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二章 第八十九回

「おっ! 待たせたな」

『いえ…。課長にどう云おうかとまとめてたとこですから、丁度いいです』

「ははは…。そんな難しいことじゃなかろうが。相手会社のお偉いさんに話すプレゼンテーションじゃないんだから…」

 上山は軽い冗談を云った。

『先ほどの続きなんですが、僕が云ったとおり、目標を決めれば、ほぼ正確に現れることが出来ます。たとえば、エジプトのスフィンクスの前、とかです。ソマリアですと、ターゲットにするポイントは、空港とかですね。あの国には、文化的に知名度の高い有名構造物は、そうないですからね』

「そうだなあ…。となると、あとは私の日程調整か…」

『ええ、まあ…』

「まあ、海外旅行のパスポートは、いらんからな」

『人の目を気にする必要もありません』

「ああ、そうだな。まっ! よろしく頼むわ」

『いえ、こちらこそ…』

 二人(一人と一霊)は、ペコリと相手に対して一礼した。

 そして、ついに最初の活動日が巡ってきた。二人は分かれる前、活動日とする次の土曜と、九時~十時の間、それに上山が左手首をグルリと回して幽霊平林を呼び出すことなどを事前に決めておいたから、この日は双方とも慌てることなく冷静だった。とはいっても、上山にすれば今度の移動は富士山麓の青木ヶ原樹海のように近くないソマリアなのである。表面上の気分は冷静なのだが、やはり内心は騒いでいた。それに、上山にとっては、人間科学をすべて否定する瞬間移動なのである。マジックではないから、余計に不安が深層心理に重くしかかるのだった。

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