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裏切り少女のやり直し~200年後の再挑戦  作者: オリオン
第4章、異常なアンデッド達
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選択の後悔

国に戻り、あの魔術師さんをミザリーさんに託した。

ミザリーさんは悪いようにはしないと言ってた。

信じるしか無い。私達にはこれ以上、何も出来ないのだから。


「うぅ…あの人大丈夫かな…」

「どうかしらね、誰かを殺してるのかも知れないけど」

「で、でも…折角希望を抱いて貰えたのに…」

「別れるとき、彼女の顔を見ただろう? 穏やかだった

 もし彼女が死ぬ事になったとしても、

 彼女は希望を抱けて死ねる。それは救いだろう」

「だ、だけど…」

「罪は償わないといけないから…」

「そ、そんな事分かってるよ! でも…折角笑顔になれたのに」


彼女がどうなるかは分からないけど…もし死ぬ事になったら

きっとリズちゃんは納得しないと思う。でも、何も出来ない。


「全部結果が出た後に考えましょう。

 ミザリーがどうにかするって信じるしか無いわ」

「う、うん…」


私達はそのまま何もすることが出来ずに1日を過ごした。

いつミザリーさんが来るか気になってか、リズちゃんは夜も寝てない。


「リズちゃん、もう寝た方が良いんじゃ無いかな?」


普段なら既に眠ってるはずの時間なのにリズちゃんは起きたままだった。

私もそんなリズちゃんが気になって眠れないよ。


「眠れないんだ…気になって…」

「……リズちゃん、大人しく眠った方が良いわよ?

 もしミザリーが来たときに隈がある姿なんて見せたら

 ミザリーが困るでしょ? 大丈夫よ、あの子ならやってくれるわ」

「でも…」

「多少の心配は良いけど、酷すぎる心配は仲間を信じてない証拠よ?」

「し、信じてるよ! でも、恐いんだ…」

「恐い?」

「うん…私のせいであの人が死んじゃったら…あ、あの時…見逃してたら」

「リズちゃんは勇者候補、正しい事をしないと駄目だよ。

 あそこで見逃しちゃってたら、あの人は私達に失望するよ。

 悪い事をした人を見逃すなんて、勇者がして良いことじゃない」

「でも、あの人だって理由があったんだ…」

「どんな理由があっても悪い事をして言い訳がないのよ。

 ましてや彼女は自己保身だからね、死にたくないから殺すのは

 やって良い事じゃないのよ」


リトさんの言葉が私の胸の深くに突き刺さった。

そうだ、死にたくないから殺すなんて…やって良い事じゃない。

私はそれを…あぁ、私は何て…


「死にたくないって思うのは、きっと当然の事なんだよ!

 私だって死にたくないもん、誰でも死にたくないに違いないよ。

 街の人だって、皆、死にたいなんて思って無いよ!」

「そうでしょうね、私も出来れば死にたくは無いと思ってる。

 でも、希望を捨ててない人達の邪魔をして良いわけが無いわ」

「分かってるよ…だけど、あの人だってきっと恐かったんだ…」

「ならあなたは? 死ぬかも知れないと言うときどうする?」

「……私は、死ぬかも知れなくてもやりたいことはやりきると思う。

 死ぬかも知れない何て思ったのは…1度くらいしか無いけど。

 でもさ、私が出来るからって皆が出来るわけじゃないじゃん。

 エルちゃんが出来る事を私が出来るわけじゃ無いように

 意思だってそうだよ。皆がどんな時でも頑張ろうって思える訳無いよ」

「リズちゃん…何だか、変ったね」


最初はこんな風な事を言う感じじゃなかった。

自分が出来るから誰かも出来るって感じだった。

考えるよりも先に行動するようなタイプだった。

よく言えば積極的で悪く言えば自分勝手…

でも、今は何だか…前よりも優しくなってる。


「リズちゃん、あなたはきっとこれが最初の後悔なんでしょう?

