二章 第二回
「照明山、舞台寺、でございますか?」
「ええ…。照らす明るい山、演劇の舞台の寺と書きます。お訊きになれば誰彼となくすぐ分かると存じます。なにぶん、大きなお寺ですから」
「そうでございますか。失礼、致しました」
その後、ふた言み言を話し、上山は携帯を切った。
『分かりましたか? 課長』
「ああ、まあな…」
歩道を歩く間は独りごとを呟いていてもそう目立たないし違和感も周りに与えない。遠目に見れば、呟いていること自体、大して話している風には見えないからだ。上山はうつ伏せ加減で歩き続けた。上山の後方を従って付いてくる幽霊平林は、時折り、左右や前へ出たりしていた。
『課長、道は分かってるんですか?』
「ああ、まあな…。佃教授の家までは車で行こう」
『それで、どうするんです?』
「交番さ。私の閃きは凄いだろ? まあ、交番なら十中八九は分かるから大丈夫さ」
『通り掛かりの人に訊く気恥かしさもありませんしねえ』
「そうそう、そういうことだ…」
上山は、いつも停めている駐車場へ脚を急がせた。幽霊平林も当然、スピードを上げる。今のところ、スピードを上げようとすればスムースにいくし、幽霊平林にとって、これといったゴーステンの支障はなく、一日を終えたときに止まれない、という難点だけだった。
車を飛ばし、取りあえずは車を佃の家近くの空き地へ置いた。周辺は、まだ未開の空き地も多く、態々(わざわざ)、駐車場へ置く必要もなかったのだ。すでに、とっぷりと暮れて、夕闇も薄暗さを増していた。




