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第2話-3挟撃

世界が魔法陣に包まれ凍結する。

まるで時間が停止したかと思わせる世界。


「これはリアの術式か?早いなもう発動したのか。」


ありがたい。と

感謝の言葉をもらす。

実際にこの援護がなければ、陸斗は戦闘能力の五分の一も本気になれない。本気を出すと被害総額が洒落にならない。具体的に言えば零が数えきれないほどある。

そんな事態にならないリアの結界は本当にありがたい術式である。


「それにしても、けったいな世界になるな実際。」


前の戦闘では気がつかなかったが、空が青から紫色に変色している。いや、空だけではない。

毎日見ている筈の太陽が、黄色から緑色に変わっているし。

まあ正確に言えば太陽は黄色ではないが

、それでも緑色の太陽は変だと思し違和感は拭えない。それ以外に変化はとくにない。

運転主のいない車に、灯りのない家。

人がまったくいなくなった街並み、ゴーストタウンと化した街が眼前に拡がっているだけだ。


「慣れればどうってことなくなるのかな?まあ、慣れたくはないが。…….……おっと。」


目標地点に到着。

一旦移動するのを止めて、ビルの屋上に降り立つ。

ビルの縁フェンス越しの眼下を見ると、ー匹の蟲が民家を壊している様子が伺える。すげえ必至だ。

相当空腹で餌を探しているのか、たた単純に物を壊したいのか。

小さな蟲はひたすらに周囲をの建物を壊している。


「…………….前の奴に比べるとすいぶん小柄だな。子供か?」


見えている蟲のサイズは、大分スモールサイズだ。

つい先ほど戦った蟲の半分もない。高さは二メートルほど、全長は六メートルぐらいの大きさだ

このサイズなら、戦闘能力も大幅に低下している事は明白だ。


「楽勝だな。これならそこまで急ぐまでもなかったかもな。」


両拳を打合せる。

装着された装甲から金属音が伝わる。

ビルのフェンスを外し後ろに放り投げる。

落下しようと足をビルの外側に踏み込もうとした陸斗の耳に、別の崩落音が響く。


「まさか…………」


いや~な予感を感じながらも陸斗は反対側に振り向く。

目に映るのは、眼下にいた蟲とは違う形をした蟲。

こちらの蟲はゴキブリのような形に黒い光沢を放ち黒々と光る姿は不気味である。

サイズ自体は全然大きくはなく、あって二メートル前後ほどだろう。

こちらの個体の戦闘能力はたいしたことはないと断言できる。

だが、問題なのはそこではないんだが。


「冗談ですまない数だろ。これは、」


二十匹、三十匹ではきかない。

ざっと数えても数百匹単位はいるだろう蟲の大群。

見渡す限り、蟲、蟲、蟲、蟲である。これだけいると、流石に気持ち悪い光景だ。


「これ全部ヤるのはいくらなんでも時間がかかり過ぎるぞ。」


どうするか悩む陸斗の耳に、


『全部倒す必要はないですよーーーりーーーくと!』


「どわっ!!」


ディスプレイが顕れ能天気な声が伝わる。


『ビックリした?ねぇねぇビックリした?』


「ビックリするは!!!唐突に顕れるんじゃねえ心臓に悪い。」


『ゴメンゴメン。』


映しだされたリアを叱る陸斗。

反面、疑問点が浮かぶ。


『簡単だよ陸斗。陸斗が私を抱きかかえて移動してる間、私陸斗の首もとに頭を押しつけていたでしょ。その時に通信用の術式『永続的な言葉』を接続しておいたんだから。』


「ありがた迷惑なことをしてくれたなお前は。それと考えを読む悩む。怖いだろうが。」


にゃはははと笑って誤魔化すリア。

クソッ!!なんて可愛く笑うんだよコイツ。こんな顔されたら、怒るに怒れないだろうが!!

今まで、身内の妹の笑顔が最強だと思っていた。

しかし、彼女リアの笑顔は妹に勝るとも劣らないほどの笑顔の持ち主だ。

長年、研究し続けた俺が言うのだから間違いない!!!


