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第一回

「何が見えるのかね」

「いえ、口で云えるようなものでは…」

「おかしい奴だ。まったくもって理解に苦しむ。…というか、私には君の云ってることが、さっぱり分からんよ」

 上山保うえやまたもつが妙なことを口にし出したのは、二日ばかり前からだ。それも課長として社長室で業務の打ち合わせ中に云い出したのだから、社長の田丸洋一郎たまるよういちろういぶかしく思うのも道理であった。だが上山には、はっきりと、その形が見えていたのだ。何が見えたのかって? それは、つい先だって交通事故によりこの世を去った田丸工業の有能社員、平林卓ひらばやしたくの姿である。平林は将来が嘱望されていた社員で、アグレッシブに取り組む仕事への情熱は、課長の上山ばかりか社長の田丸も認めるところであった。しかし、上山にすれば、何故、死んだ平林の姿が自分だけに見えるのか、が不可解だった。だから今日も、この社長室へ呼ばれて田丸に詰問されている。

「今日も見えている…と、そういうことなんだね?」

「ええ、まあ…」

「はきつかん男だ。はっきりと云いなさい、はっきりと…。これじゃ私の方が気になって変になるよ。確か二日前だったね? 『見えませんか?』と、急に云い出したのは」

「はい…」

「昨夜も眠れんかったんだ。こりゃ君のせいだぞ」

「どうも、すいません…」

「それで、その三角頭巾を着けた白装束の平林君は、今日も見えるのかね?」

「はい、社長の机の上で胡坐あぐらをかいております」

「なにを馬鹿なことを! 今この室内にいるのは、君と私の二人だけじゃないか。冗談は大概にし給え!」

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