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裏切り少女のやり直し~200年後の再挑戦  作者: オリオン
第4章、異常なアンデッド達
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異常な光景

やっぱり距離があるね。

国を出発して目的地付近に来るまでかなり掛ったよ。

それにしても、ここが巨人のアンデッドが居た場所かな。


「……さて、いやな雰囲気ね」

「そうですね」


周囲は何と言うか、死屍累々と言う感じだった。

色んな場所で色んな動物が死んでいる。

巨人のアンデッドがやったのかな?


「うーん…でもなぁ…巨人のアンデッドがやったのかな?」

「そうかしら? でも…うーん…アンデッドは動きが遅いからね。

 ゾンビもそうだけど、そんなに速く動けるとは思えないんだけど」


でも、周りには死んでる動物たちが多い…足が速そうな動物も多いし…

アンデッドが追いつけるような動物はあまり…


「基本、アンデッドは元となった生き物基準になるはず。

 だからまぁ、巨人のアンデッドが小動物を殺せるとは思えないけど…」


巨人は動きが遅いからね…逃げ回る小動物を追いかけて殺せるとは思えない。

人相手なら、追いつける可能性はあるけど…小動物や鳥は無理だと思う。

それにしても、凄い範囲の木がなぎ倒されてる…そんなにデカいの?


「…鳥の死体か、ますます不自然だな…何故だ? どうやって鳥を落とした?」

「空を飛んで逃げる、鳥を殺すのは巨人じゃ厳しいでしょうからね。

 1匹や2匹なら…奇跡的な確率であり得るかも知れないけど

 この数は…流石に不自然よね、毒霧でも吐けるのかしら?」


毒で死んだのかな…でも、逃げる動物をすぐに殺せるような毒?

そんな致死性が凄まじい毒なら、周囲の木とかも腐りそうだけど…

でも、木々はなぎ倒されてるだけ…毒何かじゃない。

草だってそうだよ、動物を即死させるような毒を浴びたら

周囲の草だって枯れちゃうはず、でも、足跡しかない。

うーん…だけど、足跡がない所もあるね。横にデカいの?


「毒は無いと思うが…」

「でも、毒じゃないとこれは無理なんじゃないかな?

 い、いくら何でも…こんな、死体の山が…可哀想…」

「後、冷静になって死体を見れば分かるけど…

 この子達、外傷がないのよね…

 でも、踏まれた跡みたいなのはあるわね」

「謎は多いが、私達は進むしかないだろう。

 このまま放置は本当に危険だ…」

「そうね、急ぎましょう。こんな異常事態、ただ事じゃない」


私達が急いで巨人のアンデッドを倒さないと!

このままだと…って、あれ?


