第16話 お礼参り。
「さて、満願成就したら、お礼参りに向かわなければなりません。」
ジークとリーゼは、次の日は部屋から出てこなかったので、その次の日に、二人に話して聞かせる。並んで座っている二人の手が、さりげなく重なっている。
「はい。ありがとうございました。先生。」
「・・・ありがとう、、、、マリエ、、、」
二人は相変わらず早起きして、遠乗りに行ってきたらしい。
朝食も、二人で取った。メニューは相変わらず、あっさり系。
その後、二人で厨房に向かい、コックさんと一緒に、昼食用のサンドイッチを作り、二人で神殿に向かって歩いて行った。
風はまだ冷たいが、いいお天気だった。
私も使用人一同も、楽しそうに歩いていく二人を見送る。
時々振り返って、手を振るお嬢様、、、、かわいい、、、、
「さて、皆さん、、今夜はお二人の、改めましての婚約パーティーです。打ち合わせ通りよろしくお願いいたします。」
「はい!」
「来客者はリスト通り、今のところ変更はございません。では、二人がお帰りになるまで会場を整えましょうか!!」
「はい!」
*****
急な招待にもかかわらず、20人のお客様がいらしてくれた。
お父様、と、近しい親戚縁者、王城からは代表して第2王子が来てくださった。ジークと私の婚約は一度解消されていたので、改めて、婚約の誓書をお持ちくださった。
びっくりしたのは、私のドレスがもう用意されていたこと!
侍女のみんなが、嬉しそうに私に着付けしてくれるので、私も、本当に嬉しい。
お百度参りの前に、思い切って切ってしまった髪は、腕利きの侍女によって、上手に整えられた。
久し振りに見る全身を映す鏡の前に、見たこともない女の人が立っている。
これが、、、、わたし?
大きく胸もとの開くイブニングドレス。くびれたウエスト、、、、ほっそりと伸びる両腕、、、、
「お綺麗ですよ?お嬢様?」
泣きそうだわ、、、、
迎えに来てくれたジークも驚いている。そうでしょう?私、どうしちゃったのかしら?
「さあ、行こう、リーゼ。」
先生にお礼を言おうと探したが、見つからなかった。
*****
僕たちがホールに入ると、驚きの声が上がった。
僕は、、、王城の医師団にもう歩けまいと言われたのに、ちゃんとリーゼをエスコートできているし、、、当のリーゼは、もう、マシュマロ姫、ではなかったから。まあ、、、一部分だけ、マシュ、、、、、まあ、それは今はいい。
来客に、二人でお辞儀をする。
大公殿は、あんなに痩せてしまって、、、と、リーゼを見て泣いている。気持ちはわかります。引き寄せた腰が、細いんです。慣れないので、ドキドキします。
「あ、、、兄上。今日はお忙しいところありがとうございます。」
「ああ、、、よかったな。元気になって何よりだ。婚約、おめでとう。」
「はい。ご心配をおかけしました。ありがとうございます。」
下げた頭を上げた時、兄上に寄り添う女性に気が付いた。
背は兄上の肩先ぐらいか?黒髪を肩で切りそろえて、黒の華国風のイブニングドレスを召している。とても華奢に見える。
長い房の付いた木製の扇で顔は良く見えないが、、、、兄上の幻の婚約者だろうか?本当に実在したんだ!?
幻の、、、、というのは、兄上が華国に留学していた時に知り合った菜国の皇女。兄は婚約しているから、と、見合い話を皆断っていたが、、、、いつまでたっても現れない婚約者に、幻の、という定冠詞が付くようになった。
「まあ、、、先生?お礼を申し上げたくて、探していたんですのよ?」
先に声を掛けたのは、リーゼ。え?
「・・・マリエ???」
「お前、失礼な奴だな。お姉様、と、呼びなさい。」
そう言って、兄上が笑った。後ろに控えているのは、ジョン?目があったら、さりげなくそらされた。
「ご婚約おめでとうございます。末永く、お幸せに。」
ぱちんっ、と扇をたたんで、いたずらっぽく笑う女性、、、マ、、お姉様?
兄上は、、、上の兄、皇太子の補助をしながら、外交を担っている。いずれ今は国交がほとんどない華国と交易協定を結びたい、と、常々言っていた。ゆくゆくは、菜国とも、、、、だから、飾り物の妻は要らない。そうなんだ、、、、、本気なんだなあ、、、、あの人は、、、飾っておきたくても、動き回りそうだ、、、
一通り、二人で挨拶を終えた頃、楽隊が曲を奏で始めた。
「僕と踊ってくれる?リーゼ。」
「はい。」
リーゼの手を取る。ダンスは小さい頃から一緒だった。これからも、、、、
本文、完です。番外編が続きます。




