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裏切り少女のやり直し~200年後の再挑戦  作者: オリオン
第1章、新しい再スタート
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夢に見る過去

魔王の娘として、最も実力が無かった。

生まれた直後の私は、お父様から大きな期待を持たれていたのに。

何故お父様は、私にそんなに大きな期待をしてくれたんだろう。


「どうやら、期待外れだったみたいだな、エビルニア」


生まれて少しして、大した実力が無い私を見たお父様は

ガッカリしたような表情でボロボロの私を突き放したのを覚えてる。

沢山の魔物と戦わされて、なんとか生き残ったのにこの扱いだった。

お父様はあの時、私の何に期待していたんだろう。

何が期待外れで、私を突き放したんだろう。


私には分からなかった。答えを聞こうとしてもお父様は何も言わない。

何が目的だったかを知ってるのはお父様だけなのに。

私達姉妹には母親は何処にもいないんだから

母親がいれば、お母さんから何か聞けたかもしれないのに。


「ふん、この雑魚が!」

「うぅ…」


その日を境に、私は姉妹達から散々嬲られるようになった。

姉妹達と言っても、ブレイズお姉様はずっと助けてくれてたけどね。

何度も何度も酷い傷を負って、いつも回復に時間が掛ってた。


だから、今回受けたあの痛み程度なら、私は簡単に我慢できた。

だって、私はもうすでに死ぬような怪我を何百回もしてきたんだから。

実際、何度か死んでるからね。お父様が生きてる限り蘇れたけどさ。


だから、死ぬ事に対してそこまでの恐怖はないし

死ぬと言うことがどう言うことか、私にはイマイチわからない。

だって、何度死んでも蘇るんだから。

だけど、誰かの死だけは…どうしようも無く恐かった。


「ブレイズお姉様…お願い、私を鍛えて」

「……エビルニア、その怪我じゃ無理よ」

「大丈夫、私、強くなりたいの!」


居場所が無かった私は、必死に強くなろうと努力した。

唯一私に協力的だったブレイズお姉様にお願いして

必死に、必死に…ひたすらに鍛えて貰った。

だけど、私は成長することがなかった。ずっと、弱いまま。

魔力量も絶望的に少なくて、魔法も満足に扱えない。


「はぁ、はぁ…」

「エビルニア、今日はここまでよ」

「ま、まだ私は魔力が残ってるから!」

「……ハッキリ言うわ、エビルニア…あなたはどうしようも無く弱い」

「……」

「私達の中で最も弱い、落ちこぼれよ」

「ブレイズお姉様も…そう言うんだ」


自分でも分かってた、でも認めたくなかった。

私達魔物は成長することがない。どれだけ頑張ったって

元々持ってるポテンシャル以上にはなれないんだから。

私は自分でも特性が分からない、そんなどうしようも無い落ちこぼれ。


唯一分かってることは、倒した相手の魔力を奪えるって事だけ。

それだけじゃ、何も意味が無い。無条件に奪えるならまだしも

倒さないと奪えないんだから。それも、自分自身の手で。


「……」


1番弱い私には部屋といえる部屋も用意されてなかった。

牢獄みたいな質素な部屋で、ベットも無い状態で

でも、自分の場所があるだけで、私はもう満足していた。

こんなどうしようも無い雑魚が…魔王の娘なんてね。


「……もう良いよ、もう良い…私なんて……必要無い」


何度か死のうとした記憶がある。自分自身が情け無くて情け無くて…

私みたいなどうしようも無い無能、生きてる価値も無いって。


