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芸能界になろう!  作者: いでっち51号
~みんなの芸能人~
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40/40

~第4幕~

 一般人の声なんて無視すればいい。芸能人はこの業界へ入って来たときに先輩からそう教わると言う。しかし、だからって何でも許される訳でもない。如何に多くのハートを集めるのか……客観的に挑み続けなければならない。



 ドロップアウト5章は2名のキャスト変更をおこなう。芸能界を引退した山田エヴァ万桜に代わりロシアと日本のハーフタレントにして実は役者でもある梅本ヴェラが如月衿朱役に牧野役も担う事となる。梅本は山田と瓜二つと言ってイイほどの顔立ちでこのキャスト変更にもの申す人間は広いネットの海でもほとんどみられなかった。



 ただ山崎生吹については別だ。



 前任者の奥沢芽衣は芸能人であり続けているし、韓国で何かをしている。



 批判の矛先は当然のように奥沢にも向けられた。



 でも、当の本人は韓国で雲隠れをしているような状態。



 山崎生吹のキャスト変更を巡る論争はドロップアウトの持っているトレンドを皮肉にも歪に盛り上げることとなる。



 矢面に立っているのは演じ続けている中下すず。



 彼女はこの論争に対して無反応を通そうとしていた。でも、チャイルドメタルというグループの中心にいてグループそしてそのカリスマであった彼女はどこの誰のコメントだか分からなくたってその賛否をチェックする癖があった。勿論、讃嘆するコメントに目を通すが厳しいコメントにも同様。そのストイックな姿勢こそが彼女の素晴らしいスタイルだと紹介される動画だってある。



 逃げない姿勢こそが彼女の持ち味なのだ。



 その彼女は5章の撮影クランクアウトを控えて倉木リアナとやっているホットキャスティングの収録に臨んだ時のこと。



挿絵(By みてみん)



『そろそろこの生中継収録も終わりの時間となりました。少し残り時間に余裕があるけど、すずさん、最後に一言をどうでしょう?』

『そっか、ちょっと時間あるのね。真面目にいい?』

『んっ? すずさんっていつも真面目じゃないの?』

『そうね。うん。そのつもりだけど、今日は最後に本気で話したいと思って』



 いつもと違う雰囲気はすずがスタジオに入ってきた時からあったと言う。でも、番組はいつも通り進行していた。神泉組面々の魅力をすずはその“最後の数分”まで語り尽くしていたし、そのテンションが何か違うものになった訳でもない。ただその時間を確実に空ける為に。



挿絵(By みてみん)



『あの……こういうことは話さない方がいいって言われるのだろうけども、私は何事もいい加減に済ませることが大嫌いなので話します』

『うん。そこまですずさんが言われるのなら、みんな、真剣に聴こう!』

『ドロップアウトの山崎生吹役は伊達監督、伊達社長よりお願いがあって挑戦をすることになりました……映画「M」であんなにも評価して貰ったけど、だからって自分がすごい役者になったなんて思わなかった。この役者の世界はどれだけ演じきったって、ゴールなんてものはない。次の作品がある限りはそこに向けて全力で頑張る。支持してくれる人がいるなら、しんどくなってもまた頑張る事ができる。支持できない人達が無理に支持しなくたっていい。でも、支持したいと応援してくれる人たちの人格や存在を否定しないで欲しい! どれだけ私の事が憎くても、それだけはやめてください! お願いします……』



 すずの魂の叫びだったと言えよう。その心は彼女がチャイルドメタルにいた時からあったものなのかもしれない。この模様はカメラにも収められて動画として投稿されもした。泣き崩れるすずを介抱するリアナの絵が世間に拡散される。



 元々すずの山崎生吹役を支持していた者たちは自分たちをネット上で攻撃してくる支持しない者たちへの言論を強めた。



挿絵(By みてみん)



『日本を離れて日本がどうなっているのか、私にはわからなかったけども、山崎役の中下すずさんを巡って彼女が心を痛めていたニュースを観ました。申しわけない思いもあったけど、私もドレイクで“新しい山崎生吹”を観させてもらい、私以上に魅力のある山崎生吹だと感じました。私がやる山崎生吹が好きだったとする人たちにも感謝したいですが、その私が認める私以上の山崎生吹がいま、ドロップアウトっていうドラマで暴れている。どうか私と一緒にそれを楽しんでゆきましょう。私がやっていた山崎生吹は彼女に進化して受け継がれています。楽しんでね。韓国から応援している』