 あなたは今まで後悔をしたことが無かった…違う?」

「……そ、そんな事は…わ、私だって後悔したことくらいあるもん」

「どんな?」

「……別のお店に行けば良かったとか、こっちを頼んでたらよかったとか」

「それは…まぁ確かに後悔よね、でも取り返しが利くような後悔。

 でも今のあなたは初めて、本物の後悔をしてるんでしょうね」

「ど、どう言う…」

「取り返しが利かない後悔よ。だけどね、リズちゃん。まだ結果は出てないの。

 後悔するにはまだ早いわ。仮に後悔する事になっても立ち止まらないで。

 あの子だって、自分のせいで自分が可能性を見出した勇者候補が立ち止まり

 成長を止めてしまうのは嫌でしょう。


 選択をした以上は結果を残すしか無い。

 選択を間違えたとしても、その選択の先が望む道なら、それは正しい選択。

 くよくよしないで、今日は寝なさい。明日には結果が出るはずよ。

 あなたの選択がとりあえず正しかったのか、間違いだったのかね」

「……」


リズちゃんが俯き、少しだけ涙を流した後に部屋へ帰った。


「……言い過ぎたかしら、あの子にはまだ酷だったかな」

「リトさんも…後悔をしたことあるんですか?」

「当然あるわよ、沢山ね…でも、明るく振る舞うことにしたのよ。

 やっぱりどんな選択だろうと、最後に笑えればそれで良いのよ

 あなたはどう? 後悔したことある?」

「……ありますよ、沢山あります…」

「へぇ、どんな? リズちゃんと同じ様な後悔かしら?」

「いえ、一生の後悔です…言えませんけどね」

「そう……あなたも大変なのね」

「リトさん程じゃありません」


後悔は沢山してるけど、今はまだ…結果を求めないと。

誤った選択の先で求めていた未来を掴み取らないと…

でも、今はそれよりもリズちゃん……凄く心配だよ。

ちょっと様子を見に行こう…何だか不安だし。


「り、リズちゃん…?」


リズちゃんの部屋に入ると、部屋は真っ暗だった。

もう寝ちゃったのかな? ちょっとだけ近寄って見よう。

……あ、枕が涙で…リズちゃん、後悔するのが速すぎるよ。


「リズちゃん、ミザリーさんが頑張ってくれてるんだから

 心配しなくても大丈夫だよ…なんて、聞えないか」

「……」

「ふぇ!?」


リズちゃんの枕元でそんな事を呟くと

私は不意にリズちゃんに腕を掴まれて布団に引きずり込まれた。


「り、リズちゃん!?」

「……何だか不安で…落ち着かないから…一緒に寝てよ」

「リズちゃん、寂しがり屋さんだったの?」

「そんな事無いと思うけど…何だか今日は落ち着かなくて」

「大丈夫だよ、ミザリーさんが何とかしてくれるって。

 後悔するのはまだ早いよ? まだ、何も分かってないんだから」

「…うん、でも今日は一緒に…」

「分かったよ、でも抱きしめなくても良いんじゃ?」

「あはは、何でかなぁ…抱きしめてないと不安なの。

 もし、私が間違ったことをしたら、エルちゃん何処か行っちゃいそうで」

「な、なんで?」

「考えてたの…私、今までどうして後悔したことないのかって。

 私ね、自分で選んだ時って、いつも駄目駄目だからさ…

 それなのに、どうして後悔したことがないんだろうって…

 そう考えたら、全部エルちゃんが居てくれたからって気付いて」


私、何かしたかな? あまり覚えてないよ。


「最初の時もさ、ほら、ブレイカーの時…あの時もさ

 エルちゃんが凄く強くて、結局私の大事な人は誰も死ななかった。

 エルちゃんが酷い怪我をしたときも…あの時だって運が良かっただけ。

 それにエルちゃんが凄かったから、エルちゃんは回復出来て…

 

 ミルレールの時もさ…エルちゃんが凄く強かったから

 何とか倒せたけど…もしエルちゃんが居なかったら…皆死んでた。

 だから、甘えてたって気付いたんだ…エルちゃんの強さに甘えてた。

 自分で何かを選ぶときも、何も考えないで…エルちゃんに甘えてた


 あの人を捕まえたときもそうだよ、私は何も考えないで

 エルちゃんと一緒なら勝てるって、そんな勝手な考えだった。

 自分の行動で後悔する可能性なんて考えて無くて…

 自分勝手で、思いつきで行動して…エルちゃんに助けられて。


 だから、もしこのままの私だったら…

 いつかエルちゃんも何処か行っちゃうんじゃ無いかって!

 リト姉ちゃんも、ミリア姉ちゃんも! 私のせいで…」


自分の行動で誰かを失うかも知れないって思って

そんな風に考えちゃったんだ…


「リズちゃん、そんな事無いよ…もしリズちゃんが選択を間違ったとしても

 私達はリズちゃんの失敗をカバーするからさ。仲間ってそんな物だよ。

 誰だって失敗することや、間違えるときだってあるんだよ。

 そんな時にその失敗を助けるのが仲間だよ。

 リズちゃん、もしかして自分が1人だって思ってるのかな?」

「そんな事…思って無いよ、私にはエルちゃんもリト姉ちゃんもミリア姉ちゃんも

 ミザリー姉ちゃんだって居る…1人なんかじゃ無いよ」

「なら、大丈夫だよ。リズちゃんがもし失敗しても私達が助けてあげる。

 私達の誰かがもし失敗したら、リズちゃんが助ければ良いんだよ。

 リズちゃん、選ぶ事って大変だけど、選ばないと何も出来ないんだよ?」

「……」

「大丈夫、リズちゃんの選択が例え間違ってたとしても

 その選択を正しい物にしようと皆で頑張るから。

 迷わなくて良いから…迷ってたら別の後悔をすると思うしね。

 大丈夫、私を…いや、私達を信じて、リズちゃん」

「……うん…ありがと…う……すぅ」


私にお礼の言葉を言った後、リズちゃんは小さな寝息を立てた。

眠れたんだね、よかった…けど、私に抱きついたまま眠らないで欲しかった。

眠ってたとしても、リズちゃんに力で勝てるわけがないし…

まぁいいや、私もこのまま眠っちゃおう。

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