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魔法の鞄

勉強をしたり、勉強を教えたり。

ここに来て、普段やらな事を沢山するようになった。

勉強をするのは毎日してたけど、教えるのは殆ど無かった。


何かを教えるって言うのは緊張するし難しい。

でも、それだけ価値があるように私は感じた。

難しいからこそ、大きな価値がある。

きっとそうなんだろう。難しくない価値ある行為はきっと無い。


誰かに何かを教えることで、私自身その手段に対して

深い深い理解が出来るような、そんな気がした。

でも、勉強は沢山する事に変わりは無かった。


あの後、ミザリーさんからリトさんが使っていた魔法の鞄を渡された。

私はずっとこの時を待っていたと言う感じだよ。

だって、この魔法の鞄に付与されている魔法に私は興味があったから。

時間はまだ午後6時、時間は十分あるよね。


「少し変った魔方陣…」


魔法の鞄が渡されて、今日の勉強とかが終わった後

私は自分の部屋に戻り、早速、魔法の鞄にある魔方陣を調べる事にした。

魔方陣は私が今まで組んだことが無いような特殊な魔方陣が付与されている。

黄色の魔方陣…私が今まで組んでいた魔方陣は基本青だけど、色から違うね。


魔方陣の構造も私の魔方陣とは全然違うし、魔力で練ったと言うよりは

鞄に直接魔方陣を描いているような感じだった。

そして、魔方陣から放出されている魔力は私自身の魔力…

手を突っ込むと、その魔方陣に吸い込まれたりもした。

何も無い空間に感じるけど、簡易型のテレポートって言ってたけど違うのかな。


うん、きっとテレポートだ。だけど違うのは現存する空間へのテレポートじゃ無く

別の空間。別次元へのテレポート。この魔方陣は別空間の入り口になってるのかな。

恐らくこの魔方陣から放出してる魔力が対応した空間への入り口になってる。


「……空間創造系の魔法…凄い魔法だね」


人類にこれだけ高レベルの魔法を扱える存在が居るなんて驚いた。

それだけじゃ無く、その魔法を付与して他者の魔力で運用するなんてね。

そしてこの魔方陣は恐らく絵で描かれているタイプの魔方陣。

つまり使用者が死亡しても魔方陣は残り、別の使用者が鞄を再利用できる。


魔方陣を維持する必要は無く。使用者が変化すれば魔方陣その物も変化する。

他者がこの鞄を強奪し、使用したとしても使用者の魔力に反応する性質上

元の使用者が使っていた空間に繋がることは無く、盗まれても中身は空っぽ。


基本的に魔力は指紋とかと同じ様に、同じ魔力は存在しない。

だから、防犯面に関しても最高レベルと言えるかな。

私は奪った対象の魔力を使えるから、この防犯面は突破できるけどね。


「絵で魔方陣を描く…なる程、これはあまり発想に無かったかも」


絵を描いた場所で色々な魔法を発動できるのは凄いね。

問題はどうやってその絵で描いた魔方陣を発動させるか。

例えば自室の何処かに魔方陣を描いたとして

それを遠方から発動させる方法…これが分からないとちょっとなぁ。


周囲の人間から微量な魔力を貰って発動を維持する方法が無難?

