第六十七回
意識すればするほど、妙なもので空腹の、ひもじさは増してくる。飛び込んだ行きつけの食堂で、いつもの、しっぽくを食べながら、上山は考えていた。なぜ幽霊平林の頭に着けた三角巾が落ちたとき、彼の姿が消えたのか…である。幽霊平林の意志で消えたのではない以上、こいつは妙だぞ…と、気にはなっていたのだ。考えていると妙なことに、一味を多く振りかけていた。辛くて食べられたものではないのだが、これも妙なもので、考えていると、さほど辛くもなく気づけば汁まで全部、やっつけている自分に上山は気づかされた。それと同時に、口の中が火の車になっていることに瞬間、気づき、コップの水を一気に飲み干す上山だった。しかし結局、幽霊平林が消えたことに思い当たることもなく、原因も掴めなかった。
「おやじさん! ここへ置いとくよ」
「へい! 毎度。また、お起しを!」
暖簾を潜って外へ出る。天気もよく、ポカポカと昼の日射しで少し汗ばんだ。これは一味のせいもあるか…と思え、上山は日蔭を選んで駐車場まで急いだ。
さすがに奴も疲れたか…と、夜になって上山は思ったが、これもよく考えれば、幽霊が疲れるのだろうか…と、逆に思えるのだ。いつの間にか上山は幽霊平林が、さも生きた人間のように話していたのである。だから、奴も疲れたか…と思える訳だ。今、霊界にいて、首をぐるりと一回転すれば、すぐ現れることが出来るバイタリティは、いったいどの辺りにあるのか…とも思えた。風呂上りに手早く数本、銚子を運び、ツマミを齧れば、酔いも手伝ってか次第に妙な発想が浮かぶ自分に気づく上山だった。そしていつの間にか、ベッドへ足を運ぶことなく深い眠りへと落ちていった。
ぐっすり眠り、気づけば目覚ましは七時を回っていた。窓辺の柿の木で囀る野鳥の数匹が上山の目に入った。種類はよく分からないが、雀ではない。朝日が眩く上山の眼に入った。大きな欠伸を上山は、ひとつした。




