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人はきっと、誰かに救われながら生きています。
大きな言葉じゃなくてもいい。
たった一言。
たった一つの優しさ。
それだけで、生きようと思える夜があります。
この物語には、“運命を書き換える力”が登場します。
けれど本当に描きたかったのは、魔法みたいな奇跡ではありません。
苦しみながらも誰かを想うこと。
忘れたくないと願うこと。
誰かの痛みに手を伸ばそうとすること。
そんな、不器用で優しい人たちの姿です。
もし今、少しだけ苦しくて、少しだけ疲れているなら。
この物語が、あなたの心へ静かに寄り添えますように。
『時雨堂に、雪は降りつづく』
どうか最後まで、見届けてください。
由紀は崩れるように泣き出した。
包丁が床へ落ちる。
カラン――。
娘が泣きながら母親へ駆け寄った。
「ママぁ……!」
由紀は娘を抱きしめる。
「ごめん、ごめんね……!」
部屋に嗚咽が響く。
雫はその光景を見ながら、静かに涙を流した。
助かった。
今回は、間に合った。
だがその瞬間。
視界が大きく揺れる。
雫は壁に手をつく。
「……っ」
玲が支える。
「雫!」
頭の中が真っ白だった。
思い出せない。
学校の先生の名前。
昔好きだった歌。
そして。
――父親の顔。
完全に消えていた。
雫は恐怖で震える。
「私……誰だったっけ」
玲の表情が凍る。
その問いは、最も恐れていたものだった。
最後まで『時雨堂に、雪は降りつづく』を読んでくださり、本当にありがとうございました。
この物語は、“救うこと”について考え続けた作品でした。
誰かを助けたいと思うことは、とても優しくて、同時にとても苦しいことです。
全部を救いたい。
誰も傷ついてほしくない。
そう願っても、現実は簡単ではありません。
それでも、人は誰かを想い、支え合いながら生きていける。
その小さな希望を、この物語に込めました。
雫が最後まで失わなかったものは、“人を想う心”でした。
そして玲たちもまた、誰かを忘れずに生き続けました。
人は、誰かの記憶に残る限り、きっと消えません。
もしこの物語の誰かが、あなたの心に少しでも残ってくれたなら。
それが、この作品にとって何よりの救いです。
あなたの明日が、今日より少しだけ優しいものでありますように。
本当にありがとうございました。




