78ページ
人はきっと、誰かに救われながら生きています。
大きな言葉じゃなくてもいい。
たった一言。
たった一つの優しさ。
それだけで、生きようと思える夜があります。
この物語には、“運命を書き換える力”が登場します。
けれど本当に描きたかったのは、魔法みたいな奇跡ではありません。
苦しみながらも誰かを想うこと。
忘れたくないと願うこと。
誰かの痛みに手を伸ばそうとすること。
そんな、不器用で優しい人たちの姿です。
もし今、少しだけ苦しくて、少しだけ疲れているなら。
この物語が、あなたの心へ静かに寄り添えますように。
『時雨堂に、雪は降りつづく』
どうか最後まで、見届けてください。
「私は、玲にも生きてほしい」
雫は静かに言った。
玲は言葉を失う。
今まで誰かを守る側だった。
自分が“守られたい”と思ってはいけないと思っていた。
透が小さく笑う。
「ほんと、似た者同士だな」
玲は苦しそうに目を伏せた。
その時。
書庫主が咆哮を上げる。
『時間切れ』
深層書庫の床が崩れ始めた。
黒い穴。
その奥には、無数の人生の本が落ちていく。
栞が叫ぶ。
「雫! 再編には“核”が必要!」
「核?」
「あなたが一番守りたい記憶よ!」
雫は息を呑む。
守りたい記憶。
何を選ぶ?
母との記憶?
湊との思い出?
玲と過ごした時間?
一つしか選べない。
選ばれなかった記憶は、消える。
雫の心が激しく揺れた。
最後まで『時雨堂に、雪は降りつづく』を読んでくださり、本当にありがとうございました。
この物語は、“救うこと”について考え続けた作品でした。
誰かを助けたいと思うことは、とても優しくて、同時にとても苦しいことです。
全部を救いたい。
誰も傷ついてほしくない。
そう願っても、現実は簡単ではありません。
それでも、人は誰かを想い、支え合いながら生きていける。
その小さな希望を、この物語に込めました。
雫が最後まで失わなかったものは、“人を想う心”でした。
そして玲たちもまた、誰かを忘れずに生き続けました。
人は、誰かの記憶に残る限り、きっと消えません。
もしこの物語の誰かが、あなたの心に少しでも残ってくれたなら。
それが、この作品にとって何よりの救いです。
あなたの明日が、今日より少しだけ優しいものでありますように。
本当にありがとうございました。




