第五十九回
「えっ? 今、なんて…。霊が?」
「はい、霊がですね、見えるんです」
「霊がですか? ほう…。そうですか」
佃教授は驚く様子もなく、上山に返した。
「驚かれないですね、教授」
「ええ、私はこれでも霊動学を専門とする学者ですよ。当然、そういうこと、我々は事象と呼んでおりますが、そうした事象が起こり得る、いや、起こるもの、として捉えますから…」
「なるほど、それで驚かれなくなったんですね。今も、その霊がここにいるのです。それも、すぐ近くの私の前に…」
そう云うと、上山は幽霊平林がいる手前を指さした。佃教授は一瞬、ギクッ! とした目つきになったが、冷静さをとり戻して頷くと、上山が指さす方向を見た。
「その霊の方というのは、お知り合いの方ですか?」
「はい、元は私の課にいた部下なのですが、生憎、交通事故で死にましてね。平林といいます」
幽霊平林は教授を見ながら、ペコリとお辞儀した。もちろん、その姿は教授には見えない。
「そうですか…。それで、彼とはコンタクトはとれるんですか?」
「むろんです。それどころか、話すことも出来ますし、呼び出すことも出来るんですよ、元部下ですからね。なっ!」
上山は幽霊平林に声をかけた。
『えっ? はい! そのとおりです』
姿だけでなく、声も、もちろん教授には聞こえない。
「はい、そのとおりです、と申しております」
「これは、研究に値する画期的な事象です」
教授の眼は輝きを増した。




