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スキルコネクト 〜コミュ力 ゼロ、社会制 ゼロ、の社会不適合者にMMOの壁は高い〜  作者: 発条ザムライ
そらから、きたもの

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過呼吸のコンビネーション

異形の腕が、目の間に迫っている。


回避を行う、スペースがない。

逃げ場が、ない。

黒猫__閏尾(うるね)には、頼れない。


攻撃を受けるしか、ない。

だが、


無償(ただ)で、もらうほど貧乏じゃないんだ!」


インベントリを開く。

取り出したのは、厚い皮。

硬質な毛並みの(うし)の皮。

《輪廻を巡る十二象》。

第二象――(うし)からのドロップ品。


防具素材。

本来なら加工して使うようなアイテム。

だが、今は違う。


こいつを取り出し、皮を体に纏って、そのまま。皮ごと、異形へ突っ込む。

__体当たり。

下手な抵抗。無茶な攻撃に見えるかもしれない。


異形が、腕を閉じる。抱き潰そうとしてくる。抱き込むように。逃がさないように。優しく、壊すみたいに。

青黒い腕が、(うし)の皮ごと締め上げた。


だが__。

(うし)の皮、を残してキクシオの身体が、


__消える。


「逃げ場がないなら__作るまで!」


異形の股下。

滑り込むようにして、身体が抜ける。

地面へ転がり、そのまま距離を取った。


「っぶねぇ……。」


冷や汗が出そうだ。まともに食らえば終わってた。


体当たりをしたその反動で、股下に潜り回避を行った。

ほとんど、賭けに近い回避方法。

異形の抱き潰そうとしてくる腕が、一瞬でも早ければ、成立しない。

抱き締めるみたいな動き。なのに、中身は完全に圧殺。

木をへし折る腕だ。捕まれば、人間なんか簡単に潰れる。


けど、これで少しわかった。


「もしかしたらと、思ったが、攻撃じゃないのかもな。」


すごい音を立てながら、今なお、(うし)の皮を抱き潰しているが、


元々は、庇うため、”守る”ための行動だったのかもしれない。

だけど、壊れた。

何者かに歪められた。


その結果。

守るはずの力で、潰している。


異形を見る。

困ったように笑う、青い鬼面。


優しい顔だった。


”優しいまま”、

()()()()()


