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第九回

 気づけば食堂の大時計は、すでに十二時四十分過ぎを指している。上山は少し慌てぎみに食べ進めた。

 その日の午後は幽霊平林も遠慮してか、ついに現われなかった。ひとまずは上山も安心である。とはいえ、いつヒョイ! と現われるかも知れないという不安はつきまとう。上山がようやく安心できたのは、田丸工業の社屋を出た瞬間だった。というのも、幽霊平林が現われるのは今のところ社屋内だけで、会社外に現れたことはなかったからだ。だから課長という地位にあり、将来を嘱望しょくぼうされているにもかかわらず、上山は、ここ最近、定時に退社するようになっていた。それはもちろん、幽霊平林が現われるようになってからである。課長に昇進した当時の上山は、残業の日々を続けていたから、社の重役連中も最近の彼の豹変ぶりには、ガックリと肩を落としていたのである。だが、上山の仕事への情熱がなくなったのか、といえば、そういう訳でもなかった。原因はただひとつ、死んだ平林が幽霊となって自分の前へ現れるようになった・・という、ただそれだけだった。その平林は、上山を助け、有能な才を仕事に発揮して会社のトップを喜ばせた…という過去の皮肉な経緯があった。しかし彼が死んだ今となっては、上山としては、彼のことをもう過去のこととして忘れ去りたかった。それが、日々をわずらわす出現となっては、雲泥の差といっていいマイナスを上山に与えているのである。始末が悪いのは、迷惑をかけているという自覚が寸分も幽霊平林にはなかったことだった。

 次の日曜、想い込んだように上山は市立図書館へ向かっていた。幽霊平林が何故、自分だけに見えるのか…これを究明する手がかりを見つけるためである。誰が考えても、そんな本が図書館にあるとは思えない。上山はからめ手を模索していた。なぜ自分だけに幽霊平林が見えるのか…。これは精神医学関連の本を探れば何らかのヒントがつかめそうな気がした。

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