勉強
「あなた達のランクは冒険者とは若干違った形で上昇します」
「やっぱり勇者候補だから?」
「えぇ、まぁ」
勇者は普通の人間よりもかなり高い能力を持つからね。
主に成長速度という点においては比べものにならないほどに違うからね。
となると、普通の人間である冒険者と同じ土俵では比べられないかな。
「まずは勇者候補のランクです。
勇者候補が最終的に目指すランクはSSSという事になります。
ですが、ランクの上昇方法は大きく異なります。
冒険者の場合は達成した依頼に一定のポイントが存在しており
そのポイントを蓄積していくことでランクが上昇するシステムです。
しかし、勇者候補の場合は違いまして
私達専属の受付嬢が掲示した依頼に鍵となる依頼が混ざっております。
その依頼を攻略することで次のランクに行くために攻略しなくてはならない
依頼を提供します。その依頼を攻略することでランクが上昇するシステムです。
とは言え、非常事態などが発生する事もあります。
その非常事態の対象がランク以上の魔物だった場合は
緊急の依頼として掲示。その依頼を攻略することが出来れば
そのままランクが1つ上がる様になります。
基本的には鍵となる依頼を攻略してのランクアップですが
まぁ、非常事態が発生した場合は特例と言う事ですね」
素早くランクを上げるには非常事態の発生を祈る方が良いって事かな?
でも、出来ればそんな危ない事態は起こって欲しくない。
となると、出来れば鍵となる依頼をこなして行きたいかな。
「ふーん、何だか面倒な話ね。得意な奴狩ってランク上げるのが出来ないって訳ね」
「えぇ、ですのであなたみたいにアンデッドばかり狩ってのランク上昇は無理です」
「あ、そう言えばリトさんが倒したって言う高ランクの魔物って
全部アンデッドだったような」
「リト姉ちゃんと呼んでよ、そっちの方が良いわー」
「あ、わ、分かりました…り、リト姉ちゃん」
「うん、躊躇いながらってのも悪くないわね!」
「勇者候補に手を出さないでくださいよ…」
「だから出さないっての!」
やっぱり何だか若干抵抗があるなぁ…
「でー、なんでアンデッドばかりなの?」
「んー……ま、まぁ、狩りやすいからよ」
「アンデッドは狩るのがかなり面倒な部類だと思いますが?
何度か復活する個体も居るくらいですし」
「いやほら、でもあれよ、その分討伐したときの功績デカいしね」
「まぁ、確かに大きい部類にはなりますね。
アンデッドによる被害は多いですし、危険視されてますからね」
「そうそう、功績が大きいからやりやすいってだけなのよ」
「なる程」
クリムゾンデッドと死鬼だったかな、ブレイカー以外の高ランクの討伐。
死鬼は結構面倒な部類の相手だと思うんだけどなぁ。
近接戦闘で戦う場合は特に…ダメージを受けたら継続ダメージだし。
「まぁ、私の話は良いじゃ無い。今は勉強でしょう?」
「確かにその通りですね。はい、では勇者のランクについてはこんな所です。
では次ですね、次は魔法に関しての勉強としましょうか」
「それならエルちゃんが得意だろうし、意味あるの?」
「はい、エリエルさんに対しては何の意味も無いので
今回はエリエルさんに魔法の勉強をして貰うとしましょうか。
魔法学園との約束事の1つにエリエルさんによるリズさんの魔法訓練もありますし」
「エルちゃんに教えて貰うなら楽でいいや! 教えてエルちゃん!」
「あ、うん。分かったよ」
でも、教材とか用意してないんだよね。実際に見せるしか無いかも。
「じゃあ、軽く教えるね。まずは基本中の基本である魔法陣について。
今回は基礎魔法の1つであるマジックソードの魔法陣について詳しく解説するよ」
「おー! あの格好いい奴ね!」
「うん。このマジックソードの魔法陣には当然だけど剣の魔法陣になるよ。
基礎的な魔法陣の形としては3本の剣が重なった魔方陣が主だね。
単純な魔方陣であれば、剣を3本重ねた形だけで問題は無いよ」
私はリズちゃんの前に剣が3本重なった魔方陣を出した。
特別に円形とかは無いし、ただ剣が3本重なってるだけ。
これがマジックソードの基本的な形になるね。
「基礎魔法ってだけあって、そんなに複雑な魔方陣じゃ無いのが特徴だよ。
マジックアローとかの基礎魔法も似たような形状になるのは知ってるよね」
「うん、でもさー、どうやったらそんなにポンポン出せるの?」
「基本的にはイメージを絵にして具現化するんだよ。
指先に魔力を集中して自分が望む魔方陣をイメージ。
後は魔力をその形に描いていくというイメージする。
魔法はイメージの力が大きいからね。細部までイメージすればするほどに精巧になる。
