三章 第六十九回
その頃、上山は田丸工業の仕事を終え、帰宅途中の駅構内にいた。車が不調で修理に出し、電車通勤したのだが、駅の電光掲示板に流れるテロップは、その世界的ニュースを報じていた。
「平林の云ったとおりだ…。一週間で凄まじい成果だ」
上山は如意の筆の荘厳な霊力を改めて知らされる思いがした。改札口を抜け、徒歩でバス停へと方向転換する上山だった。バスは10分ほど待ってやってきた。二つほどのバス停を通過して下車した。すでに辺りは夕闇が迫っていた。いつもの慣れた道だから迷うという不自由さはない。家がまじかに迫ったとき、背後で冷んやりとした気配がし、上山は振り向いた。そこには、幽霊平林が陰気な笑みを浮かべてスゥ~っと流れていた。
「おお! 驚いたぜ、今日は!」
『すみません。こちから来てしまいました。呼ばれてなかったんですが…。どうも、済みません』
「いいさ、こちらから呼ぼうと思ってたとこだ」
『そうでしたか。効果は拡大しているようですね』
「ああ…。順調で何よりだ。これで霊界でのポイントも加点されただろうな」
『はい、恐らくは。僕も、それを楽しみにしてるんですよ。それと、肝心なことを云わないと…。上半身が元どおり見えるようになったんですよ』
「ほう、それは、よかった」
『少し、安心出来ました…』
幽霊平林は上山の後方から右横へと位置を変えながら云った。二人は薄暗くなった歩道を進んだ。人通りは、ほとんどなかった。家に着き施錠を解くと、上山は家に入った。もちろん、幽霊平林はスゥ~っと透過して、上山より先に部屋へ現れていた。
「こちらで、いくら効果が出たと喜んでも、霊界トップの方々が認めてくれないとなあ…」
上山は愚痴っぽく云いながら幽霊平林を見ると、テーブルへ手持ちの鞄を置いた。




