35."アレ"
今話から本編に戻ります。
「いや〜最近は平和でいいなぁ〜!」
のんびりと通学路を歩きながら、私は感動の言葉を口にする。
今は十月下旬。転校してきてから一月が経ったことになる。
(一月…え?まだ一月!?うそでしょ!?)
体感半年は超えてるよ?
(いや…それもそうか)
私は転校してきてから起きたことを思い返す。
(え〜っと…まずは日陰と仲良くなって、神羅に絡まれて…それから体育祭であれやこれやがあって、何か生徒会に誘われて…生徒会研修とかをやることになって、なんだかんだで生徒会の一員としてやっていくことになったんだよね)
いや出来事の密度おかしいでしょ…しかも最初は普通だったのに体育祭あたりからどんどんやばくなってるし…。
でもまぁ、ようやく最近落ち着いてきたところだ。しばらくはゆっくりできるといいなぁ…。
などと考えていると、太陽みたいに明るい声が聞こえた。
「歩友ちゃん!おはよ〜っ!!」
「日陰、おはよう。すっごいハイテンションだね…珍しい」
日陰は明るく振る舞うものの、普段は割と落ち着いた話し方をするのだが。
「そうかな!でも朝からテンションアガっちゃうのもしょうがないよ〜!だって今日からついに"アレ"の準備が始まるわけだしね!生徒会の歩友ちゃんも大忙しなんじゃない?」
「アレ?」
全く心当たりがないけど…?生徒会からも何も聞いてないし。
その答えは、別の人から案外早くもたらされた。
「日陰がいう"アレ"とは文化祭のことだろう。俺たちが通っているここ、倉軽高校のな」
「ちょ…ッと待って?神羅、今なんて言った??」
「え?倉軽高校の…」
「その前!」
「俺たちが通っている…」
「もっと前だってば!!」
「"アレ"とは文化祭のこと…」
「き、聞き間違いじゃなかった…」
「どうしたんだ、揣摩。そんなに慌てふためいて」
「その反応…もしかして歩友ちゃん、知らなかったの?…文化祭のこと」
神羅と日陰の両方から驚いたような表情を向けられる。
私は気まずくなって、思わず言い訳を口にした。
「だ、だって…つい先月体育祭があったばかりじゃん!もう文化祭とか予想つかないって!」
「あぁ〜…歩友ちゃんは生徒会関連とか色々あったもんね…だから知らなくても無理ないよ」
「そうは言っても年間スケジュールが載った紙を最初に配布されているだろう。紙を見ていなかったのか?」
「え?何それ知らない」
年間スケジュール…?初めて聞いたけど。
そんなものが存在していたことを今初めて知った。
「私たちは入学式の日に担任の早見先生から貰ったとおもうけど…?もしかして、早見先生…」
「いつもの超効率重視からくる必要最低限のことしかしたがらないのが発動したか…災難だったな、揣摩。いや、これからか」
「不吉なこと言うのやめて!?」
「でも早見先生はともかく、生徒会で文化祭が話題に上がらなかったの?広報の茉莉花先輩とか、副会長の菫先輩とか…大きな行事だし、絶対忙しくなるのを見越していろいろ話し合ってそうなのに」
「あ〜、最近は庶務の蛍先輩の手伝いがほとんどだったからなぁ…。蛍先輩普段はよく喋るのに仕事となると一気に集中モード入るから…」
「それで歩友ちゃん文化祭のこと知らなかったんだ…」
「ぶ、文化祭…日陰、一応聞くけどもしかしなくても生徒会って運営側だよね?」
「そうだね。多分広報の茉莉花先輩がトップとして表に立つことになるんじゃないかなぁ。あと体育祭の時みたいに実行委員を募ると思うよ!」
「なるほど…。実行委員がいるならまぁ……いや、余程凄い人が来ないと何とかならないだろうなぁ…」
グラウンドしか使わない体育祭の時でさえ私の生徒会入りを後回しにするほど忙しそうだったのに…文化祭となれば起こるトラブルの種類や量、それ以前に仕事量が桁違いだろう。それに会長が会長だしなぁ…。
どうなるかなんて…考えたくもない。
「歩友ちゃん顔が真っ青だけど、大丈夫…?」
「ぜんっぜん大丈夫じゃない、超やばいよ!!」
このままだと大量の仕事に押しつぶされる未来が見える。…物理的に。
「そう取り乱していてもどうせ文化祭は来るぞ?揣摩」
「神羅…現実突きつけてこないでよ!鬼なの!?」
「鬼じゃない。むしろ神だ」
「え?何で?」
「文化祭には実行委員があるってさっき話したでしょ?人数制限とかも特にないらしいし、私と玲君で立候補しようかな〜って話してたんだよ」
「日陰の人脈、コミュニケーション力に俺の頭脳。それらをフルで使って俺たちが協力すればかなり仕事は減らせるんじゃないか?」
「か、神…!」
二人が協力してくれるなんて!これ以上ないレベルで心強すぎる助っ人だ。
「だから鬼じゃなくて神だって言っただろ?」
神羅がニッと口の端を持ち上げて笑って見せる。日陰と同様に珍しい様子だ。学年一クールと呼ばれる神羅でも文化祭がなんだかんだ言って楽しみらしい。
「玲君、話の段階を飛ばしすぎなんだよ…急に鬼じゃなくて神だ〜って言い出しても歩友ちゃんがびっくりしちゃうって」
「確かにそれもびっくりしたけど!二人がそんなに文化祭に乗り気だなんて驚いたよ。神羅はそう言うの苦手そうだと思ってたし」
「まぁ、そうだな。騒がしいのはあまり好きじゃない」
「じゃあ何で…?」
すると日陰が学校の校門の方を手で指し示しながら言った。
「それはきっと、今からわかるんじゃない?」
久々の主人公、歩友視点のお話でした。
これからまたしばらく歩友視点でお話が続いていきます。
やっぱり歩友・日陰・玲の三人組が書いていて主人公組って感じがしますね。落ち着きます。
「文化祭編」が一体どうなっていくのか、ぜひみなさんの目で見届けてください^ ^