『どうしたの陸斗?』


「な、な、何でもない。気にするな。」


「ん~~~~。」


人指し指を頬に当てて悩むリアは、まさに女神。

仕草がドストライク。あ危うく心をもっていかれるところだったぜ。


「ーで、全部倒す必要がないって言うのは何でさ?」


『はい、それはですね。無駄だからです。』


「無駄?」


リアは画面越しに蟲の群れを指さし。


『うん。ここにいる個体は死んでも使役者に魔力に返還され、何度でも同じ蟲を再度でも召喚可能だから。』


「…….……ゲームですいうと、召喚してもMPが減らず。ずっとエンドレスで召喚できるってことか?」


『ひらたく言えばそんな感じです。』


「なるほどね。」


そんな感じになっているなら、どれだけ倒しても無駄だろう。倒して倒しても敵の数が減らないなら、こちらの体力が低下する一方だ。徐々に一撃では倒せなくなり、一撃の奴に二撃。二撃の奴に三撃ほしくなり。

結果、倒せなくなった大量の蟲囲まれ、無惨に喰い殺されるだけだ。嫌だ嫌だ、俺は幼女の胸に抱かれて死ぬって決めているんだ。


「なら、この蟲どもの親玉を探し出して絞めるしかないな。」


『イエス。その通りです陸斗。』


ころころと笑うリア。

笑顔の眩しい彼女から目を反らして眼を閉じ、集中する。


「フィールドリーディング」


一瞬にして、半球状の閃光が拡がる。

探知感覚を大体七百メートルに拡げた陸斗は使役者を探す。

蟲とは反応が違う奴が使役者だ。

人間がいなくなったこの街で動いているものは蟲と違う奴。それを探す。


『どう、いた?』


「………………………ああ、いたな。でも、」


『どうかした陸斗?』


「今の俺の探査領域に敏感に反応した奴が二人いるんだ。北と東に。」


一人はこの位置からさらに北に三百メートルほど離れた場所。恐らくはビルの二階にいた人物、コイツは逃げはじねている。

もう一人は東の方角からこちらに向かって来ている人物。かなりの速度だ。

さっきまで七百メートル付近にいたのに、数秒で三百メートル付近にいる。

どちらだ?


『東の方角にいるにはコルナだよ。陸斗が行ってから、直ぐにコルナも向かったから。挟みうちにしましょうって。』


「そうか、それなら提案に従って誘導して挟みうちにして逃げばをなくすか。なら俺は北から行って西に追い込む!!」


再び『瞬卦』を使い高速で空を駆ける。

敵も追跡に気づいたのか必至に逃げ始めた。明らかに先ほどより逃げる速度が上がっている。がハッキリ言って遅い。

ビルとビルの間、細い道を走っているのか、やたら曲がるは、何かにつまづいているのか速度が安定しない。土地勘がない人間だな、先回りも簡単だ。


「リア、この回線ってコルナにも繋がっているのか?」


『イエス。繋がっているですよ。繋ぎます?』


「繋いでくれ。」


『わかりました。ではーーー。』


術文を唱えるリア

話していたリアのディスプレイの隣にもう一つのディスプレイが展開され、コルナの姿が映し出される。

右手には銀色の槍を構えている姿でだ。やっぱりこの人だったんだな~~と納得納得。


『どうかしましたか?何か不具合でもありましたか。』


「いや、連絡しあったほうが連携が上手くいくと思ってね。リアに頼んでやってもらっただけ。」


『そうですか。これ以上逃がす訳にもいきませんし。』


『ですです。』


これ以上ね。

この二人、何度か同じ敵と遭遇して逃げられた経験があるってことか。

なら、多少コルナが熱くなるのも無理ないか。責任感強そうだし、リアはあんまり気にしていないなアホだからか?まあいいや。


「リアには言ったが俺は北から追跡して、西に追い込みむ。コルナはそのまま東から追い込んでくれ。」


『了解しました。よろしくお願いします。』


通信を切ろうとするコルナに陸斗。


「無理はするなよ。」


『えっ?』


ビックリした顔をするコルナ。

おいおい間抜けな顔をするなって、せっかくの綺麗な顔が台無しだぞ。俺は別にかまわないけど。  

  

