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太陽王の世界 ―黎明―  作者: 檀徒
◆第三章◆
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79話 地下都市へ

 胸が、何かに締め付けられていた。

 あの2人は不幸だったんだろうか? それとも幸福だったんだろうか? 今となってはもう、俺には分からない。ただ最後のエスタの声が、どことなく嬉しそうに感じたのだけが救いだった。


「こちらの騎士団に巻き添えが出ていないか、被害状況をすぐに確認しよう!」


 皇城のあった場所へ走り出すと、火がついたようにみんなも走り出した。火星の兵士から攻められながら広場へ向かっていたときは時間がかかったのに、同じ道を逆に進むときはあっという間だった。


「カケル殿!」


「みなさん無事ですか!」


「決死隊だけ…」


 地球側の騎士達が指した先には、ぽっかりと黒い穴が開いていた。彼らは絶命し、その亡骸は崩壊に巻き込まれたという意味なのだろう。その隊名の通り、死を覚悟して散っていった彼らは何を残したのだろうか。


「カケル殿、エスバン殿から最期の言葉を預かっています」


「ドラグセン殿! いったいどのような…」


 王立高校で神術講師だったドラグセン=ダブセン一級騎士は、騎士達の間から現れる。その目には確信が宿っていた。


「魂は、因果の基となることを発見したと。そう叫んで彼は散りました。最期の瞬間、彼の体はまるで炎のように…。体を変形させていた火星兵士にも彼の攻撃は届いていて、胴に風穴を開けていました…」


「因果の基…? 魂が?」


「そうです」


 先ほど、俺が到達できなかったところへ、エスバンは到達していた。その差はなんだったのか? それはおそらく、死への覚悟。体が炎のようになっていたということは、加護子化を自力で成し遂げたということか。それが高次加護なのだろう。と言うことは、火星兵士たちはそれと知らずに命を削っていたのかもしれない。


「ドラグセン殿、よく伝えてくれました。ありがとう」


 静かに、強く光る目を閉じてドラグセン騎士は頷いた。





「カケル、この下が」


 ユリカは不安そうに穴に目をやる。


「ああ、おそらく地下都市だ」


「さっきは理論が完成しそうだったの?」


「いや、途中で止まっていた。でもエスバンの辿り着いた答えが、多分理論化の道標になる。そうだ、爺様に連絡しないと…」


「うん、開くね」


 ユリカは簡単に言って、次元扉を再び爺様のもとへ接続した。


「おぅ!? カケル殿、無事か!」


「爺様、申し訳ない」


「どうしたのじゃ」


「エルメスは、自我を取り戻したエスタと結ばれたが、二度と帰ってきません。彼らは皇城へ特攻して、命を燃やし尽くしてしまいました」


「…そうか」


 爺様の横ではトレノが顔を伏せて震えていた。


「すまん、トレノ」


「いいのだ。我にはその未来は分かっていたのだ。それがエルメスの使命だったのだ。我は悲しくなんかないのだ」


 トレノはそう言いながらも、顔を上げると目からも鼻からもいろいろと流していた。


「爺様、エスバンが最期の仕事をしてくれました。高次加護への糸口をどうやら掴んだようです。ドラグセン騎士が教えてくれました」


「ああ! その疎通が最期にわしらにも入ってきたのじゃ! エスバンがやったのは魂の在現化じゃ!」


「在現化!?」


「もともと高次にある魂を低次へ引っ張り出すのじゃ! そうすると高次へ戻ろうとする。それに加護が引っ張られるのじゃろう! もちろん、言葉で分かっていてもわしらにはできんのじゃがな」


「そうか、それが遺跡の巫女の姿か!」


「そうじゃろう、正しく使えば魂の本当の姿を引き出すのじゃろう。じゃが、やり方を間違えれば命の保証はできんのう。火星兵士のようにな」


「では理論を正確に構築しなければ、こちらに戻って来れなくなりますね?」


「そうじゃろう。…ま、待て、カケル殿。早まるでないぞ」


「ああ、分かっちゃいましたか?」


「カケル殿がその危険を犯すことは論外じゃ!」


「でも、誰かがやらねば」


「トレノ、それをやって戻ってこれる確率は?」


「うんカケル、それはもともと、カケルがやることになっていないのだ」


「では未知数ということで。因果律を裏切れる」


「待て、待つのじゃ!」


「大丈夫ですよ、爺様。それじゃ」


 そこまで話して、ユリカが開いた次元扉を俺がかわりに閉じた。振り返ると、周囲に集まっていた騎士達は全員無言で首を振る。どうやら全会一致で否決だ。


「ごふぉっ!?」


 アイデインは黙って手刀を俺の鳩尾に見舞う。馬鹿な考えをするなということだろう。一瞬、意識を失いかけたぞ。


「カケル、それはだめ」


「分かってるよユリカ」


(あと1時間50分じゃ。早まるでないぞ)


 もう、俺の頭の中には理論がほぼ出来上がっていた。だが最後の一欠片、何かがあれば戻ってこれる。それだけでなく、その何かがあればさらに強大な力となるはず。そこまで組みあがっていた。


「危険なことはしないと約束する。さあみんな、穴を降りよう!」


 訝る皆を強引に納得させて、俺は重量軽減の加護を纏い、穴の中へ身を投じていた。ずいぶんと長く続く穴だ。





 1分ほどかけて下降すると、そこには目を疑うほどの巨大な都市があった。地下の空隙に高楼が立ち並び、人々が入り乱れる。空隙の中心には、加護で作られたと思しき擬似太陽が置かれ、内部を温め、光を与えていた。植物は地球以上に生育し、まるで楽園のようだった。しかし擬似太陽からは地上へ向けて一本の線が、ものものしい部品を取り付けられつつ延びていた。


「あれだ」


 マスタは下降中、すぐにその推測を口にした。ただそう言うだけでその意図はすぐに皆に伝わる。あの擬似太陽こそが俺たちの破壊目標なのだ。


「なるほど、あれだ」


 地下都市の端に降りた俺たちは、それぞれ建物の屋上部分に立ち尽くしていた。あの擬似太陽はこの地下都市での生活の糧であり、同時に惑星間大量破壊兵器でもあるのだ。あの加護量は相当なものだが、市民は武器と知らずに加護をあそこへ集めているのだろう。


 このような武器化をせずとも、この地下都市は平和に暮らしていけたはずだ。何故彼らは武器を作り出してしまったのか? 何故、彼らの生活の糧を俺たちが破壊しなければいけないのか? この地下都市、おそらく何万人もの人々の生活を破壊しなければ、兵器の破壊は不可能だ。俺たちはこの地下都市の存在意義そのものを、破壊しなければならない。だがその前に、駆けつけてくる敵を倒す必要がある。


「さっそく来たようだぞカケル」


 アルがそう言って首を向けた先には、火星兵士たちはいなかった。空中を何かが近づいてきているが、妙な形をしたものが羽ばたいている。そしてそれは変形した火星兵士と比べても、とてつもなく大きかった。


「あれは何?」 「八つの首に」 「八つの尾」


 3人娘が顔を歪めながら見つめる先には、見たことも無い生物がいた。


「肌がざわつく。何かの歯車に乗せられた感覚がある」


 ゼルイドが奇妙な感覚を訴えた。歯車、それは因果律の描いた世界。つまりあの生物は因果律接続者、オロチなのだ。


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