第2話 わたしはだあれ?
彼女は、小手指眸。
異世界感知インスピレーションの持ち主で、小鬼界と、人界を行き来可能なヒトだった。
ある日、人界記憶抹消の更新期が来たので、過去の抹消を眸の名前以外は処理して、正真正銘の小鬼に登録し、インピーアの名前を自身に刻みつけたのであった。
そんな登録手続きの記憶さえも忘れてしまっていたインピーアは、人界ではエネルギー摂取の為に働いていた。
人間関係決裂術を施して、決裂が発生すれば必要不可欠のエネルギーを吸収できる。
もし、エネルギー摂取が不能になれば、小鬼の姿のままで化石状態になり、溶解していくのである。そうならないように、日々、人類の仲を引き裂いて働いているのだった。
そんなある日、少年との不思議な出会い方をしたのであった。
少年、望月清彦との邂逅。それが、小鬼の可視能力者で、エネルギー摂取現場の目撃者だから、契約せざるを得なかった。
少年が、眠っている間は、契約主の小鬼は人体に乗り移り、操れる。姿を視られた条件として、ケースバイケースの関係になってしまったのだ。
それからと言うものの、望月清彦が普通に学園生活を送れない日々が、毎日毎日続いていくのであった。
怪物化し討伐されたクラスメイトの残像がやっと消え去った頃、その怪物化の記憶を書き換えられた人界のヒトは、ハプニングなんて一切なかったような涼しい顔で、生活していた。
清彦には、ハプニング自体体験した記憶がない。ヒトの思い出は、重苦しいもの。メモリーが軽量化すれば、考える必要もなくなるわけだ。
今日も又、知人が小鬼関連の巻き添えになるのなら、清彦の記憶はリロードされる。その繰り返しになるか否かは、もうさだめに頼り、従うしかないのだ。
西暦2021年。
未来都市化した……つまり、機械の発達が急変するくらい便利化した、ずっと前から誰も彼もが予想した世界へといかないのが現実だった。
確かなのは、人界(地球世界)の裏世界へ往復旅行が可能なヒトが増加しだしたことだ。
裏世界とは、人外生命に転移し生活する技術と、力を利用してヒトを服従するのも可能な魔法的開発が推進していた次元空間だ。
その固有世界を《小鬼界》と呼び表していた。
一体いつから存在した世界かなんて、知るヒトすらいないのだ。
人工的世界なのは明白な事実。
ヒトが出入り自由なのはいただけない。何にせよ、怪物……化生に転身してしまわなければならない生活空間だ。創世主の目的理由すら追及もなくなるほどに時間はかかりすぎた。
化生になったかならないのヒトは、ヒトの生まれた空間に戻っても、住むのと寝泊まりは出来る。しかし、飲食可能でも栄養は得られない。得意とする魔法的な法術で施すと、エネルギー(栄養素)が摂取出来る。これが人界においての条件、【等価交換】だ。
活動エネルギーが放出されたら、得意法術で働く。ヒトが齷齪働いてお金を稼ぐのとほとんどまるで同じ。
小鬼族の肉眼視能力者狩り。これが2020年代では考えられない怪奇及び猟奇的現象で、ヒト社会に反映されていたのだった。
清彦の中学二年からの知り合い、沢霧リノ。彼女は、カレシがいない。可愛い系女子には入る小顔美人だが、存在が薄いほうだ。
存在感薄いだけで、カレシ一人いないのは、もったいない話。
でも、少女には意中の清彦がいるから、それはそれで良いのだった。
ポンッ。
清彦の右肩に衝撃を与えたリノ。
「わっ!! おう、なんだ。リノか? 姿見えなかったからビックリしたぁ」
「存在に気づいてよ。わざとらしいわぁー」
「お前、薄いもんな、存在感」
「いちいち気にしていることを口外しないでよ!!」
「だってよ、もうガッコの皆んな、知ってるし」
「ふーんだ……」
『清彦のモノローグワールド』
(今日はやけに大人しいな)
「あほ。ただな……この女、以前も右肩を叩いた常習者だから、気が乗らないだけだ!!」
(別にインピーアの存在を知ってるわけねえだろ)
「だと良いんだが、アタイは、気が乗らん!!」
二人のモノローグ世界は、学校の授業終了まではお預けになった。リノとの帰宅から途中で別れるまで、インピーアとのやり取りは再開された。
途中で別れたリノは、携帯電話で歩きながら通話しだした。
「もし、うん……あたし、リノ。今日も何も変わりなかったわ。又、『そっち』に行って過去データダイアリー付けとく?」
リノの相手側からの返答。
「ダイアリーは、フェノメノンケースが 起こる直前に付けるものだ。今は、それはまだ必要ない」
「わかった。じゃあ、あたしの分身『α(アルファ)バディ』に任せるわ。じゃ」
「αバディは、小鬼には悟られないようにな。気を緩めず行動せよ、以上だ」
相手との通話が終わり、又別の通話相手にアクセスしだしたリノ。
「もし、リノよ。α(アルファ)、抜からないで……フェノメノンの記述は、絶対よ!!」
「お姉さま、任せてください。必ずやデータは確実にお届けしますから……」
某機関。もとい、小鬼データ収集所。そこの所長の男、齢四十にして清彦関係の小鬼事件の調査を徹底していた。
「眸、お前の記憶改変した連中の鼻を明かしてやるからな、絶対にだ……絶対!!」
にやけながらぶつくさと呟く所長だった。
所長室。左右の手の指を絡めたまま自身の顎に乗せ、考え事をする所長。
室内に客人が入ってきた。
「ご多忙の所、失礼。数日ぶりです、小手先帝尚さん」
「……おう!! 君津クンか。元気だったか? 小鬼関連は調査続行なのか?」
「今、わたしの妹分のJKに任せています。なあに、いざとなればヒューマノイド小鬼【クイックスレイヤー】が眸様を救出します」
「クイックスレイヤーなどと……そんな物騒なモノ使わなくとも良いのに……」
「QSコード101〔αバディ〕。彼女は、屈指に入る小鬼駆逐者ですぞ。舐めてはいけません!! 小手先室長、あなたは、QS開発決議案の議長だった方です。依存はありませんね」




