いつもの帰路
…私はリズちゃんと一緒に進むことを選んだ。
そしてリズちゃんは勇者として戦う事を選んだ。
私達と一緒なら、勇者の末路が悲惨な物だろうとも
それを書き換えて、幸せになる。そう信じてるんだ。
「うーん、本当に短い間に色々あったよ…あはは」
「私の決着が着いたと思ったら、すぐにエルちゃんだからね。
そこで最強のドラゴンとやり合って倒してって言うね。
本当、苦労ばかりよ…」
「所でリト、何故ジーラスの牙を?」
「爪もあるわよ、鱗もね。最大のドラゴンよ?
折角倒して、ただ殺すだけというわけにはいかないわ。
流石に相手が人型だったらちょっと拒むけどね」
リトさんはジーラスの牙と爪、そして鱗をいくらか持ってきている。
理由は良く分からないけど、何も考えてないわけが無い。
だって、リトさんだからね。冒険者として長いリトさんが
無意味な行動をするとは思えないし。
「まぁ、ドラゴンを倒したという証拠にはなるでしょうからね」
「証拠とか、そう言うのは割とどうでも良くてね。
これで装備を作って貰えるか聞こうかと思ってね。
牙も5本いただいたし、爪だって5枚、鱗は100枚よ」
「ず、随分と剥ぎ取ったな…」
「戦利品って奴よ。これを使って装備を作って貰って
一緒に戦えれば、凄く心強いでしょ?」
「まぁ、そうだが…しかし、重そうだな…」
「牙と爪はね。でも、鱗は結構軽いのよ? ほら、持ってみる?」
リトさんがマジックバックから鱗を1枚取りだして、ミリアさんに渡す。
「ん、確かにこれは中々…布みたいに軽いな…」
「ドラゴンだからね、体を覆う鱗が重かったら飛べないでしょ?
当然、鱗だって軽いし、同時に素晴らしく強固に出来てる。
ドラゴンの素材ほど防具や武具に最適な素材は無いわ。
勿論、加工も普通の素材よりも遙かに難易度が高いから
相当な技術が必要でしょうけど、ロッキード王国の技術ならね」
ジーラスの鱗さえ無視して攻撃出来る程の武器を作る国だからね。
ドラゴンの素材を加工する事だって絶対に出来るよね。
「ドラゴンの死体は素材の宝庫なのよ。本来であれば
ジーラスの亡骸全部を持ち帰りたいところだけど。
残念な事に運搬手段は無いからね。出来れば余すこと無く使いたいけど
彼としても、体の隅々を再利用されるのは嫌でしょうしね」
確かにいやだなぁ、仮にやられたとしても再利用は…
体の一部ならまだ分からないでも無いけど全部は嫌だなぁ…
「それに、ドラゴンは強者を認めるような性格でもあるみたいだし
自分を負かした相手に利用されるならまだしも
そうでもない奴に体の素材を利用されるのも嫌がりそうよね」
「あいつは私達の事を貶んでた様に見えたがな」
「結果として、最後は認めてくれたって感じだったじゃ無いの」
ハッキリとは言ってなかったけど、雰囲気はそんな感じだったね。
「それに、私達にはどうしても強力な武器が必要なのよ。
強力な防具だって、私達には必須よ。
だって、私達がこれから戦おうとしてるのは
魔王とその娘達…今の装備じゃ果たしてミルレールを倒せるかどうか」
「装備だけじゃ勝てませんよ…ミルレールお姉様には」
「どう言うこと?」
「私は元々は魔王の娘、エビルニア…だから、姉妹達の事は分かってます」
「そうですね、エルさんの存在は我々には非常にありがたいです」
「そうだね! エルちゃんなら倒し方分かるかも知れないし!」
確かに私は姉妹達の弱点もある程度把握してる。
でも、ブレイズお姉様の方が把握してるんだよね。
「まぁ、その話も聞きたいところだけどしばらく休みたいわ。
私はちょっと色々としんどいのよね、特にクロノスの事で」
「そうですね、しばらくの間は休みましょうか」
「えぇ、疲れてる状態じゃいまいち妙案も浮かばないし
話しもあまり頭に入ってこないからね」
そうだよね、リトさんは1週間前に自分の親友と両親の仇と同時に
その3人と覚悟を決めて別れを告げて…精神的に応えてるはず。
それなのに私の正体がエビルニアだって分かって、より動揺してる。
この1週間、リトさんにはとても辛い時間だったはずだよ。
「ごめんなさい、私が今まで」
「いや、エルちゃんがエビルニアだったって言うのは驚いたけど
それはそこまでよ、あなたの正体が何だったとしても、あなたはあなた。
まぁ1年も一緒に居る訳じゃ無いけど、不思議と信頼出来るのよ。
本当にあなた達と過ごした時間は異常な位に濃厚だったからね」
「そうですね、あはは」
私達が過ごした時間はまだ短いはずなのに、本当に濃厚な時間だった。
この短い間に、私達は魔物達の派閥達の長を倒してきた。
ユミル、クロノス、ミック、そしてジーラス。
これだけの事をしたんだ、濃厚ってレベルじゃ無いよね。
そこにミルレールお姉様との戦いもあるんだから。
「まぁしばらく休んだ方が良いですね…と言うか、休んでください」
「えぇ、そのつもりよ。今日は安心してゆっくりと眠れるわ。
まぁ、その前にロッキード王国の鍛冶屋に武具の製作を依頼しないとね」
「そうですね、じゃぁロッキード王国に戻りましょうか」
「はい!」
皆と一緒に、私はロッキード王国へ足を運んだ。
感動の再会にはなりそうに無いよね、だって1週間だけだから。
ブレイズお姉様が私の意思を尊重してくれる人じゃなかったら
…私はきっと、もうこんな会話をする事は無かったと思う。
ブレイズお姉様…本当にありがとう。