でも、焦っていたり精神的動揺があったりすると当然魔方陣の形は崩れるよ。
雑な形状だったとしても、一応は魔法を発動することは出来るけどね。
だから、重要なのはどんな時も動揺しない精神力ではあるけど
そうは言っても、非常事態だとどうしても動揺してしまう。
だから、主に自分の脳内に魔法を使用する際の魔方陣のイメージ図を染みこませる。
何度も何度も全く同じ魔方陣を構築して、その魔方陣を瞬時に出せるようにするの」
細かい魔方陣を瞬時に出すためには、ただひたすらに最上の形を作り出す。
それを何度も何度も繰り返すと、すぐに精巧な魔方陣を組むことも出来る。
最高の形を瞬時に作るにはただ繰り返す事しか出来ない。
「何度も練習…」
「うん、因みに余談だけどマジックソードは魔力量が大きければ大きいほどに
巨大な剣を召喚出来るようになって、魔方陣が精巧であればあるほどに
鋭利な剣を呼び出して、相手を斬ることが出来るようになってるんだ。
精巧な魔方陣は集団を相手取るには向かないけど
単体を相手取る場合はかなり強力な魔法だよ」
「へぇ! なら早く使える様になりたい!」
「基礎魔法ですし、少し練習すれば出来るでしょう。と言うか、使えないんですか?」
「魔法の勉強を始めてあまり経ってないからね-、クラスの中だと
エルちゃんくらいしか満足に魔法は扱えてないよ。
殆どは失敗してるしね。私も知ってるけど失敗は多いから」
一応、基礎魔法ではあるけど多少の練習は必要だからね。
「あぁ、確かにそうですね。基本的に1年目は魔法の基礎知識を教えて
本格的な練習は2年目からですからね。1年目で急遽卒業となった
リズさんが魔法を上手く扱えないのも納得です」
「適応能力はずば抜けてるみたいだけどね。
でも、あなたほどの才能があれば魔法くらいすぐだと思うけど」
「あたし、魔法はあまり好きじゃ無いんだよ。
周りから魔法極めろ極めろって言われて嫌になっちゃったし!
そもそも、あたしは身体を鍛えたいんだよ!
そして、エルちゃんを守るの!」
「はぁ、険しい道を進もうとしてるのですね」
「険しい道だからこそ挑みたい!」
「…なる程、インドア派の私には分からない感情ですね」
険しい道だと分かっていても、リズちゃんは挑もうとしてる。
そこはリズちゃんの凄いところだし、1番の長所とも言えるよね。
ちょっと無謀なところが多いけど。
「よーし、じゃあリズちゃん、少しマジックソードの練習をしようか」
「おぉ!」
私はリズちゃんに基本的な事を教えたり
魔方陣の形を指摘しながらリズちゃんを指導した。
やっぱり基礎魔法とは言え、発動には苦戦してるね。
何度かマジックソードの練習を学校でしてたけど
成功した人は一握りなんだよね。
でも、基礎魔法を安定して発動できる様になれば
そこからの応用で他の魔法も扱えるようになる。
基礎魔法の習得はこれからを考えても必要不可欠だよね。
「ふぅ、ふぅ…」
「大丈夫?」
「うん! まだまだ!」
それからしばらくの時間が経って、ようやくその時が来た。
「出て来い! マジックソード!」
「おぉ!」
まだまだ若干崩れた魔方陣だけど
マジックソードを召喚する事にギリギリ成功した。
「や、やったー!」
「基礎魔法の習得までに掛った時間は8時間。
悪くないタイムと言えるでしょうね」
「あ、ようやく終わったのね…半分寝てたわ」
「やったねリズちゃん!」
「うん!」
「でも、分かってると思うけどまだまだ課題は多いよ。
次はもうちょっと綺麗な魔方陣を組まないとね」
「よーし! じゃあそのまま!」
「駄目だよリズちゃん。今日はこれまで。
無茶をするのはよくないよ」
「えー! 今ならもっと凄いの出来そうなのに!」
「リズちゃんが凄いのはここに居る皆が分かってるよ。
8時間でマジックソードを出せるようになったんだもん。
でもね、大事なのは1度綺麗に出来るようになる事じゃ無いの。
毎日やって、毎日出来るようになって、まぐれを当たり前にしなくちゃ駄目なの。
1日で完璧になっても、2日目で駄目になったら意味ないでしょ?
だから、今日はここまで。今度は明日、凄い綺麗なのを出せば良いんだから。
毎日毎日綺麗な物を出せるようになればリズちゃんは敵無しだよ」
「うん! 分かった! じゃあ今日はここまでにする!」
「うん!」
まぐれを毎日出来るようになったとき、本当に出来るようになったと言えるからね。
毎日の積み重ねこそ、最高の魔法を安定して出すためには必要不可欠なこと。
1日出来ても、2日目出来なければ意味が無い。きっとリズちゃんも分かってくれるよ。




