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第2話-4挟撃

月一ペースで更新いていきたいです。

「馬鹿が死ぬのはお前だ!!!」


空気を振るわすほどの声。

細身の体から信じがたいほどの怒号に思わず耳を塞ぐ。男の体から紫色をしたオーラがヤカンが沸騰した水蒸気を思わせる程のいきよいで溢れだしていく。

何なんだコイツは。コイツにこれほどの力はなかったはずーーいや、そうか。このオーラはコイツの体から溢れているんじゃない。


「あの本か!!」


男が胸に抱き抱えている本。

その本から禍々しいくも膨大なオーラが溢れだしている。男は醜悪に顔を歪め、無数の魔法陣を指先に展開されていく。魔法陣は瞬く間に完成し、中心から小型の何かを排出、俺に突き進んでくる。


「嘗めるな!数が多いだけで俺を殺れるとでも思っているのか。」


速度自体はそこそこあるが、所詮は直線的な攻撃に過ぎない。おそらくはオーラを凝縮して球体を造り、放出しただけだと推測。

こんな雑な攻撃など回避するまでもない。

俺は群を成して飛来する何かを、拳の連打で迎撃する。拳が飛翔物に直撃しようとした瞬間、


「避けっ!!」


回避する。

点の軌道で撃ち抜く拳の連打を、回避していく何か。無論、すべての拳が回避されたわけではい。

直撃して粉々になる数の方が多いが、それでも数匹が抜ける。


「チッ!!」


咄嗟に顔を右にずらす。

致命傷になりうる頭部はギリギリで避けるが、避けきれず頬が切れる。俺を通り過ぎ、ローブ男の元に帰ろうとする何かに、追撃の為拳を握る。が、微かに感じる体の痛みに中断。

見ると右肩、左腹が浅く斬られ血が滲んでいる。


「成る程成る程、大したもんだな。『デウス・エクス・マキナ』を動かしてなかったとしても、拳を避け、俺にダメージを与えるなんてな。」


頬にできた傷を手の甲で擦る。

傷自体は軽少だな。そんなに深く切れもいない。

他の傷も数秒もあれば完治できる。心配するまでもないが。


「リア、聞こえるか?聞こえるなら返事をくれ。聞きたいことがある。」


相手に聞こえないように小声でリアを呼ぶ。

情報がほしいできるだけ正確な。コイツを追いかけてきたリア達なら何か知っている筈だ。

祈りが通じたのか間をおかず。


『はいはい、聞こえているですよ陸斗。何か用事があるですか?』


返事がすぐにかえってくる。


「すまないが敵の特技、っていうか能力を改めて確信したいのと、あの蟲の戦闘力もついでに。」


『あの蟲ですか?』


最小サイズのディスプレイ開いたリアは、ローブ男の周囲の空を高速でに翔び回る蟲を観察。

俺も改めて観察する。日本の何処でも生息し、子供から大人まで誰でも知っている。

その蟲はーーー


オオクワガタである。


いや、正確にはクワガタと似た蟲だ。

サイズはこの世界のクワガタとそこまで変わらない。だいたい三~五センチ程の大きさ。

甲殻は黒一色で目立たない色だが、紫色をした目玉だけは気持ち悪い程に輝いている。

こんな蟲が只の昆虫とは到底思えない。


「で、何か情報はある?」


『yes。私に知らない事はありませんからです。』


「そいつは心強いね。」


飛び交う蟲を警戒しながら、俺はリアの言葉の一言も逃さないよう集中する。


『まず名前からです。陸斗の前を飛び交っているのは、この世界に近い世界に生息する「斬鉄蟲」と呼ばれている蟲なのです。』


「『斬鉄蟲』って、なんでそんな痛い名前なんだ?」


『知らないです。名前をつけた人にいってほしいです。』


プイっとそっぽを向くリア。知らないことあんじゃん、とツッコミたいが我慢だ。我慢。機嫌を損ねるわけにはいかない。

俺はどうぞとリアに先を促す。


『外郭は黒一色で紫色をした眼球です。特徴は『切れ味』なのです。先端にある双刃は鋼鉄も簡単に切断すると聞いたことがあるです。それと、不規則な行動もできると書いてあったのでこれにも注意が必要です。』


