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第一話

 大河家にやってきたのは十歳のとき。八人姉弟の末っ子で、生活するのもやっとの家族のために、私は花町にある大河商店に丁稚奉公に出された。


 大河商店は花町で代々巫女飾りを扱う唯一の商店で、「いかに時代が変わろうとも、巫女が巫女としての本分を忘れないために」と先代たちの意思を継ぎ、花町の古き良き伝統を守りつつもそこに腰を据えることなく、常に未来を見据え、現在を生きる巫女たちから絶大な信頼を受けていた。当主である大河神之助も旦那衆としての器量はもちろんのこと、 その端正な顔立ちも理由の内ではあったが、何より時代が変わろうと巫女の存在の必要性を誰より理解していたし、その灯を絶対に絶やしてはならないと巫女の文化の継承に誰よりも尽力していた人物だった。


 そんな大河神之助を当主とした大河家に私は丁稚奉公したわけだが、何分まだ幼かったので最初は与えられた雑用仕事をせっせとこなしているだけだった。店のことだけでなく、 大河の名がつく雑用ごとならなんでもこなす小間使いとして。できることよりできないことのほうが多かったし、仕事の合間を縫って職人たちの傍でその作業を目で見て試しにやらしてもらっては何度となくドやされていたことを思えば、奉公人としては決して有能な丁稚ではなかったと思う。


 ただそれでも私はくじけることなく、早く一人前になろうと常に努力し続けた。ただの丁稚であるにもかかわらず、じつの子供であるかのように愛情を注いで育ててくれていた大河神之助のためにも、そして本当の兄のように私の面倒を見てくれていた神一のためにも。


 あの時代にして珍しく大河家には子供が長男の神一しかおらず、そのせいもあってか丁種という立場でありながら、私はあたかも彼の弟のような扱いを受けていた。もちろん立場が立場なので学校には通っていなかったが、そのことを除けば他でよく耳にする丁稚の扱いとはまるで違った。身につけるものや部屋まで与えてもらい、食事の際も給仕の役割としてではなく大河家の面々と共に食卓を囲む一人として、私はその席にいた。


 そういった恵まれた環境で私は幼少期を過ごし、着実に大人への階段を上っていった。 幼少期から丁稚として大河家の仕事を手伝ってきた甲斐もあって、本来だったら高等学校に通う年頃には、巫女飾り職人の見習いとして働かせてもらっていた。

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