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二章 第三十三回

「そのはずです。外観は以前と何も変わっていません」

「すると、容器の中のマヨネーズが変化したと?」

「いいえ、中身も、ちっとも変化はしておらないはずです。最初と、…すなわち先生が持って来られた時と、少しも変化してないはずです」

「なんだ、変わっとらんのですか」

「いえ、変わっています」

「なんですと! どういうことです? 変わってないと云ったものが変わっておるとは?」

「ですから、外観は変わってない、ということです」

「それじゃ、いったい何が変わったと云われるんですかな?」

「それは、このマヨネーズを上山さんが幽霊となっている平林さんに手渡したときに分かるはずです」

「ああ、そうでしたな。その段階で我々の目から消え去るんでしたな?」

「はい、そういうことです」

「ということは、中位相に変化したと?」

「ええ…。だから一見して何の変化もないのです。もちろん、味も量も変わっちゃいません」

 つくだ教授は自信ありげに滑川なめかわ教授へ告げた。

「そうですか。すると、もう持って帰ってもいい訳ですな?」

「はい、どうぞ…」

「おお、そりゃ、有難い。なんか、店のお持ち帰り、みたいですな。では、さっそく上山のところへ宅急便で送ってやります、一筆、添えて」

「宅急便ですか?」

「ええ、そう云ってありますからな、ははは…」

 滑川教授は、ふたたび顔では笑わない愛想笑いをした。そして、照射台の上のマヨネーズを手にして、教授が研究室を出たのは、そのわずか後であった。

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