第八十五回
『まず、ですね。課長の昨日の行動を振り返って下さい』
「昨日の行動って、…どの辺りから?」
『そうですね。社長室で田丸社長とお話しされて会社を出られた頃からですね。それまでは僕も課長と話してましたから、それ以降です』
「君が消えた時から、ってこと?」
『はい…』
「君が消えたのは、正確には社長室を出て課に鞄を取りに戻ったときだったな?」
『ええ…、通路までは僕も一緒でしたから、それ以降ですね』
「課のドアを開けた時からか…」
『はい、そうなります』
「え~と、ドアを開けた時な。ドアを開けた時…。確か、課内には出水君と数人が、まだいたな」
『はあ。すると、その時は人の姿があった訳ですね?』
「むろんだよ、君。家へ戻るまでには多くの人の姿があったんだから…」
『となると、家に着かれたあとの行動、ということになりますが…』
幽霊平林にそう云われ、上山は腕組みをして考え始めた。
「行動って云われてもなあ…。家に着いてからは、いつもの動きだったし…」
『これ、といった変わったことはされたり、してないんですね?』
「ああ…、なにもなかった筈だ。って云うか、なにもなかった」
『そうですか…。それじゃ変わったことは起りませんでしたか?』
「変わったこと…。別にないなあ。昨日はゴーステンのことを考えたりしていた」
『その辺りを、もう少し詳しくお願いします』
「ああ…。君も知ってると思うが、岬君の仲人を私が頼まれてるんだ。まあ、式だけの親代わりだけだが…。六月の式までひと月ほどになったから、そろそろ披露宴の挨拶文をと考えていたんだよ。それまでに、なんとしても今回の手掛かりだけはと思ったんだが、その時、佃教授と霊動感知機が、ふと浮かんだのさ」




