98ページ
人はきっと、誰かに救われながら生きています。
大きな言葉じゃなくてもいい。
たった一言。
たった一つの優しさ。
それだけで、生きようと思える夜があります。
この物語には、“運命を書き換える力”が登場します。
けれど本当に描きたかったのは、魔法みたいな奇跡ではありません。
苦しみながらも誰かを想うこと。
忘れたくないと願うこと。
誰かの痛みに手を伸ばそうとすること。
そんな、不器用で優しい人たちの姿です。
もし今、少しだけ苦しくて、少しだけ疲れているなら。
この物語が、あなたの心へ静かに寄り添えますように。
『時雨堂に、雪は降りつづく』
どうか最後まで、見届けてください。
翌日。
凛の状況はさらに悪化していた。
クラスメイトが完全に存在を認識できなくなっている。
椅子にぶつかっても、誰も不思議がらない。
「怖い……」
凛は泣いていた。
雫は必死に考える。
存在を繋ぎ止める方法。
その時。
ふと気づく。
「記録……」
「え?」
「誰かの記憶に残れば、消えないんじゃない?」
栞が目を見開く。
「なるほど……」
存在とは、誰かに認識されることで成立する。
なら。
“記憶”を強く残せばいい。
雫たちは急いで動き始めた。
写真。
動画。
手紙。
凛が生きていた証を集める。
湊も協力してくれた。
「絶対消させねぇよ」
その言葉に、凛は泣きながら笑った。
だが。
その時。
雫の人生の本に、新しい文字が浮かぶ。
『代償対象、変更』
空気が凍った。
最後まで『時雨堂に、雪は降りつづく』を読んでくださり、本当にありがとうございました。
この物語は、“救うこと”について考え続けた作品でした。
誰かを助けたいと思うことは、とても優しくて、同時にとても苦しいことです。
全部を救いたい。
誰も傷ついてほしくない。
そう願っても、現実は簡単ではありません。
それでも、人は誰かを想い、支え合いながら生きていける。
その小さな希望を、この物語に込めました。
雫が最後まで失わなかったものは、“人を想う心”でした。
そして玲たちもまた、誰かを忘れずに生き続けました。
人は、誰かの記憶に残る限り、きっと消えません。
もしこの物語の誰かが、あなたの心に少しでも残ってくれたなら。
それが、この作品にとって何よりの救いです。
あなたの明日が、今日より少しだけ優しいものでありますように。
本当にありがとうございました。




