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スキルコネクト 〜コミュ力 ゼロ、社会制 ゼロ、の社会不適合者にMMOの壁は高い〜  作者: 発条ザムライ
そらから、きたもの

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哭き疲れた鬼

折れた黒い塔が、軋む。

空気が震え、空気そのものが悲鳴を上げる。


世界が、揺れていた。


上空。

巨大な影が、ゆっくりと、しかし確実に傾いていく。


青鬼の哭き声が、地面を這うように響く。

低く、重く、まとわりつく。

下からも、上からも。

まるで世界そのものが“泣いている”みたいだった。


黒い塔の折れ目が、ばきり、と音を立てた。

崩壊が、加速する。


「……残された時間は、もう数秒。」


だけど、

青鬼の”哭き声”は、まだ、止まない。

”哭き声”のせいで、身体が動かない。このままじゃあ、塔に押し潰される。俺ごと。

というか、こいつのことを青鬼と呼んでいいのか?

予想通り”哭き声”を発している。”鬼”は、第三の形態へ移行しようとしていた。


”哭き声”を発せられた瞬間。

世界から、色は戻っていた。

赤も、青も、塗り潰されていた景色が、元へ戻る。

その代わりなのか、けたたましい崩壊音が、空間を響かせている。


__まあ、半分は俺がやったことだけど。


上を見て、そう思いながら、次は、もう半分。

”鬼”の方を確かめる。


蠢く”色”が、表と裏で分かれている。

腹の方を、赤色。背中の方を、青色。

色がそれぞれ分かれ、そして__裂けた。


肉が裂け、骨格が軋む。

上半身が、腹と背中で真っ二つに割れた。


左右じゃない。

前後。


身体そのものが、“表裏”で分裂している。身体の主導権を取り合っているかのように見える。

それは、まるで、心と体が分かれたかのように、引き裂かれたかのように。

対面することのなかった鬼同士が、分かれたことによって互いを見ることができた。

赤と、青。

その二つの仮面の表情が、変わる。

赤は、永遠に怒り続けるような表情に、青は、永遠に哭き続けているような顔。


そいつを。


何と呼べばいいのか。


|「哭き分かつは、赤青(せきせい)の背反鬼」との戦闘を開始します。


システムメッセージが、空間へ響く。


鬼の名を。

祝詞みたいに。

告げるように。


「……けど、残念。」


息を吐く。


「ここからは、エンディングだ。」


下からの哭き声が、少しずつ小さくなっていく。

哭き声が徐々に収まっていくと、身体の力が、戻ってくる。


だけど、上からの音はさらに大きくなっている。


このままじゃあ、身体が動くようになっても、すぐに押しつぶされる。


__どうする?どうすればいい?


塔破壊からの、ボス撃破は考えていたんだけど…………。

押しつぶされるなんて聞いてない。

いや、だって!

回避スキルあると思ってたんですもん。

まさか、付け忘れるなんて思ってなかったんですもん。


__落ち着け、とりあえず落ち着け。方言が出てきてるぞ。地方民でもないくせに。


今持ってるスキルは、3つ。

どれも、移動用のスキルじゃないし、2つはスキルコネクトを使ったから、クールタイム中。

だから、実質一つしかない。つまり。

残るのは、[投擲]だけ。

[投擲]は、移動用のスキルじゃないよ…………。

バリバリの攻撃用。どっちも押しつぶされようとしてるのに、攻撃したところで意味ねえよ。


「ここまで来て、ボスと心中なんてごめんだぞ……!」


身体は、いつ動けるようになるのかわからないから、感覚では常に動かしてる。指が動けば、腕が動く。

腕が動けば、身体も動く。

耳は、常に崩壊音を拾い続ける。

視線は、止まらない。

瓦礫。落下角度。距離。空間。

常に、動き続ける。

フルダイブのアバターで出来るフルの情報を五感で感じながら、思考を続ける。


身体へ、力が戻りつつある。哭き声が弱い。つまり、もうすぐ動ける。

けど、声が止めば、”背反鬼”も動き出す。こちらに、攻撃してくるのか?それとも、こいつも、回避に徹するのか?

いや、そもそも、こいつを動かさない用にする必要もあるのか………?

