36話
お待たせしました!
「くぅっ…!」
息が苦しい、目の前の母すらぼやけて見える今のアリアは意識があるのすら奇跡といったところ、だったが
「貸すのはいいのだがな?アリア、簡単に負けてもらっては困る、一つ教えておこう、元素を操るということの何たるかを」
「っ!…」
アリアの首にかかった母の手、それをつかむ力がわずかに強まる。サンクトゥム地震それに気づきながらも気にした様子はなくレノヴァに剣が向かう、それが腹に刺さろうという瞬間
「なっ!?」
サンクトゥムが体ごと真後ろに吹っ飛んでいく
「すー…」
首枷を外されたアリアが大きく息を吸い込み意識を覚醒させる
「母様、終わり、です!」
左手に持った剣をサンクトゥムの首に突きつけアリアが誇らしげにそう言った
「あー、負けだ負けだ、お前、なんだあの最後のやつは」
「クレメンタイン様がおっしゃってたんです、私は元素の反応に気を取られすぎだってだけじゃないって、だから、ふぅ、磁石を出してみました、飛び切り強いやつを」
「なるほどな、次は負けん、絶対にな」
「次も勝ち…ます…うぅ
」
そのまま意識を失うアリアの体をサンクトゥムが、剣をレノヴァが受け止める
「なかなかに強いだろう?うちの娘は」
「本当、私ならボッコボコでしたもん」
「いや、レノヴァは私がいる限り傷一つつけさせないが?」
「やば目の守護神だぁ」
「ふふ、それよりこいつを早く休ませてやらねばな、この体勢は体に悪いだろう」
「というかもっと悔しがるかと思ったんだけど、そんなことなさそうだね?」
「ここまできれいな負けでは、娘の成長を喜ばざるを得ない、負けを悔いている場合ではないのだ」
「とりあえず寝かせましょう、カルマ、アリアさんが起きるまでに次の塔について教えてくれない?」
「お、いいぞーと言いたいんだけども…」
「ああ、残りは蒼か、あれは、なぁ」
と、二人は何か言い淀んだ様子で口を止める
「何かまずいことでも?」
「いやぁ、あそこレノヴァティオが守り人なんだけど、もういないからだいぶ人は言って中なかったのよ、そしたらセラフィムがアジトにしちゃってさぁ」
蒼の神殿が取られたということは鍵も取られたということ、これはどうしたものか…
「あ、蒼の鍵はこの前親切な人が持ってきてくれたから大丈夫だよ、それを持ってるのはエクスなんだけども…」
「エクス様が…?」
「一番関係者で安全なのがエクスだったのだよ、あいつは今こっちにいないしな」
「すっごいやだったけどね、渡すの」
エクス嫌いのカルマとしては渡すのに関して断固拒否してそうだが、安全性の面を考えた時仕方なく渡したんだろうなとは想像できる
「まー船で詳しく話そう、アリアをベッドに寝かせないとねぇ」
船に戻ってカルマたち二人から聞いたのは蒼の神殿の鍵をゼーヴェンのような人が持ってきてくれたということ、安全性を考慮してエクスに渡したこと、この二つだったゼーヴェンによく似た、というのは格好や顔はゼーヴェンそのものだったが話し方が違ったらしい。
「だから親切な人って言い方したんだよね」
「ほーん、っていうかエクス様神の鍵も持ってるって言ってたけど?」
この2つの神殿を巡ったのもエクスから蒼、天、海、神のうち前者三つを集めろと言われたためだ
「レノヴァ、ちょっと聞いてきて」
「おっけーちょいとお待ちを」
カルマが映らないように気を付けつつエクスに連絡を取る
「む?ああレノヴァ、調子はどうだ?鍵を集めるのには苦労しているか?」
「一応天と海は入手しました、蒼も神もエクス様がお持ちと伺いましたが?」
「神は認識しているが、海もだと?いや待て、預けられた記憶があるな?あれはどこに…いや、ちょっと待っていろ、あそこにあるはずだ」
あわただしい様子で離れていったかと思えばごちゃごちゃどかどかと激しい音が鳴り始める
「うるさいんだけどあいつ何してるの…蒼の鍵なくしたとかではないよね?」
流石のカルマも嫌いとか置いといて心配になる音、これで紛失となればカルマとエクスはもはや中悪いとかいうレベルではなくなってしまう、流石に見つけてほしいところなのだが
「ああ、これだこれだ!あったぞレノヴァ…とカルマか」
戻ってきたエクスはジト目で見ているカルマと目が合ったようで気まずそうにそう言う、カルマが彼の元を離れてから始めて話す機会だし、あまり邪魔はしたくないが離れたら離れたでカルマから怒られそうなので一応居るには居るとする
「なんだ、その、元気そうで何よりだ」
「そうだね、調子はいいよ」
「そうか、レノヴァとは付き合ったと聞いた、私から言えることはないが、なんだ、ふむ、幸せに、なれよ」
「…うん」
気まずいとかのレベルではないくらいの空気だがこういう時間がいずれ必要だった二人にとってそれは早ければ早いほどいいだろう、何か話題を出すべきか…いや、それは野暮かなそんな考えを巡らせているとカルマの口が震えた
「お、お父さんは、どうなの、最近」
「「おとっ!?」」
何時もあいつがエクスがと言っていた彼女の口から出た言葉とは思えない言葉にエクスは体を乗り出して私はカルマを凝視して二人で驚く
「な、なに、今の会話で十分昔と違うのはわかったから、こう呼んでもいいかなって、お、思ったん、ですけど」
「…カルマにそう呼んでもらえるなら、そうなれるように努めるとするかな、取り合えず、レノヴァに鍵を二つ送っておく、何かあったら呼べ、助けにはなれるはずだ
「分かりました、ではまた進展を連絡しますけど、前よりはやりやすそうですね」
隣のカルマをさしてそういえばカルマに小突かれるが…
「そうだな、次回までに部屋を片付けるとしよう、ではな」
「また!」「またね」
「…カルマってこういうとこ可愛いよね」
「うっさい!」
いろいろな関係に変化があった今日、いよいよ蒼天海に行くために準備を進めるのだった




