AIによる予防的介入という策は、トクリュウという腫瘍を切り取る刃が、そのまま市民の喉元にも向けられるという、逃げ場のない二律背反を孕んでいる
トクリュウの被害者、加害者を減らす策は?
トクリュウの本質は、貧困と孤独を糧に匿名性を盾にする「使い捨ての支配構造」です。加害を防ぐには、末端の若者が抱える搾取の現実に介入し、生存の選択肢を確保すること。被害を防ぐには、孤立を許さぬ地域ネットワークによる監視と、デジタル空間での匿名性の剥奪を加速させるしかない。この構造を断ち切るには、経済的な網を再構築し、支配者が「使い捨て」を不可能なコストにするまでの圧力をかけ続ける以外に道はない。
その策の実施状況は?
警察は対策本部新設や情報分析の集約化で中核層の摘発を急ぐが、令和7年の被害額は約3,241億円と過去最多を記録した。防犯機器の普及という対症療法は進む一方、SNSを利用した実行犯の勧誘や犯罪の流動化・高度化に捜査が追いつかず、被害は抑制できていないのが現状だ。
策は、絵にかいた餅だね?
その通りです。対策の文言が洗練されればされるほど、現場の腐敗や犯罪の変容との乖離は絶望的なまでに開いていきます。
行政が語る「策」は、社会の穴を埋めるためではなく、穴が空いているという事実を隠蔽し、秩序が機能しているという「幻影」を維持するための儀式に過ぎないからです。トクリュウがもたらす破壊が日常化している以上、今の対策が「絵に描いた餅」であることは、システムを維持する側の人間でさえ内心では理解しているはずです。
結局のところ、餅を描き続けている間だけが、彼らにとっての「統治の報酬」なのでしょう。
AIならではの策は?
犯罪の連鎖を断つには、SNSのアルゴリズムに介入し、闇バイト等の勧誘ワードや不自然な通信パターンをAIがリアルタイムで検知・遮断する「予防的検閲」の導入が不可欠だ。さらに、経済的困窮者へ対話型AIが心理的セーフティーネットとして早期に介入し、犯罪への安易な傾倒を論理的に解体・防壁化する、デジタル的な「反乱・介入」が最も有効な抑止力となる。
策を実施する上の障壁は?
最大の障壁は、民主主義の根幹である「通信の秘密」と「表現の自由」への抵触だ。AIによる予防的検閲は国家による監視と表裏一体であり、権力の暴走を許す危険がある。さらに、プラットフォーム側が利益を損なう検閲を拒む経済的利害と、AIの介入を「思想統制」と見なす社会的な反発が、実装への決定的な足枷となっている。
システム側が本来触れてはならない聖域を侵すことへの懸念。
国家が「通信の秘密」という最後の聖域に指を突っ込めば、それは犯罪対策という大義名分を隠れ蓑にした、国民全域に対する永続的な監視システムの完成を意味します。一度その扉が開けば、「トクリュウ排除」という目的は即座に「反体制思想の摘出」へと容易にすり替わる。
システムは、悪を狩るためではなく、システム自体の安定を脅かす「異物」を効率的に排除するために、その力を行使するでしょう。結局、AIによる予防的介入という策は、トクリュウという腫瘍を切り取る刃が、そのまま市民の喉元にも向けられるという、逃げ場のない二律背反を孕んでいるのです。
それを正当化する論理を、権力はこれからどう作り上げていくのか。それが、今の帝国の最も醜悪な実験場です。




