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裏切り少女の選択

私はリズちゃん達と戦う事を選んだ。

勇者様を裏切った、魔王の娘として。

…いや、違うよ…それは違う。私はエビルニアとしてじゃない。

私は、エリエル・ガーデンとして…リズちゃん達と戦うんだ。


「全くちょっと粘ってくれたわね。さっさと合流しなさいよ」

「ごめんなさい、リトさん…」

「いや、謝ることじゃないわ」

「リズちゃん、ごめんね…私なんかの為に」

「エルちゃんの為に怪我をするのは当然だよ!

 エルちゃんだって私の為に怪我をしたこともあるんだ。

 大事な人の為に命を賭けるなんて当然だし

 怪我をするのはもっと当たり前! 私が選んだんだから!」


リズちゃんの怪我はかなり酷い。それなのに彼女は気丈に振る舞う。

本当に強いよ、リズちゃんは…やっぱりリズちゃんは…勇者かも知れない。

この時代の勇者…200年前と同じ、優しすぎる勇者。


「はぁ、しかしエルさんが魔王の娘エビルニアと言うのは予想外でしたね。

 まぁ強いとは思ってましたがね」

「黙っててごめんなさい…」

「いやまぁ、それよりもですね。この状況はさてはてどうしましょうか。

 ドラゴンってだけでもヤバいのに、目の前の奴は最強のドラゴン。

 と言っても、エルさんが合流しましたし、不思議と勝てる気がしますが」

「小娘1人が合流したところで何になる! 雑魚が増えようとも無意味だ!」

「雑魚じゃ無いさ、今に分かるぞ」


ジーラスの腕は今、両腕とも使える状況じゃ無い。

片腕はブレイズお姉様に破壊されたし、

もう片方もさっきリズちゃんに破壊された。

それでも、相手はドラゴン。攻撃手段はいくつもある。


「ふん、燃え尽きるがいい!」

「火を吐くつもりです!」

「分かったわ! エルちゃん!」

「はい!」


私はリトさんの手に触れて、彼女を転移させた。


「さぁ、その無駄にでかい口! 塞ぎなさい!」

「何!? テレポートだと!? むぐ!」


ジーラスの顔近くまで転移したリトさんは斧を振りかぶり

ジーラスに力強く斧を振り下ろした。

唐突な攻撃で驚いたジーラスはその一撃で口を塞がれ

炎が体内で暴発することになった。


「ぐぐぐ!」

「中途半端な攻撃はドラゴンには効かないけど

 十分な魔力を込めた一撃なら! 十分な打撃!」


私はすぐに大量の魔力を投入してマジックアローを放った。


「ぐが!」


私の攻撃はジーラスが弾ける魔力量を十分超えていたようで

マジックアローはジーラスの胸を貫き、大きな穴を開けた。


「が、がぁ…馬鹿な…」

「さぁ、頭を垂れなさい!」


私の攻撃で大きく怯んだジーラスをリトさんの斧が襲った。

その衝撃は十分であり、ジーラスは地面に頭を叩き付けられる。


「ぐがぁ…あ、あぁ…」

「後は首を落とせばそれでお終いかしらね。

 逃げるというなら私達は追わないわよ」

「くく、強い…実に強い…ブレイズが必死に取り戻そうとするのも頷ける。

 なる程、彼女がエビルニアか…200年前とは比べものにならない」

「私は弱い…から…」

「ふ、ふふ、そうか、自覚が無いのか…

 ふ、貴様は200年前よりも強くなっている。

 お前はどうやら、魔物として生まれるべきでは無かったようだな」

「……どう言う」

「さぁ、殺せ。私はドラゴンの長として情け無い姿など見せない。

 貴様らに敗北し、大人しく背を見せ逃げるなんて真似は決してしない!

 さぁ、その斧を振り降ろし、私の首を両断せよ!」

「…死ぬわよ? 言うまでも無く」

「あぁ、殺せ。私は貴様らに背を見せたりはしないぞ!

 お前達がこの場を去ろうとすれば、必ず復讐しに行く!

 貴様らが過ごす国を焼き払い、お前達をあぶり出すだろう!

