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爆音戦隊スマイルダンサー ~フリルがなければ即死する系ヒーロー~  作者: 山田りく


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3/5

第3話「ピンクの夜な夜なミシン狂騒曲」

1


ガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!!


深夜2時。

地下秘密基地『ダンス・スタジオ』の一角に、まるで重機関銃のような爆音が鳴り響いていた。

音の主は、桃園結衣スマイルピンクが操る高回転・超振動特殊ミシン『ジューキ・バルカン』である。


「信じられない……信じられないわ……!」


結衣は充血した目で、猛烈な速度でフリルを縫い合わせていた。部屋の隅には、前回の戦闘でズタズタになり、焦げ付いた赤い戦闘服が山のように積まれている。


「なんなのあの男の筋肉は! 普通のポリエステルじゃ烈火の衝撃波ノイズに耐えられないから、チタン繊維入りの超高密度レイヤード・クロスを使ったのに! 1回のサンバで消し炭にするなんて、素材への冒涜よ!!」


結衣の横には、エナジードリンクの空き缶がピラミッドのように積まれていた。彼女は、戦隊の衣装担当であると同時に、世界的な繊維工学の天才である。しかし、烈火という「自傷系筋肉ダルマ」のせいで、彼女のプライドと睡眠時間は日々ゴリゴリと削られていた。


「結衣っち、まだやってんの? お肌に悪いよ〜」

夜食のカップ麺を持ったグリーンが、眠そうに部屋を覗く。

「うるさい! 瞬のテナー音波を逃がすプリーツフリルも、折り目が3ミリずれたらお前のウクレレが暴発するのよ! 黙ってネギでも噛んで寝てなさい!」

「ひぇっ、職人モードの結衣っちマジ鬼……」

瞬が這うように逃げ出した後、結衣は再びミシンに向き合う。


烈火の衝撃波を100%分散し、かつ、彼の激しいステップを邪魔しない、軽くて強靭なフリル──。


「……作ってやるわよ。あのバカが、これ以上血を吐かないで済むような、最高のフリルをね!」


結衣の夜な夜なの戦いは、夜明けまで続くのだった。


2


翌日。市街地にサイレントの新たなる刺客、幹部候補『音喰いオトクイ・ノイズレス』が出現した。

彼が持つ「吸音球」は、周囲の音を文字通り「食べて」肥大化し、あらゆる衝撃波を無効化する厄介な兵器だった。


「ハハハハ! 待たせたな、無音の食いしん坊さんよ!」

傷が癒えきらないまま、烈火がマラカスを手に立ちはだかる。


「「「「変身ダンス・イン!!」」」」


4人は変身し、戦闘が開始される。しかし、結衣の不安は的中した。敵の『音喰い』は、レッドのマラカスの衝撃波を正面からすべて吸収し、さらに巨大化していく。


「フハハハ! 鳴らせ、もっとノイズを響かせろ! それが我が糧となる!」


「お望み通り、特大のアンコールだぜッ!!」

烈火が無理に出力を上げ、最大出力のサンバステップを踏む。しかし、吸収しきれなかった爆音の反動が、ダイレクトにレッドの肉体を襲った。


バリバリバリッ!!!

「ぐわああっ!?」


結衣が寝る間を惜しんで縫い上げた最新のチタンフリルが、レッドの筋肉の熱と衝撃波の前に、またしても悲鳴を上げて千切れ飛んでいく!


「だめ、レッド! 出力を下げて! フリルがもたないわ!」


「ハハ……ハハハ! 下げるかよ! 敵が音を喰うなら、胃袋が破裂するほどの爆音を詰め込んでやるだけだ!!」

血反吐を吐きながら、なおもマラカスを掲げるレッド。


装甲(フリル)はすでに残り10%を切り、次のシェイクで彼の両腕は限界を迎える。


「あいつ、また一人で無茶苦茶を……!」

ブルーがタンバリンで中和を試みるが、敵の吸音結界に阻まれて届かない。その時、ピンク──結衣の胸の中で、何かがパチンと弾けた。


「……もう、限界よ」

ピンクが立ち上がる。そのマスクの口元は、怒りと、職人としての「覚悟」で美しく歪んでいた。


「私の睡眠時間を奪い、私の可愛いフリルをコケにし、その上、私の目の前で勝手に死にかけようなんて……100年早いのよ、この筋肉ダルマァァァッ!!!」


3


ピンクが叫んだ瞬間、秘密基地の博士から通信が入る。

『結衣! 徹夜で仕込んでおいた“アレ”のロックを解除したぞ! 使え!』


「了解よ、博士! ──私の『縫製ソウセイ』を見せてあげるわ!」


ピンクがブレスを操作すると、天空から一本の巨大な銃身が転送されてきた。

それは、結衣がミシンの技術を応用して開発した、ピンク専用の新型音撃兵器『カスタムミシン・ランチャー』だった!