「こいつはまだ、”守っている”つもりなのかもな。」


可哀想だと思えばいいのか。

それとも。こんな身体にされても、まだ、誰かを守ろうとしているその行動に感服すればいいのか、


わからない。


けど、


「その優しく笑っている仮面の下、”困ったような表情”だけは、取り除いた方が良さそうだ。」


この異形。

こいつを倒す。覚悟が決まった。


異形が、ゆっくりと顔を上げる。


抱き潰していた“偽物”が、本物じゃないと気づいたのか。

青鬼面の視線が、こちらへ向く。


視線が、交差した。


森が、静かになる。


まともに相手するだけ無駄だと思っていた。

時間をかけず、

抜けるべき敵だと。


けど――。


「……やめだ。」


相手を射抜くように、見て。


「こいつは、俺が倒す。」


その瞬間。


頭の上から、

重みが消えた。


黒猫__閏尾(うるね)の声が鳴き。

その合わせる視線が、1つ増える。


閏尾(うるね)が、するりと頭から飛び降りる。

軽い音。


そのまま、青鬼面の前へ。


逃げない。

威嚇もしない。


ただ、

真っ直ぐ見上げていた。


「ちょっ!」


驚いて視線を、閏尾(うるね)に向けるが、

黒猫は、振り返らない。


その瞳は、青鬼面のゴブリンしか映っていない。


閏尾(うるね)がダメージをもらうと、どうなるのかまだ未知数だ。

そして、周りにはゴブリンが溢れている。

だから、俺が、回避に徹していれば、俺に乗っている閏尾(うるね)は、攻撃を受けないだろうと思って乗せていたんだが、


「……お前も戦いたいってか。」


過保護なのが、バレてたか。


ナイフを握り直す。

視線を前へ。


異形。青鬼面。歪んだ守護者。


その奥。

こちらを見つめる、優しい目。


「なら――今度こそ。」


黒猫と、

同じ方向を向く。


「連携ってのを見せてやる。」











青黒い腕が、ゆっくりと振りかぶられる。

関節が、ぎちりと軋んでいる。


「これは、普通の攻撃。」


瞬間。

半拍遅れて、回避行動をする。


「これで、間に合う。」


身体を流すように横へずらす。


直後。


空間が、遅れて抉れた。

木々が揺れる。衝撃だけで、背後の枝葉が吹き飛んだ。


こいつとの戦闘で、防戦一方にされていた理由。

それは、閏尾(うるね)が気まぐれだから――だけじゃない。


振り終えたはずの攻撃が、遅れて、“もう一度”肉体だけ追いかけてくる。2段階攻撃。

背後へ回り込み、抱き潰してくる。掴み攻撃。


この2つのスキルに合わせて、


「ディレイ攻撃。」


攻撃タイミングを、“ズラす”。

本来避けたはずの場所へ、遅れて攻撃を置いてくる。回避の感覚を狂わせる、厄介極まりない攻撃。

ディレイ攻撃の対処法は、覚えるしかないって言われるほど、厄介な攻撃だが、


「こいつは、通常攻撃がディレイ攻撃。…………覚えやすかったぜ。」


上手いゲーム会社程、このディレイ攻撃の前に、”ヒント”を置く。

片足が浮く。肩が沈む。武器を持つ角度が変わる。

一見わからない“予兆”。

この”ヒント”を読み解くと、驚くほど簡単に相手の次の手がわかるようになり、ダンスを踊っているような気分になる。

ダンスしたことないけど…………。


今回の青鬼面のゴブリンは、逆だ。


ディレイ攻撃以外、スキル使用時。


皮膚の下。

身体から悲鳴が上げるように、肉と骨が蠢く。


身体の奥。

“何か別のもの”が、遅れて動き出す。


それが、合図。

覚えた瞬間。


「こいつは、ただの動く屍だ。」


回避行動のあと、空間が抉れる音を背に、

接近する。


継ぎ接ぎだらけの身体。

その縫い目に沿うように、ナイフを滑らせる。


裂く。ポリゴンの光が散る。


すると。


皮膚の下が、蠢く。

両腕が抱くように広がり、抱き潰してくるが、


|スキル発動 [疾走]。


一歩。


それだけで、距離が開く。

異形の腕が、空を抱いた。


瞬間。


猫が__鳴く。


__ナー。


[猫に小判]。3つ目にセットしておいたスキル。

[投擲]。

そのスキルの力が、手に持っているナイフに宿る。


__投擲。


だが。

投げた先は、敵じゃない。

自分の真下。ただの地面。

当然。そのまま刺さる――はずだった。


だが、ナイフは。


物理的にあり得ない軌道を描く。


上に、急上昇し、青鬼面のゴブリンの身体を貫きながら、円を描くように旋回。

そのまま――


キィン。


手元へ戻ってくる。


「――よし!」


思わず、声が漏れる。


「できた!ぶっつけ本番だったけど。」


投擲スキルは、”狙った場所へ命中する”。

なら、

狙う対象を“自分”に設定し、勢いと回転を加えれば。

一人キャッチボールみたいな芸当も、できる。


ミスれば、自身を貫く刃になるが、決まれば回収不要。軌道操作可能。

実質、戻ってくるナイフ。こんな事も出来る訳だ。


掴み攻撃の後。こいつには、大きな隙が生まれる。

(うし)の皮を抱き潰していた時と同じだ。“守ろう”とする時間だけ、硬直する。

なら。


「そこが、穴だ。」


疾走。

森を駆ける。


青鬼面のゴブリンを中心に、高速で周回。全身へ、ナイフを刻み込んでいく。

狙うのは――継ぎ接ぎ。

縫い合わされた線。


「わざわざ繋いでるってことは……。」


斬る。


「見せたくないものでも、あるのか。」


裂け目から、光が漏れる。異形が、軋む。


その瞬間。鳴き声。

閏尾(うるね)が、準備完了の合図のように__鳴く。


__ナーォ!


その口元には――巨大な水球。


大砲が__来る!。


残していたスタミナをフルに使い。

全力で、距離を取る。

そして。


――轟音。


水が、砲弾みたいに森を貫いた。

衝撃。爆風。木々が、まとめて吹き飛ぶ。


まともに直撃した青鬼面のゴブリンは、後ろにあった木々もろとも、吹き飛ばされている。


「……すごい威力。だけど、」


倒れない。


全身、ずぶ濡れ。切り傷だらけ。肉は裂け。骨格は歪み。

それでも。そいつは、立っている。


強い攻撃を、受けた反動か。

動かない。


「…………いや……。」


違う。


先ほどまでと、“雰囲気”が違った。


集まっていたゴブリン達。

周囲を囲んでいたゴブリンたちが、逃げるみたいに散っていく。

その場に居た奴らが、後退るたびに枝が鳴る。

森が、震えている。


そして、鬼面だけが()()()いる。


半身。死したゴブリンの肉体がぐずぐずに崩れていく。

それと同時に、青の鬼面。癒着していた解けるように肉に埋まっていたものが、剥がれるんじゃない。


浸食している。


鬼面が。

死体を。

肉を。

骨を。


青黒く、塗り潰していく。


身体が、組み替わる。


継ぎ接ぎだった四肢が、鬼の骨格へ変質していく。

皮膚の下で蠢いていた“何か”が、全身へ広がっていく。


そして。


困ったように。泣きそうに。笑っていた、その顔。

今度は、死したゴブリン側の顔まで。同じ表情へ変わっていく。。


全身が青黒く染まった。

その異形は、ゴブリンではなかった。


__歪んだ青鬼。


青黒い異形が、ゆっくりとこちらを見る。


森の空気が、変わる。


先ほどまでの、“歪まれたもの”じゃない。自ら、”歪んだ者”として。


その瞬間。


青鬼の目が、虚空に変わる。


――再び。


戦闘が、始まる。


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