上からの音は、刻一刻と近くなってる。今この瞬間に頭上へ落ちてきてもおかしくない。


周りには、塔の一部と思わしき破片が降り注いでいた。


スキルを変えるか?……………………そんな時間はない。

思いっきり、ダッジュで。……………間に合わない。

いっそ、ここで回避を。………………デカい質量が降ってくるんだぞ。隙間なんてねえよ。


「………万事休すってやつか。」


思考に隙間が、空いた。


「………。」


諦めとは__違う。逃避でもない。


覚悟を決めるための__間。


「__よし。」


[投擲]。

何かを、”当てる”スキル。

そのスキルを__


「勝利を当てるスキルに、変えてやる!」














やらなきゃならないことは、2つ。


回避と、妨害。


回避は、言わずもがな、今まさに崩れ落ちてきている黒い塔から、逃げる事。


そして、


妨害は、これから、俺と同時に動き出す”背反鬼”の動きを、止める事。

奴は、どう行動するかわからない。攻勢に出るのか、回避に移るのか。

完全な、出たとこ勝負。


部の悪すぎる賭け。


「賭け事なんざ、苦手な分野1つだよ………。」


幸運の女神様が、振り向いたこと何て、数えられる程度しかない。


しかも、一番難しいのは、これを1つのモーション。動きでやらなきゃならない。


動けるのは、たぶん、一瞬。

それ以降は、たとえ動けたとしても、間に合わない。


せめて、背反鬼の動きを制限できればと思うけど、何かないか?

何でもいい。例えば、苦手な物とか。動きを止める物とか。奴の”狙っているもの”とか。


ピシッと、身体がこわばる。


思考が一点へ収束する。


「あるや。あるじゃん!ずっと狙ってた物。」


自身の顔。

それに、張り付いている。片面。

割れた鬼の半面。

《青鬼面・片面》に、意識が向く。


「…………。」


理解した瞬間。

顔が引き攣った。


「いや、待て待て。俺の目的を忘れんな!」


元々俺は、仮面が欲しくて、この場所まで来たんだろ!

目的の物を囮に使って生き延びたって意味ないだろ!

振り出しに戻るだけだ。

無し。無し。

ダメだ。ダメ。


けど、


思考が固まってしまった。

これ以上のアイディアが、ない。

考えてる時間も、ない。


崩壊音が、さらに近づく。


「…………あーーーううっ。___あーーっもう!」


諦めたように、決断する。半ば、投げ捨てるみたいに。


「考えてる暇がねえ!」


ここで、死んでも振り出しだ。


「腹括れ、キクシオ!」


その瞬間。


身体が、動き始める。

動く動作に、迷いがない。指が、腕が、身体が意思を持って行動する。


片腕は仮面に、もう片方はインベントリへ。

一本。一本でいい。それだけ掴め!


踏み込む動作をもう始めている。


両の手に、それぞれ、仮面とナイフを掴んだ瞬間。


踏み込み。


「っ__[投擲]!」


|スキル発動 [投擲]。


手に、力が宿る。

世界が、研ぎ澄まされる。


狙い。軌道。速度。回転。


全部が、”標的“を当てるために補正される。


……だが。目の間に、”背反鬼”。

裂けた上半身。蠢く赤と青。

騒がしい肉塊が、同時に動き出す。


その姿はまるで。


『こいつを殺せ。』と、


そう、互いへ叫び合っているみたいだった。


けど、


背反鬼の視線は別のところへ向かっている。

蠢く肉がその視線を捉えようとして、


『__気づく。』


さっきまで、目の前にいたはずのものが。

消えていることに。


直後。


世界が、落ちてきた。


轟音。


上から、凄まじい質量が落ちてくる。空気が圧縮される。空間が叫び声を上げている。


地に居る物は、生き残らない。


黒い塔。


その崩壊すべてが、地上へ降り注ぐ。逃げ場なんてない。

地形ごと、空間ごと、何もかもを押し潰しながら。


世界が、沈む。


そして。


蠢く鬼は、もういない。

残っていたのは。


冷たく、傷付き。

ひび割れた、一枚の仮面だけだった。


お疲れ様でした。これにて、”哭いた鬼”戦は、終わりです。どうやって、逃げ切ったのかは、次に書くのでぜひ、推理してみてください。だいぶ、力技です。

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