「烈火! そのバカげた筋肉、1秒だけ私に預けなさい!」

放たれたのは、エネルギー化された超高密度繊維の「光の糸」!

光の糸は、自傷ダメージで崩壊しかけていたレッドの全身の筋肉に、凄まじい速度で絡みついていく。


「な、何だこれ……!? 体の芯から、リズムが湧き出てきやがる……!」

「驚くのはまだ早いわよ! 瞬、怜、合わせて!」


ブルーの低音とグリーンの軽快な中音が、ピンクのミシンランチャーの超高周波の駆動音とシンクロする。


ピンクはランチャーのレバーを猛烈に引き、戦場で直接「戦闘服の再縫製」を開始したのだ!


光の糸が編み込まれ、レッドの全身に、これまでとは比較にならないほど巨大で、立体的な、幾重にも重なる『極限吸収・ローリングフリル』が爆誕していく!


「これは……世界中のあらゆる振動をいなす、私の最高傑作の|ドレス(装甲)よ! 烈火、思い切り踊りなさい!!」


4


「うおおおぉぉぉ!!! 身体が軽い! 痛みが……全くねえ!!」


真の無敵と化したレッドが、大爆笑しながら跳躍する。


「おのれ、ノイズのドレスなど、一瞬で喰い尽くしてくれるわ!」

『音喰い』が口を大きく開け、世界中の音を吸い込もうとする。

「喰えるもんなら、喰ってみやがれぇぇぇ! 一撃必殺・スマイル・テイラーズ・シンフォニー!!!」


レッドが、仲間たちの伴奏セッションに合わせ、マラカスを過去最大のスピードでシェイクする!放たれた爆音の津波は、ピンクの新世代フリルによって100%前方にのみ指向され、敵へと収束していく。


「ごふっ……バ、バカな……! 音が多すぎる、消化しきれ……ぎゃあああああッ!!!」


あまりの爆音と笑顔のエネルギーに、吸音球が限界を超えて大爆破。『音喰い・ノイズレス』は、文字通り「お腹いっぱい」になって木っ端微塵に浄化された。


──────


夕暮れの『ダンス・スタジオ』


「ふぅ……。これで、しばらくはフリルの心配は要らないわね」


結衣は、満足げに特製ハーブティーを飲んでいた。しかし、その目の前で。


「いや〜、今回のフリル最高だったぜ結衣! ほら、背筋をこう、バキッと膨らませた時の伸縮性がさ!」


烈火が、またしても上半身裸になり、自慢の広背筋を誇示するために無理なポーズを取っていた。


プチッ、ブチブチブチッ


結衣の目の前で、数時間前に縫い上げたばかりの超高密度フリルが、烈火の筋肉の膨張によって物理的に引きちぎれていく。


「あ……」

烈火が動きを止める。


ブルーとグリーンは、静かに目を逸らして部屋の隅へ退避した。


「……烈、火……?」


結衣のティーカップが、床に落ちて粉々に割れる。

彼女の背後から、サイレントの怪人をも凌ぐ、恐るべき暗黒のたてオーラ(怒気)が立ち上っていた。


「ハハ……ハハハ、結衣、これはその、筋肉が嬉しがって……」

「今すぐそこへ直れぇぇぇ! そのバカな筋肉ごと、ミシンで縫い合わせてあげるわぁぁぁッ!!!」

「ぎゃあああああッ! ブルー! 助けてくれブルー!!」


「無理だレッド。自業自得という言葉を辞書で調べておくんだな」


秘密基地に、敵の襲撃時よりも賑やかな「爆音(悲鳴)」が響き渡る。


スマイルダンサーたちの絆は、こうして一歩ずつ(主にピンクの犠牲のもとに)深まっていくのだった。


しかし、基地のモニターの奥。

迫り来るサイレントの本隊のデータを見つめながら、白衣を脱ぎ、黒いフリルを手に取る博士ドクターの目は、静かに笑っていた。

「……そろそろ、わしの重低音も出番のようだな」


(第3話・完)


『爆音戦隊スマイルダンサー』

──次回は間話、第3.5話「勝率とあん巻き」

ブルーグリーンの静かな夜の回です。

戦え、スマイルダンサー! 明日の睡眠時間は自分たちの手で勝ち取れッ!!!

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