 奥沢芽衣の動画投稿。そして投げキッス。もはやこれはトドメの一撃。



 この動画投稿から間もなく奥沢芽衣が韓国にファンクラブを設立して、韓国を拠点としたムーンライトの活動を展開してゆくと発表。彼女の映画監督としてのデビュー作はなんと韓国映画になるのだ。



 ドロップアウトというドラマはこうしてまたも世間の話題を掻っ攫う。




 でも、それで終わりではない。




 クリスタルエデン社長室。椅子に深々と腰掛ける賢治はウィスキー片手に寛ぐ。ここで相談を受けることになっていた。



「失礼します」

「失礼します」



 入ってきたのはホットキャスティング公式放送でタッグを組んでいる中下すずと倉木リアナ。すずがここにやってきたのはドロップアウトの山崎生吹役を賢治から打診された時以来。そのときは賢治からの呼びだしだったが、今度はすずがリアナと一緒に申しこんだ。



挿絵(By みてみん)



「いらっしゃい。コレ、飲む?」

「いらねぇーよ! テメェと間接キスなんて御免だよ!」

「リアナさん、言い方がきつい……」

「まぁ俺と彼女はそういう関係だから。気にしないで。それで話っていうのは?」

「監督に挑戦したいなと」

「ほう。コレ、飲むか?」

「いりません。私も貴方と間接キスしたくないです」

「嫌われているなぁ。まぁいいけど。何でそういうことしたいと?」

「やってみたらと勧めたのは私です。ホッキャスの収録後に彼女が毎日欠かさず書いているノートをみせてもらったのですが、凄く明確に全体像をまとめていて。特にドロップアウトの収録を臨むにあたってのまとめが凄くてね。ドラマの台本よりもイメージが膨らむ内容だったのです。今日は実物も持ってきています」

「あーいいよ。そういうのは俺も『M』の時にみせて貰ったよ。そのときに俺が言った言葉を覚えていたってことか……」

「はい。だから、本当に挑戦するかどうか決める前に聞いてみたくて」 

「はい。どうぞ」

「私に『監督やってみる?』って言われたのは冗談? 本気だった?」



 賢治はウィスキーを口にする。返事は逆に問いとして返ってくる。



「すずちゃんはそもそも俺を何の人だと思っている?」

「えっ?」



 すずは真っすぐに生きてきた人間だ。その彼女からしてここでどう答えていいものか悩まない訳がない。でも、彼女はその言葉を紡いでだした。



「アル中」



 その場でその場が凍りつくかと構える。いや、凍りつかない。リアナも賢治も爆笑しだしたのだ。



「あの……何か可笑しかったですか?」

「いや、いいなと思って。リアたんも笑わせるなんてたいしたものだ」

「あっはっは! いや、私はみんな、アンタにツッコンで欲しいから」

「ごめんなさい、話が逸れてないですか?」

「いや、逸れてないよ。でも、そうだね。さっきのすずちゃんの問いに答えるのなら、エンターテイナーだと言う話になる。根底はお笑い。コメディ。その上で俺はこういうキャラクターを通している。ドロップアウトで蒼月さんや相葉さんと共演してさ、お芝居が上手っていうところ以外に何を感じた?」

「…………本当の姿がみえない。何を考えているのか分からない」

「それだよ」



 賢治は指をパチンと鳴らす。



「いくら才能があっても、見え透いたものをやるようだと飽きられるものでね。悟られないこと。これが我々に最も求められる一芸だ。君は真面目さんだから。多分、映画をつくっても真面目に綺麗な物語と綺麗な映像を作り上げるだけだ。そう俺は思っていたけど、山崎生吹という能力が君に宿ってひっくり返ったな。長い前置きになったけど、エンターテイナーとして覚醒する未来もあるならば、本気だったよ。君の本当の夢はまだあそこにあるものなぁ。ふふっ、それは横のお友達にも見えていない。いよいよ面白くなってきた。それで? どういう映画を作りますか? 中下監督殿?」

「ソラさんと私が主人公の話」

「興味深い。聞こう」



 賢治は手に持っていたウィスキーを机の上に置く。



 そして組んだ両手の上に顎を置いて微笑む。




 映画「ギャルズ・リターン」のプロジェクトはこうして始まる――




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― 新着の感想 ―
> 映画「ギャルズ・リターン」のプロジェクトはこうして始まる―― これはwktkが止まらない。 この後が愉しみ過ぎる!!!!!
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