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人はきっと、誰かに救われながら生きています。
大きな言葉じゃなくてもいい。
たった一言。
たった一つの優しさ。
それだけで、生きようと思える夜があります。
この物語には、“運命を書き換える力”が登場します。
けれど本当に描きたかったのは、魔法みたいな奇跡ではありません。
苦しみながらも誰かを想うこと。
忘れたくないと願うこと。
誰かの痛みに手を伸ばそうとすること。
そんな、不器用で優しい人たちの姿です。
もし今、少しだけ苦しくて、少しだけ疲れているなら。
この物語が、あなたの心へ静かに寄り添えますように。
『時雨堂に、雪は降りつづく』
どうか最後まで、見届けてください。
夜。
雫は一人、駅前に立っていた。
冷たい風。
頭の中がぐちゃぐちゃだった。
どうすればいい。
凛を救えば、湊が消える。
でも放っておけば、凛が消える。
「……もう嫌だ」
涙が零れる。
その時。
背後から、静かな声がした。
「それでも選ばなきゃいけない」
振り向く。
ハルだった。
白い着物が夜風に揺れている。
「どうしてこんな世界なの……」
雫の問いに、ハルは少し悲しそうに笑った。
「人は、“何かを選んで生きる生き物”だから」
全てを救うことは出来ない。
それが現実。
でも。
雫は拳を握る。
「……私は諦めない」
ハルは静かに目を細めた。
「本当に玲に似てる」
その言葉に、胸がざわつく。
玲。
記憶は曖昧なのに。
その名前だけで、心が痛くなる。
その瞬間。
駅のホームから、悲鳴が聞こえた。
振り向く。
そこには――。
輪郭が消え始めた湊が立っていた。
最後まで『時雨堂に、雪は降りつづく』を読んでくださり、本当にありがとうございました。
この物語は、“救うこと”について考え続けた作品でした。
誰かを助けたいと思うことは、とても優しくて、同時にとても苦しいことです。
全部を救いたい。
誰も傷ついてほしくない。
そう願っても、現実は簡単ではありません。
それでも、人は誰かを想い、支え合いながら生きていける。
その小さな希望を、この物語に込めました。
雫が最後まで失わなかったものは、“人を想う心”でした。
そして玲たちもまた、誰かを忘れずに生き続けました。
人は、誰かの記憶に残る限り、きっと消えません。
もしこの物語の誰かが、あなたの心に少しでも残ってくれたなら。
それが、この作品にとって何よりの救いです。
あなたの明日が、今日より少しだけ優しいものでありますように。
本当にありがとうございました。