「なるほどね。」


リアの言葉に一応頷く。

この子はいちいち『聞いた』やら『書いてあった』など、人の心に不安を煽る言い方をするのか。気にしたら敗けだ無視しよう。

俺はディスプレイから、敵に目線を戻しリアの情報通りなのか確かめる。


『どうですどうです?あっているですか。』


「今確かめている。」


黒い外郭にガチガチと不気味な双刃の角を揺らし、ローブ男と俺を遮る形で飛翔している。先ほどのリアの情報と一致する外形と刃。

間違いはないな。そう思いたい。


『ちなみに危険度のランクは準B級ランク。普通はー匹でも重火器で完全武装した兵士十人は必要なレベルです。』


「なんだそんなもんなのか?わざわざ警戒するまでもないレベルじゃん。」


『ほえっ?』


拍子抜けだ。もっと強いと思っていたんだがな。

耳障りな音が聞こえる。

俺はローブ男の手元をみる。ローブ男の両手、指先に先ほどと同じような魔法陣が展開され、次々に蟲どもが出てくる。


「次から次へと、鬱陶しい。」


全長十メートルは有ろうワームの蟲。

異形な形をしたバッタに蜘蛛。

さらには蜂やら蚊、蟻、カマキリ等々。

蟲どものお祭り騒ぎである。

隙間のもないほどうごめきあう蟲ども。喧しいことこの上無い。


『どれも準B級クラスの危険生物です。気をつけるですよ陸斗。』


「この程度の敵に気をつけるまでもねーよ。」


『それにしても気持ち悪い光景です。さっさとぶっ飛ばしてくれなのです。』


「はいはい。言われるまでもなく倒してやるよ。気にくわない目で俺を見てやがるしな。」


『目ですか?』


奴等の目は俺を敵だと認識していない。

ただ俺は人間という獲物で。殺したあとどうやって食べようかぐらいしか思っていない。

気に入らない目付きだ。


「『デウス・エクス・マキナ』起動。」


鉄も簡単に切断してしまいそうな刃、硬そう甲殻。小さくて素早い回避性能。

関係ない。俺の武装の攻撃力と速力なら紙屑、木偶同然。

肘の部分からライトグリーンの粒子が放出され、拳に纏い構えをとる。脚に力を溜め。今まさに攻撃しようとしたその時ーーー


「ハハハハハハハーーーーーーーーー!」


ローブ男はいきよいよく立ち上がり、俺に指差す。


「どうしたんだいさっきまでの威勢は!!もしかしてびびっちゃった?この蟲に。」


男の周囲を飛び交う蟲を撫でる。絶対に負けない。

自身の勝ちを確信している顔。

醜悪な面構えと勝ち誇っている顔が混じり、三倍はムカつく。今すぐ泣き顔にしてえ。


「でも仕方ないだろうね。君が誰かは知らないけど、この蟲は斬鉄蟲といってね。名前通り鉄をも切断して刃を持ち合わせている。速度も速いし、縦横無尽にも動ける。攻撃を当てるのは困難だよ。」


なるほどね。

一応リアの情報はあっていたわけか。


「爪切り要らずで羨ましいよ。自身で切らなくても、その蟲が自発的に綺麗に爪をカットしてくれるんだろ?」


「君の爪も切ってカットしてあげようか?まあ、ミスで指も切断して、五本の指が無くなってしまうかもしれないがね。」


「要らねーよ。キング・オブ・ブキヨウなあんたと違って、生憎俺はそこまで不器用ではなくてね。爪切りぐらい自分でできるし、妹にも頼めばいいだけだしね。」


俺の言い分を僅かに「妹って、これだから餓鬼は」と失笑して返す男。

外形は笑っているが、内心は怒り狂っていることが見てとれる。当然だろう。

典型的な小物だな。圧倒的に有利な状況に酔っている。自身が負けないと思えない。思わない。

だから、ビビらない俺が気にくわない。

それでいてわざわざ言わなくてもいい情報を漏らしてしまう。いわゆるアホな子だ。


「虚勢を張るなよ。怖いんだろ。怖くて泣きそうなんだろう。まあ、君の気持ちは理解できるよ。」


「理解?俺の気持ちがわかるって言いたいのかあんたは。」


「当たり前だよ。違う世界では準B級の危険生物が目の前にいるんだ恐怖のあまり現実逃避。でもそんな君を僕は責めない。何故ならばそれは当然であり、生物としての本能だからね!!」


「…………….…………」


ビシッとキモいボーズ決めるローブ男。

俺は愕然としたまま動けず、凄すぎる俺の豹変フリに開いた口が塞がらない。何なんだコイツは、さっきまでとキャラが全然違うぞ。


『キモいです。気持ち悪すぎですこの人は。』


リアに同感だな。

どう反応したらいいのか一番困るタイプだ。

相手にするのも疲れるし。とっとと終わらせるか。


「許しをこうといい!!自分が気まぐれで命令すれば、貴様なぞほんの数秒でミンチに換わるんだーーー」


俺は『瞬卦』で一瞬で男の懐に移動する。

目を見開く男。当たり前だよな、コイツから見れば敵の姿が消えた思ったら、自分の懐にいるんだか。

空手でいう正拳をローブ男の腹部に叩き込む。

ドゴン!!!

ローブ男の腹に莫大な衝撃が突き抜ける。


「まだだぜ!!」


肘の部分にある撃鉄が打ちならす。

ライトグリーンの粒子がとんでもない勢いで放出され、ダメージ量を引き上げる!!

