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二章 第十三回

すると、机を顔に向けブツブツと何やらつぶやいている上山の姿が目に入った、ということのようだ。

『では、夕方にでも…』

 そうぼかして云うと、幽霊平林は格好よくスゥ~っと消え去った。どうも最近、格好よさを意識している消え方のように上山には思えた。

 そして、何事もなく夕方の退社の時刻を迎えた。上山には、今日は充実した一日だった…という満足な気分が心の片隅にヒタヒタとあふれていた。というのも、ようやく岬と亜沙美の披露宴の原稿がスンナリと読めるようになったからだった。これで晴れの門出の当日は恥を掻かなくても済む。そう思うと、なんとなく満足感があふれてきたのだった。椅子を立つとき、上山は危うくかばんの中のハンカチのことを忘れるところだった。ハンカチに包んだ土を、これから滑川なめかわ教授の研究所へ持っていかねばならない。そう、幽霊平林にも云っていたのだ。つくだ教授と違い、滑川教授は研究所へ籠り、寝起きしているから、訪ねれば十中八九いることは疑う余地がなかった。

 足ばやにエントランスを出ると、上山の足は速まっていた。右手のかばん、左手は歩を進めるにつれ、ただ軽く振るだけである。しかし、ふと上山は想い出した。幽霊平林を呼び出す手法のことである。約束では、首ではなく左手首をグルリと回せば現れる、という手筈てはずだった。上山は歩きながら、手首をグルリと回した。たちまち、スゥ~っと幽霊平林は現れ、上山の横に並んだ。

「その後、どうなんだ?」

『どうなんだ、ってどういうことです?』

「だから、休める…いや、止まれるのか、ってことさ」

『ああ、そのことですか。止まれませんよ、ずっと…』

「完璧に故障だな…」

『ええ、完璧に。…って、僕は機械じゃないんですから』

 幽霊平林は、少しねた。

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