ともかく気になっていることでも言うか。
「ロザーナ様。午後の予定はいかがなさるんですか?」
このファルラー学園の授業は午前で終了だ。
つまり食事を終えたら、どこに行っても自由。
生徒の自主性を促す目的があるらしい。
さすが貴族連中に媚を売っている学園だ。楽でいいが、取り巻きである俺は彼女に張り付いていなければならない。
取り巻きしてないと、両親が怒るんだよな。
「…そうね。魔道具屋に寄るわ。もっと強力な杖がほしいから」
昨日のことが原因か。
「ロザーナ様、申し訳ありません。私の力不足でロザーナ様を危険にさらしてしまいました」
「貴方のせいじゃないわ。ただ運が悪かったのよ」
ん?
「ですが…」
「というよりも、あんなモンスターが洞窟にいるという情報がなかったギルドが悪いわ」
なんか、ロザーナが優しい。
いつもならキツく責められるのに。
「…ロザーナ様」
「とにかく、貴方は悪くないわ。いいわね」
「はい」
…不気味だ。
「魔道具屋に寄ったあとは、貴方の武器も強力なのを買ってあげるわ」
「いえ、必要ありません」
「何故かしら?」
「ロザーナ様はまだ冒険者を続けるおつもりですか?」
「貴方はもうやめたいの?」
「私はロザーナ様の意思に従います。ですが、あまり危険なことはしてほしくありません」
「うっ……、でも……」
俺は悲しげな表情でロザーナを見つめる。
「っもう!わかったわ!やめればいいんでしょ!」
「その方がよろしいかと」
小説とは違った方向だが、彼女はただの当て馬だから、そんなに影響は及ぼさないだろう。
俺達は貴族なんだから、本格的に強くなる必要はない。
とはいえ、あの場面を最低限切り抜けるために今日まで頑張って鍛えていたりしたけど、それでも冒険者はもうたくさんだ。
命がいくつあっても足りない。
「なら、今日はゆっくりしましょう。久しぶりにヴァイオリンを弾くのもいいわね」
ロザーナのヴァイオリン演奏か。プロ並みに上手だが、ロック派だった俺には退屈だ。
それならまだ、追いかけっこの方がマシだな。
「そういえば、サキアスはメーアル広場に向かったそうです」
未来の勇者であるサキアス。
サキアスに夢中なロザーナはこの名前をだせば、必ず後を犬のように追いかける。
もちろん今日は、サキアスが冒険者活動をしないことは把握済みだ。
「そう。でも私はヴァイオリンを弾きたい気分なの。付き合ってくれるわよね、グートリツ」
「……喜んで」
ロザーナがサキアスを追わないなんて、初めてだ。
ギリギリ動揺を表に出さなかった俺をよそに、ロザーナは久しぶりの笑顔を見せた。