「……無理だよ、私は…」


だけど、私は死ねなかった。死ぬのが恐かった、どうしようも無く恐かった。

何度か死んだ思いはした、実際に死んだ。

でも…でも……本当に死ぬ。消えるって言うのは恐かった。

自分の意思で死を選べば、流石に消えてしまうんだから。


「……情け無いよ…」


結局、死ぬ事を選ぶ事も出来ず、ただひたすらに月日が流れた。

そんなある日、私達に姉妹が1人増えた。

私はその話を聞いたとき、更に深く絶望したのを覚えてる。

だって、私に妹が出来てしまったんだから。


私みたいな成長出来ない特性も大した事無い雑魚に

妹…どうせ、すぐに私を超えて、また私は孤立する。

ブレイズお姉様も、きっと妹の方に付きっ切りになる。

ただでさえなかった居場所が…妹の誕生で更に無くなる。


「な、なんだよこの餓鬼…飯を食えば食うほど強くなってやがる…」

「眠っても強くなって言ってるわね…」


私の予想通り…いや、予想以上に新しく出来た妹は凄まじかった。

だって、テイルドールお姉様とミルレールお姉様が恐れるほどだ。

ただ生きてるだけで、ドンドン能力が上昇して言っている。

私じゃ、とても追いつけない私の妹…レイラード…


「……」


分かりきってた事だけど…現実を目の当たりにしたとき

私はまた深い絶望に堕ちた気分だった。

もう、私の居場所は何処にもない。


なら、もうこんな辛い思いなんて捨ててしまおう。

感情なんて私には必要無い…感情なんかがあるから辛いんだ。

だったら、こんな物…必要ない…


「……エビルニアお姉様…」

「え?」


自分の部屋で泣いていると、扉が不意に開いた。

そこに居たのはレイラード…なんで、こんな所に。


「エビルニアお姉様、一緒に寝て…良い?」

「な、何言ってるの…レイラード…じ、自分の部屋で寝なさい…

 見ての通り、私の部屋にはベットも何も無いんだから」

「んーん、エビルニアお姉様が居るじゃん。何も無いことは無いよ」

「何言って…ひ、1人で寝るのがいやなら…ブレイズお姉様と」

「いや、私はエビルニアお姉様と一緒に寝たいの!」

「……ど、どうして…」

「一緒に寝たいから」


私には不思議でならなかった。だって、レイラードが私と一緒に寝ようなんて…

自分の部屋の方が遙かに豪華なのに、どうして私の部屋に来たのか分からなかった。


「……わ、分かった…身体を痛めないようにね…

 あなたはお父様に大事にされてるんだから」

「痛めるわけ無いよ、エビルニアお姉様と眠れれば私、幸せだもん」

「……どうして、私みたいな雑魚に」


レイラードは何も答えなかった、でも、少しだけにこりと笑う。

その日を境に、レイラードは妙に私に懐いてくるようになった。


「なんでエビルニア何かに懐いてるんだ? そんな雑魚に」

「うっさい、雑魚。黙れトカゲ」

「あぁ!? テメェ! 末っ子のくせに随分と舐めた口聞いてくれるな!」

「れ、レイラードに手を出さないで…」

「黙れ雑魚!」

「いぐ!」


う、腕が…か、完全に折れた…で、でも…でも大丈夫、いつもの事。


「エビルニアお姉様!? このクソトカゲ…殺す!」


私の腕を折った所を見たレイラードがミルレールお姉様に明らかな殺意を向けた。

レイラードは食べたり寝たりするだけで無尽蔵に強くなる。

今の段階でも…ミルレールお姉様を殺せてしまう…それは、駄目…


「だ、大丈夫…レイラード…なれてるから…」

「でも!」

「ケ! 姉面しやがって、雑魚の癖によ!」


こ、このままじゃ殺される! でも、レイラードが!