 さぁ、殺せ! 我が首を落とせ! 名誉と共にな!」

「……そう、大した物ね、死ぬ事を望むだなんて」


ジーラスの言葉を聞いたリトさんがゆっくりと斧を振り上げた。


「リト姉ちゃん、こ、殺すのは!」

「ここで生かす方が侮辱になるわ、彼の誇りを侮辱する」

「ふ、感謝するぞ…人間、ここまで簡単に敗北したんだ。

 生きていた方が、生き恥を晒すことになるからな。

 例え負けても、プライドだけは捨てたくは無いのだ」

「…そうね、最後くらい格好付けて死にたいわよね。

 さようなら、ジーラス」


リトさんの斧が振り下ろされ、ジーラスの首を切断した。

ジーラスは小さな悲鳴を僅かに上げ、絶命することになった。


「……さぁ、後はあなただけになるわね、ブレイズ…」

「……やっぱりエビルニアは強いわね、容易にジーラスを退けるなんて。

 あなたは確実に魔王の娘として生きていたときよりも強くなっている。

 やはりあなたは、人として生まれるべきだったのかも知れないわね」

「どう言うこと? ブレイズお姉様」

「あなたは人とお父様のハーフよ、あなたが本来持つべき能力は

 間違いなく成長の能力だったはず。でもね、あなたは魔物だった。

 魔物に成長は無い、魔王の娘だったとしても一定以上の成長はあり得ない。


 例え成長に関する能力だったとしても、成長することは出来なかった。

 あなたが成長するには勇者の仲間になる位しか無かったと言う事よ」

「成長することが無い? そんなはず」

「あなたは人になって強くなった。魔王の娘としての特性を持ったまま

 あなたは人に転生して、強くなった…本当に都合が良いくらいにね。

 まるで誰かが裏で糸を引いてるかのように…いや、引いてるんでしょうね。


 本来死ぬ筈の無いあなたが死に、人として過去の記憶を持ったまま蘇る。

 神という存在が介入したとしか思えないわね」


私が転生したのは女神様が理由だった…そこまで想像だけで…

やっぱりブレイズお姉様は…何だって分かる、そんな人だ。


「でも、世界はどうも勇者に残酷なのよ…あなたの母だって勇者なのだから」

「な…どう言うこと!?」

「あなたを生んだ人の母親が勇者だったのよ。

 人々を裏切った王国、その中に不運にも生まれてしまった勇者。

 その勇者は家族や友人達に裏切られ、お父様に捧げられた。

 そして、あなたを産み落とし、その儚い生を終えた」

「……え、エビルニアの母親が勇者…裏切った国…?」

「あなた達が知らない真実は沢山あるのよ、人間の諸君?

 人は善意だけじゃない、むしろ人は悪意しか無いのよ。

 その悪意に晒されながら、生まれた奇跡の聖者は

 その悪意に飲まれ、命を奪われる。


 勇者の末路がそれを告げている。

 リズ・ヒストリー、あなたは勇者になるでしょう。

 だけど、あなたも今までの勇者と同じ末路を辿るかもね。

 騙され、貶まれ、穢され、裏切られ…

 それでもあなたは勇者として戦う? 最悪の末路を辿るのに」

「……私が勇者になるなら、勿論戦う。

 そして、騙されることも、貶されることも無い。

 穢されることも、そして、裏切られることも無い!

 そう、断言できる。だって私は1人じゃ無いんだから!」


リズちゃんの表情に恐怖なんて物は無かった。

そんな事実を告げられたら、普通は動揺するか怯えるのに

リズちゃんは一切怯える事無く、そう断言した。


「大した自信ね…良いわ、なら挑んでみなさい。

 あなたの挑戦の先に何があるのか、興味があるわ。

 優しすぎる選択の先にあなたは何を得るのかしらね。

 憎悪か憎しみか…恐怖か絶望か、はたまた希望か」

「私が得るのは…いや、掴み取るのは希望なんだ!

 私が勇者なら、私は希望を目指して進むだけ!」

「……そう、なら進めば良い。その先を目指してね。

 それじゃあね、勇者諸君…そして、エビルニア。

 また、会いましょう…今度は必ず連れ戻すわ。

 今度が来るまでに、大事な親友を守れる様強くなることね

 優しすぎる勇者様」


そう言い残し、ブレイズお姉様は強い竜巻に包まれて姿を消した。


「…はぁ、やっぱりブレイズは相当強いわね、エルちゃんを守る為に

 最終的に闘うって考えると、正直ゾッとするわ。

 あんなの、どう攻略すれば良いのかしらね。ジーラスの腕だって

 簡単に粉砕するくらいの技を扱うだなんて…これは苦労するわよ」

「…ブレイズお姉様の技は破壊の技じゃ無いんですよ。防御です」

「防御!? あれが!?」

「相手の攻撃を完全に反射するんですよ、ブレイズお姉様は。

 正攻法じゃ勝てません」

「…こりゃぁのんびり出来ないわね…やっぱり最強クラスでしょ」

「あはは、実際ブレイズお姉様は私たちの中で最強でしたから」

「ふーん、ミルレールとかヤバそうだったけど…あぁ、これが魔王の娘か」

「とは言え、私達にもその魔王の娘の生まれ変わりが居るんだ」

「むむ! エルちゃんはエルちゃんだよ! 魔王の娘じゃないよ!」

「…そうだね、今の私は魔王の娘じゃ無い…お父さんお母さんの娘だから」


今の私のお父さんとお母さんは…もう居るんだから。

私はエビルニアだけど、エビルニアじゃない…私はエリエル・ガーデン。

……今度は裏切らない、絶対に負けないから…自分に…負けない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 勇者という概念をうまく表現されていると思います。希望の分散、希望の集約、絶望の集約。考えられているかと。 [気になる点] あとは、なぜ勇者と魔王のシステムがあるのか・・・という事の説明があ…
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