4ページ
人はきっと、誰かに救われながら生きています。
大きな言葉じゃなくてもいい。
たった一言。
たった一つの優しさ。
それだけで、生きようと思える夜があります。
この物語には、“運命を書き換える力”が登場します。
けれど本当に描きたかったのは、魔法みたいな奇跡ではありません。
苦しみながらも誰かを想うこと。
忘れたくないと願うこと。
誰かの痛みに手を伸ばそうとすること。
そんな、不器用で優しい人たちの姿です。
もし今、少しだけ苦しくて、少しだけ疲れているなら。
この物語が、あなたの心へ静かに寄り添えますように。
『時雨堂に、雪は降りつづく』
どうか最後まで、見届けてください。
「今日から、ここで働いてもらうわ」
白銀栞は、本棚の上から軽やかに飛び降りた。
雫はまだ混乱していた。
人生の本。
未来。
死ぬ運命。
何もかも現実とは思えない。
「働くって……何を?」
栞は笑う。
「簡単よ。“後悔”を見つけるの」
彼女は店の奥へ歩き出した。
雫と玲も後を追う。
そこには、天井まで続く巨大な本棚が並んでいた。
数えきれないほどの本。
「全部、人の人生?」
雫が呟くと、玲が頷く。
「生きてる人間も、死んだ人間もある」
ぞくり、と背筋が震えた。
その時、一冊の本が棚から滑り落ちる。
バサッ。
栞はその本を拾い、雫へ差し出した。
『藤崎美咲 15歳』
「読んでみなさい」
雫は恐る恐るページを開く。
瞬間。
視界が変わった。
暗い教室。
笑い声。
机に落書き。
『死ね』
少女が泣いている。
胸が締めつけられる。
「っ……!」
気づけば、雫は息を切らしていた。
「今のは……」
「その子の記憶よ」
栞は静かに言う。
「あなたには、“人生の本”を読む力があるみたいね」
最後まで『時雨堂に、雪は降りつづく』を読んでくださり、本当にありがとうございました。
この物語は、“救うこと”について考え続けた作品でした。
誰かを助けたいと思うことは、とても優しくて、同時にとても苦しいことです。
全部を救いたい。
誰も傷ついてほしくない。
そう願っても、現実は簡単ではありません。
それでも、人は誰かを想い、支え合いながら生きていける。
その小さな希望を、この物語に込めました。
雫が最後まで失わなかったものは、“人を想う心”でした。
そして玲たちもまた、誰かを忘れずに生き続けました。
人は、誰かの記憶に残る限り、きっと消えません。
もしこの物語の誰かが、あなたの心に少しでも残ってくれたなら。
それが、この作品にとって何よりの救いです。
あなたの明日が、今日より少しだけ優しいものでありますように。
本当にありがとうございました。