ローブ男の足が地面を離れ、体が宙に浮く。

そのまますさまじい勢いのまま遥か後方まで吹き飛んでいく。並び立つビルの外部の壁に突き刺さり、壊す。室内の壁をも破壊して外に出ては、次のビルに飛んでいく。

何度も何度もビルを突き抜け、ようやく手足が地面に擦り停止する。


「ーーーーーーーーーッ!!!!!!!!」


声に鳴らない悲鳴をあげる男。

体をダンゴムシのように丸め腹部を両手で押さえながら、足をばたばたと動かしている。


「死んでいないのか?手加減したとはいえ手応えあったんだがな。」


『本が守ったんだと思うです。』


「本が?」


『yes陸斗。陸斗が殴って箇所にシールドが展開されていたです。本人の防衛本能に反応したとは思われるですよ。』


「なるほどね。」


腕を回しながら吹き飛んだ位置まで歩きだす。

言われて見ればリアの言った通り妙な感じの感触があった。あの感触がシールドで間違いないだろう。

宿主の危機に蟲達も遅いながらも気づき、全方位から襲いかかってくる。

これだけの危険生物に襲われれば、人間なんて一瞬で挽き肉になってしまう。


『陸斗!!危なーーー』


「寄るな雑魚ども。」


俺は蟲ども一瞥すると、球体状に張っていた探査領域五十メートルを三メートルに範囲を狭める。

これにより領域内に侵入した物質をより正確に、より敏感に感じとることが可能になる。

ゆえに領域内に侵入した順番に蟲を叩き落とす。


『凄いです。凄すぎですよ陸斗。』


リアは眼に映る光景に心を奪われる。

とても信じがたい。準B級クラスの蟲が全てが陸斗の拳と蹴りで打ち砕き、踏み潰し、突き破られている。

軽い破砕音が数秒続き。


「終わったかな。」


手を払いながら俺は周囲に蟲がいないか確かめる。一面にゴミが積もっている。

数秒前までは蟲だった者の残骸が散らばっているだけだ。

念のため探査領域を半径五十メートルまで拡張する。五十メートル以内に残敵はない。

一番近い蟲でも百メートル以上の距離がある。速くて十秒以上は時間がかかる筈だ。


「そんな時間はかからんでしょ。あの転がった野郎ー匹と本を捕まえるだけだ。」


『ですです。お願いするですよ。』


『瞬掛』でローブ男に近づくと、側に落ちてる本に手を伸ばす。後少しで本に触れる直前、動きを止める。


「なあリア、いまさら聞くけど俺が触れても大丈夫なんだろうな?嫌だぞ、契約者以外が触れたら手が溶けるとか。」


『陸斗は漫画の見すぎです。いくらなんでもそんな事はおきないですよ。』


「だよな。いくらなんでもそんな事おきるはずないよな。」


はははと笑いあう。

笑いながら本に触れる。


『…………….………………良かったです。ホントになにもなくて。』


「おい!!!!」


何を小声で言ってんだお前は!

安全を知っていて言ったんじゃないのかよ!!


『いいじゃないですか陸斗。なにも起こらなかったんですから。』


「いやいやいや、おこらなきゃいいってもんじゃねーから!!おこってからじゃ遅いから。」


『結果よければ全てよしです。陸斗、男の方もいいですか?』


ーったく勝手な奴だな、と思いながらも本を左脇に挟み、痛み余り気絶した男の襟首を掴む。


「これでどうするんだ?コルナが到着するのを待てばいいのか。」


『です。コルナに渡して終了です。後二分程で到着すると思われます。』


「二分ならこちらから移動した方が早いだろ。位置を教えてくれ。」


『せっかちですね陸斗は。ではでは場所を言うですよ。』


リアにコルナの位置を聞く。

聞いた通りさほど遠くない場所にいる。

本はともかく男は若干邪魔だがしょうがない、引きずつて行こう。

それに、本の所有者が気絶したせいか周囲をあれだけ飛び交っていた蟲どもはー匹もいなくなっているし。楽に合流できそうだ。


「よし行くか。」


合流場所に向かって歩きだす。

ズボッ。

スボッ?一歩めから伝わってくる嫌な感触。

底なし沼でも足を踏み込んだような感覚が足から伝わってくる。なんだと思い地面に眼を向けると。


「おいおいマジかよ。」


眼に映ったのは見慣れた灰色ではなく黒色。

さっきまで自身が踏みしめていたコンクリートはキレイさっぱり無くなり。いつの間にか俺の周囲一面全てが黒い塊に変わっていた。しかも、


「どうなっていやがるんだ!足が抜けねーーーっ!!!」


どんなに力を溜めても足が抜けない。

それどころかまったく動かない。むしろ力を入れれば入れるほど、体が黒い塊の中に沈没していく。






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