でも、それだと周囲の人間が居ないと無意味だし…

あまり安定した発動条件とは言えないかも知れない。


どれだけ距離が離れていたとしても使用者の魔力を吸収して

そこから転移できる…とかもありかも知れないんだけど

それもまた難しい条件がいくつか存在してる。


どうやって遠距離から魔力を補給するかも…

と言うかだよ、そもそもそんな遠距離から魔力を送る手段があるなら

魔方陣を使用するときに魔力を与えて魔方陣を発動させれば良いじゃん。



「…遠距離への魔力補給…うーん」


ひとまず私は魔法の鞄にある魔方陣を模倣して紙に描いてみた。

感覚的に魔力を吸われているという感じはしないのだけど

自分が改めて書いた魔方陣には自分自身の魔力を感じた。


その魔方陣に手を突っ込むと、案の定吸い込まれる。

で、この魔方陣を描いた紙を破ってみると、魔方陣の効果は消滅した。

やっぱり描くタイプの魔方陣は引き裂かれたりするとそれでアウトかな。


今度はもう一度書いて見て、一箇所だけ欠損させてみた。

それでも魔方陣は不完全な状態だし、普通は使用不可になる。

だけど、この魔方陣は問題無く機能しているようだった。

折りたたんでみても同じで、グシャグシャにしてみても結果は同じ。

多少の欠損や歪み程度なら問題無く発動するんだ。


それもそうか、鞄の中にこの魔方陣は組まれているんだからね。

鞄が常に同じ状態というわけでは無いんだし、この程度で発動出来なくなるなら

そもそも実用性は皆無に等しくなるって感じだよね。


「…今度はこれで」


次は鞄の中に部屋にあったテーブルライトを入れて見た。

そして、同じく鞄の中に手を突っ込んで回収。

これは当然、問題無く機能する。


次も同じ様に鞄の中にテーブルライトを入れた後

さっき紙に描いた魔方陣の中に手を突っ込んでみた。

そして、そこからも私は同じテーブルライトを回収できた。


この事から、やっぱり使用者の魔力に反応して

この魔方陣が入り口となり、別の空間を創造していることが確定したわけだよ。

同じ魔方陣を組み、同じ人間がその魔方陣に手を入れれば

例えそこが壁の中だろうと道具を取り出せることが確定した。


次は色を変えてみる。さっきまでは黄色だったけど、今度は黒色で

同じ魔方陣を描いて、どうなるかを調べる事にした。

結果はどんな色だろうと効果は同じで、同じ魔方陣を描くことさえ出来れば

例え鞄の中じゃ無かったとしても、道具を取り出せることが確定した。


「汎用性が高いね」


次は組み方を変えてみることにした。

今度は普段私が魔力で組んでいる魔方陣を描くことにする。

その場合はどうなるのか……


「…うーん、何も起こらない」


結果は何も起こらないという、若干予想通りの結果だった。

やっぱり魔力で組む魔方陣は魔力で組まないと意味が無いって事だね。

でも、この行動が無意味だったというわけでは無い。


普段組んでる魔方陣を絵に描き出したことで

魔法の鞄で組まれていた魔方陣との差異に気付くことが出来た。

魔方陣の中心を囲うように組んでいた円の部分。

魔法の鞄に描かれた魔方陣にはいくつかの言語が確認できた。


とは言え、私達が普段使ってる言語とは違うね。

うーん…うーん…この言語は…何処かで見たことある様な気がするんだけどなぁ…


「……そうだ! 確かこの言語は…」


思い出した、この言語は勇者様のパーティーにいた魔法使いも使ってた!

確かこの言語は…魔の探求者達の言語。思い出せ、どんな意味だったか。

いや、そう言えば確か言語は文字その物に魔力が宿るとかなんとか。


そして、描かれている文字の意味は…確か……吸えと創造!

魔術師達の言語で吸えと書かれている…

なる程、これで周囲の魔力を吸う効果が発動するんだね。

そして、創造の部分で空間を作り出しているって事だね。


あるいは、その効果を強化しているという可能性もある。

なら、魔術師達の言語で条件起動とか書いて見たらどうだろう。

似たような魔方陣の作り、中心に描かれている魔方陣の絵を


いくつもの四角形の形からアンカーの形に変えてみた。

そして、距離を開けてみた。


「魔方陣は起動してない」


距離を開けたらさっきまで使っていた四角形の魔方陣は動きが止まった。

さっきまでは淡くオレンジ色に光っていたけど、距離を取ったらその淡い色は消える。

これだけ距離を開ければ効果が無くなるって事かな。


で、当然アンカーの形をした私が再度作った魔方陣も起動しては居ない。

これは近くに居たときも同じだった…魔方陣の組み方を間違っているのかも知れないけど

ひとまず試してみるしか無い。挑戦するしか無いんだから。


「よし…動いて」


手を前に出して魔力を送るようなイメージをする。

……だけど、魔方陣は光らない。やっぱル組み方が違うのかも知れない。


「うーん、駄目かぁ…」


次はどんな風に組もうか…と、思ったときに時計の音が鳴った。

その音をきっかけに私はようやく時計をみることになった。


「……うぇ!? 6時!?」


き、気付いたら窓の外も明るくなってる!?


「ご、ご飯の用意しなきゃ! って、リズちゃん!?」


部屋のドアを開けると、そこでリズちゃんがグッスリ眠ってた。

何でここで寝てるの!?


「ふぁ…あ、エルちゃん…ご飯食べに行こうよー…」

「も、もしかして…昨日ずっと私を呼んでた?」

「うん。全然出て来ないから待ってたんだけど、いつの間にか寝てたよ」

「ご、ごめん…」

「どうしたの? もしかして眠ってた?」

「あ、いや、集中しすぎて気付かなかったって言うか…」

「あ、そうなんだ…て言うか、お部屋凄い事になってるね。

 エルちゃんが自分のお部屋をあんなに散かすなんて」

「あ…」


部屋を改めて見てみると、部屋中に紙が散乱していた。

……やっちゃったかも。でも、部屋に落書きしたわけじゃ無いのはセーフ。


「あ、後で片付けるよ…それよりこれからご飯作るから待ってて」

「はーい…って、あ! もう朝じゃん!」

「うん…ごめんね、私のせいで」

「んーん、気にしないで! よーし! 今日も魔法の勉強頑張るぞー!」

「おー」


…リズちゃんの切り替えの速さ、本当に凄いなぁ。

よーし、私もまた今日も頑張って魔方陣の解読だね!

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