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二章 第七十六回

 顔を洗っていない訳ではない上山である。起床後、ひと通りの所作を終え、軽食もとりコーヒーも飲んだのだ。それで、また顔を洗うのは、明らかに気持を落ちつけるためである。上山にとって、空間移動するなどということは考えだに出来ない。いや、あり得ないことだからである。

 上山は洗面台でジャブッ! と顔を洗うと、前の鏡に映った自分の顔をじっと見た。少しは落ちついたのか、鏡の自分は心なしか安らいで見えた。顔を拭いて上山が厨房へ戻ると、幽霊平林は同じ位置で漂っていた。

「待たせたな。さあ、やってくれ」

『やってくれって、ちょっと待って下さいよ。僕も念じなきゃなりませんし…。だいいち、その前に課長に何を念じるのかを云っておかないと、不安でしょ?』

『ああ、そりゃまあな…』

『とにかく、今回は課長の身体が僕と一緒に外国へ移動出来るか、ですから、国内の身近なところで、まずやってみます。では、これから富士山麓へと…』

「ちょ! ちょっと待てよ!」

 幽霊平林が如意の筆を手にし、両のまぶたを閉ざしたとき、上山は急に止めた。

『どうされたんです?』

「いや、なに。富士山麓にした理由は?」

『別に…。ただの思いつきですよ』

「思いつき!? …まあいい、やってくれ」

 幽霊平林は、ふたたび両の瞼を閉ざした。そして、しばらくすると、おもむろに如意の筆を二、三度、軽く振った。次の瞬間、二人の姿は厨房から消えていた。

 富士山麓の鬱蒼と茂る樹林地帯の中、二人の姿は不意に現れた。

「おお! 上手くいったようだな」

『はい! どうやら成功のようです。課長も瞬間移動されましたし…』

「ああ…。しかし、にわかには信じられんな。人類科学を否定する事実だからな」

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