「あなたは全然姉っぽくないわよね、ミルレール。

 末っ子が自分に懐いてくれなくて妬いてるの?」


ミルレールお姉様が私にトドメを刺そうと手を振り上げると同時に

ブレイズお姉様が姿を見せて、ミルレールお姉様を止めてくれた。


「ブレイズお姉様!? そんなんじゃねーよ! あの餓鬼が生意気だったから!」

「ま、あの子の口が悪かったのは間違いないけど、手を出して良い理由にはならないわ。

 レイラード、ちゃんと姉は敬って接しなさい」


ブレイズお姉様は少しだけレイラードを叱った。

だけど、レイラードはその言葉に聞く耳を持ってるようには見えなかった。


「じゃあ、テイルドールお姉様とミルレールお姉様もエビルニアお姉様を敬ってよ」

「誰がこんな雑魚」

「やっぱり敬えるか、こんな馬鹿」

「こいつ!」


貶されて怒ったミルレールお姉様がレイラードを殴ろうと拳を振り上げる。


「だ、駄目だよレイラード、ちゃんとお姉様達とも仲良くしないと…」

「……エビルニアお姉様がそう言うなら、そうする。一応ね」


今でも分かってない。どうしてレイラードが私の事を慕うのか。

だって、どう考えてもレイラードは私よりも圧倒的に優れてる。

この子が私を敬う理由なんて分からない…だけど、その時からか分からないけど

私の中に、このままじゃ駄目って言う感情が浮かんできた。


凄い妹に慕われてるんなら…私もレイラードに恥じない様に強くなりたいって。

諦めていた事にもう一度挑戦したくなった。

だけど、私はあの後からも魔力量の増加も無かった。

そんな渡しに出来ることは、ただ技術を磨くことだけだった。


「初級魔法なら瞬時に出せるようになったけど……次は中級…」


ひたすらに魔法の腕を磨くことを決めた。色々な技術を磨く。


「はぁ? 何? あなたみたいな雑魚に、私が魔法を教えるって?」

「うん…お願いします…」

「はん。良いわよ? 特別に最高の技を教えてあげる」

「本当!?」

「えぇ…」


テイルドールお姉様が教えてくれた魔法は、ワールド・エンドだった。

ついでとオーバーヒートやテレポートも教えてくれた。

だけど、この魔法はあまりにも魔力量が激しく、私にはとても扱えない。


「どうしたの? ほら、折角教えてあげたんだから、ありがとう…は?」

「あ、ありがとう。テイルドールお姉様」

「分かれば良いのよ」


私の魔力だとオーバーヒートは大した火力は出ないし

テレポートも使えて1度…それだけで死にかける。

だけど、必死に必死に使って、どうすれば少ない魔力で発動できるか

それを必死に模索して、少ない魔力で発動できる技術を得た。


流石にオーバーヒートは駄目だったけど、火力の調整は可能になった。

問題はワールド・エンド。最大級の魔法だけど、私の魔力じゃ使えないし

発動してもないのに命を落とすと思う。なら、どうすれば良い?

どうすれば、この少ない魔力を克服出来る?


「何よ、また教えて欲しいの?」

「うん…今度は少ない魔力で魔法を使う方法を」

「無理よ、そんな手段はないわ。諦めなさい」


テイルドールお姉様は真っ黒な笑みを浮かべている。

分かっててやったんだ。うん、それ位分かってた。

テイルドールお姉様は私を嫌ってる。そんなお姉様が魔法を教えた理由

それは、私に対する嫌がらせしかないって…でも、諦めるわけにはいかなかった。


「少ない魔力で魔法を発動する方法ね」

「うん、テイルドールお姉様はないって…」

「無い事は無いけどね。あの子の場合は無尽蔵に魔力があるから

 そんな手段を使う必要が無く、研究してないだけでしょうね」

「あるの!?」

「えぇ、だけど…悪いけど、あなたの魔力じゃ

 少ない魔力で魔法を発動しても殆ど意味が無いわ。

 どっちにせよ、魔力が尽きて大した事は出来ないわ」

「そんな…」


ずっと私の弱点はそれだった。あまりにも少ない魔力。これが私の弱点。


「あなたにある弱点は低い魔力量と魔力量の回復速度。

 回復速度を補わない限りどうしようも無いわ」

「それは大丈夫だよ! だって私、倒したら倒した相手の魔力を」

「あなたの魔力じゃ倒しきれないから弱点だと言ってるのよ」

「……じゃあ、どうしたら」

「流石に分からないわ。だから…あなたはレイラードをお願い」

「……」

「これは、あなたにしか出来ないわ。あの子はあなたを大事にしてる。

 だから、あなたはあの子の心を支え続ければ良い。

 今のあなたは存在するだけで価値があるの。

 あなたを必要としてくれる、可愛い妹の為にも、あなたは」

「……レイラードのためにも、私は強くなりたいの!」

「エビルニア……そう、協力は出来ないけど…応援はするわ」


だから、私は必死に魔法の研究をしたりした。

そして考えついたのは、私自身の特性を生かす方法。

魔力を奪えるなら、戦いながら魔力を奪う方法を探した。

必死に探し続けた結果、防御魔法に着目して

防御と吸収を同時に出来るドレインフィールドを作り出した。


防御魔法に私の特性を乗せたこの魔法。

テイルドールお姉様はこの魔法を真似する必要は無いのに

真似をしようとしていた…でも、結局出来ては無かった。

少しだけ、誇らしい気分になれた。


「チッ! こんな半端な技、私は使う必要無いのよ!」

「うぅ…」

「…ふん!」


嬉しかったけど、結局認めては貰えなかった。

これで少しだけ、私はレイラードが誇れる姉になれたと思った。

だけど…やっぱりテイルドールお姉様には勝てない。

テイルドールお姉様との件があって以降、ミルレールお姉様は私に対し攻撃的になった。


「雑魚のくせに舐めやがってよ!」

「あぐぁ!」

「はん、やっぱり雑魚のままだな!」

「いぐぁ!」


今まで以上に容赦は無く、骨くらいは簡単に折れる。

魔法は扱えても、やっぱり肉体は弱いまま…このままじゃ駄目だ。

このままじゃ、私はレイラードの姉として堂々と出来ない。


そう思って、私は城を抜けて強くなろうとした。

……この選択、本当は正しかったのか、間違いだったのか…私には分からない。

だけど、この選択で私は運命に出会った…皮肉な運命に。

消えかかっていた感情が蘇り、再び消えかかる…そんな運命…

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