「……ギルドの調査兵…そんな、死んでる…」


少し移動した先に、肌が真っ青になった兵士が倒れていた。

それも1人だけだけど…

…アンデッドの巨人にやられたの!? でも、外傷は…


「何よ…これ、どうなってるの? ギルドの調査兵は相当腕が立つ。

 身を潜めるという点で彼らが見付かるって…

 こんな身を隠せそうな場所が多い中で」

「どうしてこの人が…ひ、1人だけで偵察してたんですかね?」

「まさか…1人だなんてあり得ないわ。

 情報収集で派遣されて、1人なんて馬鹿な事が…

 そう言えば、依頼書!」


リトさんが焦りながら、依頼書を開いた。


「……そう言えば、最初言ってたわね、魔術師の件で抜けてたわ。

 確かにこの依頼、あまりにも異常ね…危険すぎるわ」

「ど、どうします?」

「私は1度撤退した方が良いと思う。ここまでの惨状だ

 尋常じゃないぞ…それに、この偵察以外の仏も気になる」

「ここには彼しか倒れてないわよ」

「確実に複数人で行動してたはずだ。サインもあるしな。

 そして、仏の近くに落ちてる道具、女性の物だ」

「髪留め…よく気付いたわね」

「エルフは狩りもするからな、観察は大事なんだ…

 この髪留めだが、確実に女性の物。彼は髪留めが必要なほど

 髪が伸びているようには見えないからな」

「女性の髪留めが落ちてる理由…」

「うーん…女の子、逃げたのかな?」

「いや、狙ってるのが女性である可能性がある。

 周囲の動物は分からないが、人は女を狙ってるかも知れない。

 つまり、私達は良い餌なんだよ、全員女だからな。

 攫われるか殺されるか、下手に深追いはしない方が良い。

 ここは1度撤退して、状況をギルドに伝えるべきだ」


確かに、私達だけでどうにか出来る相手じゃ無いかも知れない。


「そうよね…私も撤退するべきだとは思う。だけど…場所が悪い」

「どう言う?」

「国があるのよ、ロックバード山脈を越えた先に」

「な!」

「そっちからも冒険者を派遣してるかも知れないけど

 戦力は多い方が良い。急いで姿を見付けて挟撃を掛けれるようにしたいの」

「そうか…確かに国があるなら仕方ない…不安だが、被害が拡大する前に」

「えぇ、早急に手を打たないと。まずは観察よ。分かってるわね」

「あぁ」


出来れば撤退したいところだけど、国があるって言うなら追うしか無い。

もう私達はあの魔術師さんの事で時間を予想以上に使ってる。

ここで撤退して、更に時間を消耗するのは不味いよね。

態勢は十分整えてるんだ…勝率が高い場面を選ばないと。


「さ、行くわよ」

「うん! 急がないとね! もっと人が死んじゃうかも知れない…

 私達が何とかしないと!」

「えぇ、被害は可能な限り抑えないと! 急ぐわよ!」

「うん!」


私達は急いでロックバード山脈を越えた。

流石に山を越えるのはしんどいけど、急がないと。

その道中もあの死屍累々の光景が目に入った。


その間で何人か人の死体があったけど、女性の死体はなかった。

全て男性の死体…やっぱり女の子を狙ってるんだ。

警戒しないと、私達だってターゲットになるかも知れないんだから。


「うーん、結構上がったね」

「そうね、しかしリズちゃんも成長したわね。

 前はちょっと歩いただけでひぃひぃ言ってたのに」

「あ、あの時はリト姉ちゃんが早足だったから…」

「そう? 私は今でも早足よ? ましてやここは山道。

 多分、あの時よりも過酷よ? 成長した証拠でしょ」

「うーん、そうかも!」


でも、あの時よりはあまり早足って感じじゃないけどね。


「さて…あ、伏せて…見えたわ」

「うん」


山脈を越えて、しばらく進むと巨大な姿が見えた。

間違いなく山の先にある国に向ってる。

どうして? 真っ直ぐにあの場所を目指してるの?


アンデッドは基本的にただただ徘徊するだけ。

だから、私達も遅れたのに追いつけた。

でも、あんなに真っ直ぐ進んでるなら追いつけるはずが…

そ、それに何あれ…巨体の周囲に小さな姿も


「何あれ! ゾンビ!? ゾンビだよ! 沢山居るよ!」

「あの規模は流石に…でも、エルフの拒絶魔法なら…

 いや、規模が大きすぎるか」

「嫌な予感はしてたが…通りで死体に踏まれた跡があったわけだ」

「……ッ! そう言えば…異常な光景だったから気付かなかった…」

「どうしたの? リト姉ちゃん」

「私達が見てきた死体…どうしてあんなに綺麗だったの?

 確かに踏まれた跡はあったけど…でも、腐敗してない」

「あ!」


そうだよ! 異常な光景過ぎて気付かなかった!

考えてみればおかしい…

巨人のアンデッドが現われたのは1週間以上前

巨人に殺されたなら、麓の死体はもっと腐敗してる!

でも、綺麗だった…それって、ちょっと前に死んだ証拠!


「不味い、巨人のアンデッド以外にも何か潜んでるわ。

 あのゾンビの群れもヤバいけど、それ以上にヤバい何かが!」

「アンデッドが自立して動くって事は無いんですよね!?」

「えぇそうよ、基本的に意思を持っての行動はしない。

 主に徘徊ばかり、目に入った人とかを襲う程度。

 目的地を持って行動する事は基本無いわ!」

「でも、あいつらは仲良く国に向ってるぞ!?

