SS 第7話 作戦会議・反省会
翌日。
ローズガーデンの喫茶店。
いつものように、セリーヌ、リュカ、リリアの三人が集まっていた。
「それで?」
リュカが身を乗り出す。
「作戦はどうだった?」
セリーヌは大きくため息をついた。
「聞いてくださいよぉ……」
三十分後。
一部始終を聞き終えた二人は、揃って固まっていた。
「…………」
「…………」
そして。
「なんでだよ!!」
リュカが思わず机を叩いた。
「鈍感にも程があるだろ!!」
リリアも苦笑する。
「流石の私も予想外でした……」
セリーヌは肩を落とした。
「先生……」
「新しい服を見て、『いつもと違う服だな』って言ってくれたんです」
「そこまでは良かったんです」
「でも、夕食のあと急に、その服を買った理由を語り始めたんです」
二人は嫌な予感がした。
セリーヌは少しだけアデラーンの口調を真似する。
「『そうか』」
「『新しい服を買った理由が分かった』」
「『セリーヌにも、気になる人ができたんだな』」
「『身だしなみに気を遣うようになったのも、その人のためなんだろう』」
「『よかったら今度紹介してくれ』」
三人の間に沈黙が流れる。
リュカは額を押さえた。
「いやいやいや……」
「好きな人が目の前にいるのに、それ言うか普通!?」
リリアも苦笑する。
「先生らしいと言えば先生らしいですけど……」
「ここまでとは思いませんでした」
セリーヌは机へ突っ伏した。
「心が折れそうです……」
リュカはぽんと肩を叩く。
「元気出せ」
「俺も昨日、帰ってからリリアに説教されちゃったよ」
リリアはじろりと兄を見る。
「それは兄さんが悪いんでしょ」
リュカは苦笑しながら頭を掻く。
「……ごめんなさい」
「分かればいいんです」
リリアは紅茶を一口飲む。
しかし。
リュカは突然、にやりと笑った。
「だが!」
「俺は新たな作戦を思いついた!」
二人が嫌な予感を覚える。
「その名も――」
一呼吸置いて、高らかに宣言する。
「夜這い作戦!」
「却下です!!」
リリアの声が喫茶店中へ響き渡った。
「兄さん!」
「全然反省してないじゃないですか!」
「えぇっ!?」
リュカは肩をすくめる。
「いやいや!」
「冗談だって!」
「笑いを取ろうと思っただけだ!」
リリアは腕を組み、じっと兄を見つめる。
「笑えません」
「家へ帰ったら覚悟してください」
リュカの顔がみるみる青ざめる。
「えっ」
「また説教?」
リリアはにっこりと微笑んだ。
「説教だけで済むと思ってるんですか?」
「ひぃぃぃぃっ!!」
リュカは頭を抱えて悲鳴を上げる。
その姿を見て、セリーヌは思わず吹き出した。
「あはははっ!」
リリアも堪えきれず笑い出す。
「兄さんは、本当に懲りませんね」
三人の笑い声が喫茶店いっぱいに響き渡る。
今日も魔剣流道場は平和だった。
一方その頃。
「……くしゅん!」
魔剣流道場では、アデラーンが一人大きなくしゃみをしていた。
「風邪……ではないな」
首を傾げながら湯飲みを手に取る。
自分が恋愛作戦会議の話題になっていたことなど、知る由もなかった。




