~第8幕〜
大手新鋭芸能事務所である「ムーンライト」はもともと虚・ミゼラブルに所属していた闇岡牛仁朗と闇岡月巫女の姉弟が虚・ミゼラブルの子会社でありつつも、独立する目的で興された芸能事務所だ。
大元である虚・ミゼラブルはVシネマの製作で80年代後半~90年代中期を席巻させた芸能事務所兼映像製作会社だ。当時ライバルとしていた大手事務所のタケシキャッスルと仲が悪いワケでもなく。もっと言えば同じ業界の各社と連携して業界を盛り上げていったカリスマ会社だ。いっときはあのギャロップすらも抜いて業界トップであったとみる者もプロや一般人の多くにもいる。そのなかで闇岡姉弟はホラービデオの製作に長けており、彼らがリリースした「本当の本当に怖いビデオ」はレンタルビデオ業界を圧巻させるほどの業績を残す。そのまま虚・ミゼラブルの幹部に昇進していくかと思いきや独立したいと言いだしたのだ。
「言ったのは牛仁朗君じゃなくて月巫女ちゃんだったか」
虚・ミゼラブル本社で社長の大浜と向き合うのは同社のいまや看板タレントの弥生双吾。彼は昨年の日本映像アカデミーで主演男優賞受賞。その勢いで映画は勿論、大手テレビ局のドラマやバラエティにも数多く出演するようになる。彼の一挙手一投足は今や馬鹿にできないものだ。
だが大浜が彼とアポを取ったのはそれだからでない。
彼はクリスタルエデンと繋がりを強く持っていた。特に賢治と共同代表である野田栄一郎とはVシネマでの共演が多くあり、公私ともに仲良くしている親友だ。クリスタルエデンと虚・ミゼラブルのパイプ役と言ってもいいだろう。
なんせ主演男優賞を獲ったのは伊達賢治&野田栄一郎監督作品なのだから。
「独立したいと話してきたのは牛仁朗だ。月巫女が言い出しっぺだって言うのはあくまで噂でしかないよ。双吾さん」
「ふふっ、この世界にいると噂のほうを信じたくもなるのですよ。社長さん」
「タレントの立場で?」
「ええ。役者をやっていたら、何が本当の自分かわからなくなる。でも世のなかは止まっちゃくれない。冷静に謙虚にみるのがまず1番です」
「本題に入ろうか。双吾さん、例のムーンライトの件とヴィベックスの何だったかな。ポンコかポンポンってコと綺羅めくるさんが喧嘩した件でドロップアウトの出演辞退が増えそうになるだろう。双吾さんは良くても我が社が難しいっていう話になるだろう。その事を伝えにきた」
「前田朋子ちゃんね。ポンズって歌手名だったかな。今流行っているコじゃないか。覚えなきゃダメですよ。社長さん」
「話をそらさないでくれ。深刻な事態なのだぞ」
「話をそらしているのはそっちだろうが」
「何?」
弥生は片手に持っていたスマホを大浜に見よと見せる。
液晶に映っているのはヨウチューブの動画。そこに映るのは記者会見を開いている山田エヴァ万桜だ。
『ドロップアウトの撮影にはまったく問題ありません。蒼月さんもすごく楽しく臨まれていましたし、鷹山役を本当はしたいのだと思います。でも、大人の事情でソレができないなんていう話にするのであれば、それはそんなことをさせる大人がおかしい。具体的なことは伏せますが、本日私とマネージャーに対してドロップアウト出演を見合わせるよう、通達が届きました。役者としてとても演じ甲斐のあるお仕事をさせて貰っているのに、それを訳のわからない都合で奪う事に対して同じ役者として憤りを感じます。どうしてもそうさせるなんて言うならギャロップ退所や独立も視野に入れ、自身の進退を検討しております。しーちゃん! めーちゃん! 私は現場で待っているからね!』
山田エヴァ万桜が個人で開いた記者会見だと言う。
「何だよ……これ……まずいぞ」
「まずい? 何が?」
「いや……その……」
「社長。いつの時代にも時代っていうモノには流れってヤツがある。そこに逆行するのもまた我々エンターテイナーの腕前だが、ダサく映るものはどれほど格好つけたって駄作になるだけですぞ? 貴方も闇岡君も賢治君と実際に会って話をしてみたらどうですか?」
想像以上に伊達賢治は芸能界四天王の一人になっていた――
双吾さん&エヴァマオさんが大活躍の巻でした(#^.^#)
Vシネマっていっときは地下文化でありながら映画と同じぐらい人気あるんじゃないかっていうコンテンツだったらしく。まぁ令和の今からすれば昔話ですけど。なんかそういうのを考えて虚・ミゼラブルっていう会社を考えました。さて。ダテケンのターンがはじまる。刮目してみよ。次号(#^.^#)m9ドーン!!!!