 小さい取り巻きも引き連れて!」

「ゾンビによる村の襲撃に次いで巨人アンデッドの出現。

 更にその巨人アンデッドも目的を持っての移動…

 更にゾンビまで…あぁもう! 訳が分からない…

 あ……そう言えば、私の村を襲ったのもアンデッドの大群。


 イブを…そうよ、あの時から変だった…

 数年前だけど、その時から変な兆候はあった…

 今はそれが本格化してきた…それだけの事…」


数年前…そうだ、あの時から変な兆候はあった。

どうしてテイルドールお姉様が私が住んでた村を?

あまり目立ちたく無さそうだったし、何が…


「だぁもう! 最悪最悪最悪! こんなふざけた状況!」

「ど、どうするのリト姉ちゃん! い、急がないと!」

「急ぎたいわ、急ぎたい! でも、挟撃所じゃない!

 この戦力は予想外よ! 巨人アンデッド3体でもヤバいのに

 そこにゾンビの大群に正体不明の何か!

 助けたいけど…助けたいけど!」

「このまま見捨てるの!? そんなの嫌だよ!」

「いやよ! 私も嫌! でもね、私の使命はあなた達を守ること!

 あの中に突撃するのは自殺行為よ!」

「でも、助けないと!」

「後悔したいの!? リズ!」

「う、うぅ…う、うぐぅうぅぅうう!」


リズちゃんが悔しそうに力を込める。

目から涙も流れてきてる…今、リズちゃんは…


「……嫌だ、逃げたく…逃げたくないよ…」

「戦うの? 私達だけで、あの数と!

 巨人のアンデッドやゾンビだけじゃない!

 何か別の存在だって居るかも知れないのに!」

「作戦は…作戦はあるよ…作戦はある!」

「作戦!? どんな作戦よ! あの数を倒す作戦が」

「倒すんじゃない! 倒せるわけがないことくらい分かってる!

 でも、時間は稼げると思う! 国の人達だって今逃げようとしてるはず!

 その時間を私達が稼ぐことは出来る!」

「どうやってよ!」

「これ!」


リズちゃんがポケットから私が渡しておいた魔法陣

それを書いた紙を出してリトさんに見せる。


「エルちゃんが渡してくれた…でも、それでどうするの?」

「10分間…私達があいつらの注意を惹けば良い。

 遠方でも何処でも良いから攻撃をして私達に狙いを向けさせる。

 そして山の方に惹き付けて、身を隠す…その間にテレポート


 向こうは私達を探すために必死になるはずだから、時間は稼げる。

 少しの時間しか稼げない…犠牲者だってきっと出る。

 だけど、数人かも知れないけど、犠牲を減らすことは出来る!」

「……危険すぎるわ、10分もあの大群から逃げ切れると?」

「10分だけだよ、私達が危ない目に遭うのは。

 でも、国の人達は10分なんかじゃない、一生かも知れない。

 10分程度で恐い恐いなんて言ってられない!」

「……エルちゃんは?」

「リズちゃんがやると言うなら」

「ミリア」

「私は信じよう、勇者候補の可能性を私も見たんだからな」

「……あぁもう、分かったわよ! やるしか無いわね!

 リズちゃん! 何かあっても後悔しないって約束しなさい!

 この方法で犠牲者が沢山出たとしても後悔しないと約束しなさい!

 自分の選択が正しかったと信じて、先に進むと約束しなさい!

 何人死のうとも、自分は沢山の人を救ったと思うと約束しなさい!」

「…分かった、約束するよ。悔しい思いはするかも知れないけど

 それでも、前に進んでみせる…見せるから!」

「そう…分かったわ、ならやりましょう。そのどうしようも無い

 デタラメな作戦。私達の命まとめて賭けた作戦を!

 全員、腹を括りなさい!」

「うん!」


やるんだ、少しでも多くの人を助ける為に!

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