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雨に触れる

あなたは『雨に触るのが好きな』蘇芳のことを妄想してみてください。 http://shindanmaker.com/450823


という診断メーカーのお題で書いてみました。

短いです。蘇芳のつぶやき。


蘇芳と夏世、つきあい始めて少しした頃のつもりで書いてます。





「蘇芳、濡れちゃうよ?」


どんよりとした鉛色の空からぽつりぽつりと落ちてくる雨を見上げていると、誰よりも大事な人の声がして視界が大きな赤い花柄に遮られた。夏世の傘だ。


「あ、うん、ありがとう。―――なんとなく雨に触るのって、好きなんだ」

「そうなの?」


そういって僕をのぞき込む夏世の瞳は「どうして?」と聞いてきているものの、反面、「言いたくないなら言わなくてもいいのよ?」と、控えめだ。

そんなふうに気を使える彼女の肩を抱いて、二人で赤い花を見上げる。相合い傘って、遮るものは何もないのにどこか二人だけの世界に切り離されてしまったようだ。


「別にたいした理由じゃないんだよ」



でも、話せないな。

そんな考えをこめてにっこり笑ってみせると、夏世も「そっか」って顔で笑ってみせて、その話題はそこでおしまい。

こんな空気感が好きだ。

他愛もない話をして、微笑み合って、なんとなくわかり合っちゃったりして。

彼女が好きすぎて、たまらなくてその髪にキスをした。





その間もポツンポツンと雨が傘を叩く。

そっと傘から手を伸ばすと、掌に冷たい雨の感触が弾ける。

ポツリと落ちるその感触は、涙を受けているようだ。

僕は夏世の涙は受けない。というか、受ける必要がないように、彼女がいつも笑顔でいられるように務める。

けれど、心の何処かで彼女の涙を見たがっている、悪い僕もいるんだ。彼女を泣かせて、僕の腕の中に閉じ込めていたい。そんな欲望が。


だから、僕は雨に触れる。

夏世の代わりに空の涙を手に受ける。


そうやって雨の冷たい刺すような感触に頭を冷やすんだ。




こんな気持ち、彼女には話せないね?

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