第8話 陽に当たること。
「今日は日が昇るのがゆっくりだわ、と思っておりましたが、冬至だったんですねえ。」
と、感慨深げにリーゼ様が話し出す。
「明日から、ほんの少しずつ春に近くなっていくんですねえ、、、こんなふうに、冬至という日を感じたのは初めてですわ。」
お嬢さまは、日に焼けた。冬だって焼けるのだ。健康的に見える。
筋肉もついた。お百度参りが始まる前に、金色の髪を、邪魔にならないように、思い切って肩口でバッサリ切ってしまった。おどおどした、内気な女の子、っていうイメージだったが、意外と思い切りがいい。開き直ったのかな?
帰ってきたら、温泉に入り、足や手がしもやけにならないように良くマッサージする。血行促進のクリームを塗る。
その後、朝食。
お茶を飲みながら、執務。
領地の経営は任されている。本来なら、まあ、、、、二人に、、、
元々、使用人にも好かれていたが、ここのところ、フットワークが軽くなったから、領地の視察にもまめに出かけている。領民の評判も良好。
帰って来て、さっさと寝る。朝早いから。
なんて規則正しい生活!!!
古参の使用人によると、お嬢様はかなりの寒がりだったらしいが、今は、代謝が良くなっているからか、薪の追加が少ないらしい。筋肉は、実は暖かいんだねえ。
毎朝、日に当たる。
それだけでも、生活のリズムは整う。
そう、、、、、彼の方も、、、、
毎朝、そんなに早く起きなくてもいいのに、、、、、早起きして、着替えて、馬に乗りに行っている。厩舎は屋敷の西側にあるので、東に向かって歩いていくお嬢様と接触しないのが幸いである。
まあ、、、、自分に婚約破棄を突き付けた男と、会いたくはないよなあ、、、、どんな事情か分からないけど、、、、
日が昇り切ると、帰って来て、客用ラウンジから外を見る。
ん-ーーーー????
日に当たるのは、骨も丈夫にするから大事です。
今日も、お嬢様が無事に帰ってきたのを見届けて、朝食の席に着きました。
ん-ーーーー????
「ジーク様も規則正しい生活をなさっておりますよ?馬も難なく乗れるようになりましたし。」
「・・・そうねえ、、、、帰らないのかしら?帰らないの?って聞いてもいいのかしら?」
「・・・・まあ、相手は王子ですからねえ、、、治療以外の意見を申し上げるのはいかがなものかと、、、」
「ジョン、あなた、お風呂に入ったときにでも聞いてみてよ?ね?男同士、裸の付き合い、みたいな?」
「・・・・・」
「ダメよねえ、、、、」
「・・・・」
「じゃあまあ、剣術の稽古でもしましょう?瞬発力を鍛える、とか言って。あなた、本職でしょ?」
「はあ、、、、まあ、、、、一応、騎士なんで。」
歩くのに何ら問題はない。馬に乗る姿勢も保てる。乗り降りも心配ない。
この人は、、、、何が引っかかっているんだろう?
さっさと帰って、新しい恋人と、新しい生活を始めるのも、もう可能なのに。