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二章 第九十五回

 上山の言葉が終わらないうちに、幽霊平林は、パッ! と格好よく消え去った。

 それから数日が経った。幽霊平林からの音沙汰は、まったくなく、上山には、奴め、手古摺てこずってやがるな…と思えていた。上山自身も、アフリカ全土に広がる多くの国々の中で紛争などにより乱れた国を探っていたから、そう気にもならなかった。

 上山が決裁をする第二業務課内には、これといって変化はない。課員達が日々、机上でにらみあっているノートパソコンは今日も稼働し、そして課員達はその物体に魅せられたかのように隷従れいじゅうしていた。実は、上山も以前は彼等とまったく同じだった。それが変化したのは、係長から課長へと昇格したときだった。係長として決裁を手渡す立場だったものが、今度は受け取って決裁する立場へ変わったのだ。めくら判を押す訳にはいかないから、ひと通りの広い知識は上山の頭脳の中にインプットされていた。上山にとってパソコンは、その知識の収納箱へと変化していた。ただ単に収納するだけだから、今は以前とは違う余裕があった。いや、というより、単なる百科事典を一冊、机上に置いておくぐらいの感覚に変化していたのだ。

 幽霊平林が現れたのは、上山が食事を終えた食堂だった。大時計の針は昼の十二時半近くを指していた。

『課長! シリアは、念じておきました』

 上山は突然、現れた幽霊平林に後方から声をかけられ一瞬、ドキッ! とした。驚きの声ではなく、うっかり話しそうになり周囲にいる社員達の姿を見て、思わず生唾なまつばみ込んだ。声を出せば変に思われるのは必定で、上山は仕方なく肩が凝った仕草で腕を回し、手先を天井に向けた。屋上で話そうと、暗にフリで示したのだ。野球でいうサインのようなものだが、事前に云ってないから、幽霊平林は、ハア? という怪訝けげんな表情でプカリプカリと漂っているだけだった。それでも、何度か指で天井を指されると、さすがに分かったのか、舌を出してうなずきながら消え失せた。もちろん、瞬間移動したのは屋上である。

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