「お前、結構焦っているように感じる。人間そんな時は決まって無茶なことをやってミスをしちまうもんだ。だから焦るな、冷静でいけ。」


『……………………』


無言。

まあ、俺の言い分に納得は出来ない気持ちは十分に理解できる。今まで追跡して来た敵を会って間もない人間が、自分の変わるに捕まえると言っているのだ。悔しい筈がない。それでも、


「いいか、敵は俺が捕まえる。コルナは追い込むだけでいい、わかったか?」


『………………はい。』


『というか、何で陸斗が仕切っているんです?ここは司令塔としての私が仕切ります。』


「アホぬかせ。お前に指揮官能力はない!!」


断言する。

こんなアホな子に指揮を任せたら、勝てる試合も勝てなくなる。寝言は寝てから。当たり前だ。


「よし二人とも、もういいな?通信を切るぞ?」


『はい。』


『待つです陸斗!!私はまだーー』


リアが言いきるよる早く通信を切断する。

何時までもアホな子の言葉を聞いてやるほど俺も暇ではない。俺は敵の現在地を確認する為、再度探索領域を展開。

よし、確認完了。

敵はいまだに北に逃走中、速度も変わっていない。


「腕のみせどころだな。」


まるで鬼ごっこをしているかのような感覚。

だんだんと追いかけることが面白いと感じる自分がいる事に驚きながらも、俺は空を駆けた。




「よし、この辺でいいだろ。」


ビルとビルの間、細く狭い道。

敵は俺の思惑通りに走ってくれた。陸斗は逃げる敵の逃走経路を予測しては、プレッシャーを放ち逃げ場を誘導した。鬼ごっこも、もういいだろう。


「それにしても………….」


走っている敵を見る。

茶色のフードを頭から被った人物、体格からおそらく男だと判断できる。手には厚い本、辞典かと思わせる物を開いている。

コイツが本当に敵の親玉か?すげえ弱そうだぞ。疑問は浮かぶが、本人に確かめたほうが早いか。


「これ以上行かせねえよっと。」


空中の僅かなチリを足場に、空を跳躍。

敵の眼前に降り立つ。


「!!??!!!」


「よお。ここからは通行止めだ。」


驚く男。陸斗は敵を監察する。

やはり男性だ。四肢の手足は細く、痩せている。

おそらく体重は五十キロもないだろう。

服装はローブを被ったいるが、ローブの下はかなりおかしい格好だ。というより、リア達に近い服装。黒い鎧に貴族の服装を足して感じの服装だ。

この世界の人間ではない、リア達的に言うなら異世界人か。


「本当にたいして強くはなさそうだな。筋肉も全然ないし。対応の仕方も素人同然だ。」


「!!なんなんだよお前は。何で僕を追いかけてくるんだよ!!」


「解りきっていることをわざわざ聞くんじゃねーよ。それよりーーー」


手を前にだす。


「その本を寄越せ。寄越せば気を失わせるだけで済ませてやる。抵抗するなら手足をへし折り、奪わせて貰う。」


「???!!!!」


両手で本を抱え込み、拒否の姿勢を示す男性。

まあ、ハイそうですかって素直に渡す奴はいないわな。そんな奴なら逃げたりなんてしないし。

ハア~~とタメ息をつきながらもう一度警告する。


「もう一度だけ警告する。抵抗は無駄だ。おとなしく本をこちらに寄越せ。」


「…….…………….…………………」


「仕方がないな。恨むなよ。」


ゆっくりとローブ男に向かって歩きだす。

俺とローブ男の距離は約五メートル。子供でも二、三秒で到達できる距離。

両碗の装甲に力を込めるとライトグリーンの閃光が辺りを照らす。恐怖に怯え、しりもちをつく男、逃げまとう姿は余りにも憐れーーー。

いや、この男怯えてなんていない、むしろ笑ってーーー!!


「馬鹿が死ぬのはお前だ糞餓鬼が!!!」












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